飲食店がバリアフリー化に取り組むために【店舗作りのポイントを解説】

バリアフリーとは、高齢者や障害者等が生活する上で物理的な障壁を除去するということです。日本では、1980年代の終わりごろから商業施設や店舗などにも注目されるようになりました。では、高齢者や障害者などが不自由さを感じさせないためにお店を利用していただくには、どのようにすればよいのでしょうか。ここでは、飲食店がバリアフリー対応できる店舗作りなどを解説していきたいと思います。
ぜひ参考にしてみてください。

1.バリアフリーとは?

「バリアフリー」とは、冒頭で述べたように高齢者や障害者が生活を送るうえでの障壁となるものを取り除き、車椅子用のスロープや手すりなどを取り入れて障害を緩和することです。取り除くべき障壁は4つの種類があり、「物理的」「制度的」「意識的」「文化・情報的」です。この4つ全ての障壁は、高齢者や障害者等が感じているバリアです。

「物理的なバリア」
車椅子使用者が移動面で困難をもたらすことは、店舗や公共施設等、交通機関などによる床面の段差や狭い通路、エレベータボタンの位置の高さなど配慮のない作りがあった場合にバリアを感じている。また、車椅子専用駐車スペースや駅前での迷惑駐車。

「制度的なバリア」
障害者の生活をサポートしている盲導犬と同伴で入店拒否される恐れがあるバリア。
※通常、盲導犬同伴での入店を拒むことはできない(稀に拒否されることがある)。入口に「ほじょ犬マーク」を貼っておくことで補助犬と同伴で安心して入店できる。
就職や資格試験を障害者であることを理由に断られるケースがある。

「意識上のバリア」
周囲からの偏見や無意味な同情、無関心など障害がある人を必要以上に意識すること。

「文化・情報面のバリア」
情報伝達が不十分であること。例えば聴覚に障害がある人に、車内などの音声アナウンスや手話を取り入れていない講演会などは伝えることができない。
視覚に障害がある人は、ポスターによる文字や絵での警告は伝わらない。

以上、4つの種類のバリアがありますが、近年では、社会的な障壁を除去するという意味で店舗や商業施設などにバリアフリー設計をコンセプトとして重要視されるようになりました。店内でのバリアフリー化を進めるにあたって、この4つの項目は把握しておく必要があります。

2.バリアフリー化に取り組むための店舗作り

車椅子使用者が自立して食事ができるように、積極的にバリアフリー化を取り入れている大手飲食チェーン店が多く見られます。しかし、国交省におけるバリアフリー法の基準に適合している小規模店舗はわずか2割にとどまっており、スペースが狭いことが理由とされています。小規模の飲食店がバリアフリー法で定める床面積(合計)は500㎡以上です。但し、複合建築物などはビル全体の床面積2,000㎡以上であれば、個々の店舗が500㎡以下でも基準適合義務が生じます。また、バリアフリー基準の対象外であっても可動椅子を設置するなどの工夫はできます。
ここでは、業種・規模に関わらず飲食店がバリアフリー化に取り組むためのポイントを紹介します。

2.1 出入口スペース

・出入口付近に段差がある場合は、スロープを設置する。
・車椅子やベビーカーを使用する人が方向転換できるように、140cm以上の水平なスペースを設ける。(出入口前の歩道が十分スペースがある場合や狭小敷地は除く)
・ドアは店内の様子がわかるガラス戸のスライド式もしくは自動ドアが望ましい。
・聴覚に障害がある人の利用を配慮し、店内が広い場合は出入口付近に従業員の目印になるためチャイム(音)を設置する。

2.2 トイレ

・トイレは複合施設など複数店舗がある場合は、供用スペースに1つあれば良い。
※小規模建築物でも可能な限り車椅子使用者用便房を設けた方が良い。
・便器や洗面台所付近に手すりを設置。洗面台の位置を低くする。
・可能な限り荷物や杖を置けるように棚やフックを設置する。

2.3 店内の通路

・店内通路は車椅子で通過しやすいように幅を90cm以上、他の人(横向きで)とすれ違う場合は最低120cm以上のスペースを設ける。
・段は設けず、床は滑りにくい仕上げにして毛足の長いカーペットは避ける。
・小規模な店舗で通路幅の確保が難しい場合、車椅子がテーブルまで単独でいける場所や 回転できる場所として最低でも1ヵ所確保する。
・盲導犬も一緒に入店する場合もあるので通路幅はなるべく広くとる。

2.4 テーブル・カウンター・椅子

・車椅子使用者が食事をする時のテーブル・カウンターの下端の高さは60~65cm、上端の高さは70cm、奥行は45cm程度が利用しやすい。
・車椅子使用者の客席数(可動式スペース含め)は飲食店の規模に応じて1ヵ所以設ける。

2.5 注文とメニュー表

・視覚に障害があるお客様のために点字メニューを用意する。
・聴覚に障害があるお客様の場合は、料理などの写真付きメニューを用意する。筆談でのコミュニケーションがとれる準備をしてもよい。

3.小規模事業者持続化補助金はバリアフリー化に適用される

以前の記事で初心者でもわかる小規模事業者持続化補助金の概要・申請から交付を解説を紹介しましたが、この補助金は販路開拓も対象としている補助金なので新規顧客獲得のために行うバリアフリー化も適用されます。
補助対象経費とした機械装置等費や広報費、展示会等出店費など他の費用も含め全部で13項目ありますが、そのなかの外注費がバリアフリー化に該当します。

◆外注費の補助対象:店舗改装、バリアフリー化工事、トイレ改装、ガス水道排気工事等。
申し込むタイミングは年に数回あり、事業者の採択審査が行われます。
主な詳細等を参照ください⇒日本商工会議所 持続化補助金について

4.バリアフリー化で安心・信頼できるお店に

飲食店がバリアフリー化を取り組む場合、スタッフの教育は必要です。車椅子使用者や視聴に障害を持ったお客様へのお声掛けや移動の際のお手伝いをしなければならない場面を考えて、バリアフリー化の意識を理解したスタッフの教育です。もちろん、スタッフへの心遣いも必ず行いましょう。教育を受けることで、様々な立場のお客様に対して分け隔てなく接客ができるようになり、人同士の繋がりが発展する機会を持つことができます。

高齢の方や視聴障害をお持ちの方など様々な人がストレス無く利用できる飲食店は、安心と信頼ができるお店として印象を与えます。また、人に優しいお店作りを運営することで、地域からの信頼が得られるようになり、全ての人が集まる場所となりリピート数も増えます。
ホームページやSNSなどで、バリアフリー化に取り組んでいるお店をアピールしてみるのも良いでしょう。

さいごに

いかがでしょうたでしょうか。高齢者や障害をお持ちの方、車椅子使用者などが不自由なく気軽に来店しお食事ができるような空間作りは、今後益々飲食店に求められことになります。小規模の店舗はバリアフリー化に賛同しても条件が厳しくもありますが、増改築などの自治体による補助金を検討してみても良いかもしれません。障害の有無に限らず、誰もが来店しやすく人にやさしい店作りは飲食店の基本かもしれませんね。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人