のれん分けで飲食店はどう変わる?メリット・デメリットから成功までの準備解説

飲食店で働き始めて数年が経ち、そろそろ独立したいと思われている従業員は少なくありません。その一方で、飲食店側でもお店の拡大のため多店舗展開を検討されている経営者も多くいらっしゃいます。こういった両者の思いを実現できるのが、のれん分けです。
お店を引き継ぎ、新たな店舗としてブランドを拡散できる開業方法のひとつです。
今回は飲食店ののれん分けについて、メリット・デメリットや成功までの準備を解説していきたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。

1.のれん分け制度とは?

飲食店で働く従業員のなかで、将来は独立したいと考えている方は少なくありません。
独立の形態は幾つかあり、「全て一人で最初から開業する」「フランチャイズの加盟店に入る」などの選択肢がありますが、そのなかでお店のブランドをそのまま引き継いで開業できるシステムをあることをご存じの方もいることでしょう。
「のれん分け(制度)」といって日本で古くから従業員の独立支援のためにのれん(看板)を分けるという行いです。

一般的に、今まで働いていたお店のサービスや味、メニューなどを次の世代にそのまま引き継ぐといったイメージです。ただし、従業員が誰でものれん分けを受けられるということはできません。経営者が長年働いてきた従業員に対して「一人前になった」「お店を任せられる」といった信頼感があり独立開業ができると判断されたときにのれん分けが認められます。

2.のれん分けのメリット・デメリット

基本となる「のれん分け制度」を前述しましたが、実は飲食店にとって知名度アップや多店舗展開などさまざまな目的があるのです。ここでは、目的にあったのれん分けをするにあたり、どんなメリット・デメリットがあるのかみていきます。

★のれん分けのメリット

①ブランド力の強化、知名度アップ
働いてきた従業員は今までの店舗経営スタイルを熟知しているため、新店舗の経営を任せることができます。フランチャイズのようなマニュアルに沿った経営とは違い、経験に基づいた味の再現が可能なので、ブランドの価値がそのまま引き継ぐことができるといったメリットがあります。


②優秀な人材の確保
飲食店の人材確保は難しいと言われています。のれん分け制度の導入により、将来を見据えて独立志向の高い人が応募者となることが多くなります。
他のスタッフにも連鎖反応として良い影響を与え、モチベーションアップに繋がり仕事への意欲も高くなる、結果優秀な人材が確保できるといった流れに期待がもてます。


③多店舗展開を図る上で、のれん分けは効率的な方法
多店舗展開を考えたとき、経営ノウハウを熟知している従業員に任せられるので細かい指導はあまり必要ありません。そのため指導時間を要することが少ないので、ある程度の時間を掛けて自由な発想での店舗展開が可能です。お店の基本的なことは受け継ぎながら、自由度も高いので経営者・独立者ともに効率のよい店舗展開が期待されます。



★のれん分けのデメリット
のれん分けは、実はメリットばかりではなくデメリットもあります。

①開業時期のタイミングによる相違
働いてきた従業員がすぐにでも独立開業を希望しても、店舗側ではのれん分けする時期ではないと判断することがあります。または、その逆で多店舗展開などの実行時期に引き継ぐ人間がいない、あるいは独立見込みの従業員がいたとしても今は開業の時期ではないといったタイミングのズレが発生してしまうことがあります。


②独立までの期間が長い
飲食店側では、従業員がのれん分けをする意思があっても直ぐに独り立ちはさせません。
料理の味やサービスなどお店のブランドを引き継ぐには、時間が必要です。
なかでも大切なのが経営のノウハウを覚えることです。経営はセンスのひとつとも言われていますが、その経営センスも学ぶ必要があるので独立までの期間は必然的に長くなります。


③のれん分けで起こるトラブル
のれん分けは、飲食店の看板を背負って新たなお店を立ち上げるといった夢のある制度です。お店をそのまま引き継ぐことができるので、さまざまな決め事などのリスクは軽減できるといった魅力も持ち合わせています。
しかし、実はすべてが順風満帆に進むとは限らないのものれん分けにはあるのです。
さまざまなシーンでトラブルが発生することがあります。ここではどのようなトラブルが起こり得るのかみていきましょう。

  • 経営方針の相違が発生し意見が対立する
  • お店の利益を出すことができない
  • 口約束だけで契約書を交わしている

上記は発生しやすいトラブルです。新たなお店を立ち上げるときにお店の看板を借りる、あるいは貸すといった両者の立場は違いますが、自己判断・相手を見抜く力が重要になってきます。些細なことで意見の対立は発生しやすいこともありますが、一旦バランスが崩れると修復に時間を要する場合があります。
トラブルを避けるためにはきちんと契約書を交わし、双方の権利や義務を認め合い情報共有を十分に行うことです。

3.のれん分けで成功するためのポイント

のれん分け制度を導入する際に重要なポイントは、下記のような準備をしっかり整えておくことです。

常に価値観の共有しながら信頼関係を築く
本部と共有することで、同じブランドを持つお店が相乗効果によって売上に繋がります。これは互い信頼関係を築いているからこそ結果が伴うのです。


のれん分け制度の明確化
のれん分けを導入する条件として、人材の基準を明確化します。お店にとっての優秀な人材を対象にしましょう。


独立者の店舗スタイルを自由にする
ブランドイメージを活用できるのれん分けですが、マニュアルがない分自由度が高いです。独立希望の人はある程度の「お店をこうしたい」といった思いがあり、自由な発想を持つことで能力が発揮できます。


のれん分けは店舗を拡大する手段のひとつですが、経営者がのれん分け制度を明確にすることで互いが成功をおさめる確率が高くなります。
また、双方の立場を認めあうことも大切です。意見の食い違いは発生することは多いですが、認めあっていることで大きなトラブルに繋がらないといえるでしょう。

    さいごに

    いかがでしたか。のれん分けは独立開業に向けての支援制度、そしてお店にとっても多店舗展開に最も適したシステムです。成功へと導くためには、メリット・デメリットをしっかり把握し、トラブルなどあった場合にはどのような対処をしていけばいいのか対策を考えておくことが大切です。きちんとした手順に沿った準備をしておくことで成功率が高くなることでしょう。

    この記事を書いた人

    BrancPort税理士法人