歯科医院におけるMS法人と医療法人の違いやメリット・デメリットと解説

  • 「MS法人を設立するのに税理士に相談した方が良い?」
  • 「MS法人と医療法人の違いを知りたい」
  • 「将来歯科医院を開業を検討している、MS法人設立のデメリットは?」

このようなお悩みや疑問を抱えている歯科医院経営者、歯科医院開業を検討している方の声を多く聞きます。

この記事では、歯科医院におけるMS法人とは?医療法人となにが違うのか?
MS法人を設立するメリット・デメリットを解説していきます。是非、ご参考にして下さい。

1.歯科医院におけるMS法人とは?

MS法人とは、メディカルサービス法人の略称で、法令上医療機関でなければできない業務以外の歯科医院運営に関連する事業を行う法人のことです。
MS法人は、医療法人と違い、法律に定められた法人格ではなく、株式会社などの法人が医療系事業を行うときに設立される法人です。
MS法人は独自で医療行為を行うことはできませんが、医療サービス事業を行い利益を追求することが可能です。


具体的な事業業務は以下の通りです。

  • 保険請求業務
  • 経理・会計業務
  • 医薬品や医療機器の仕入れ・管理
  • 販売業務
  • 不動産賃貸管理
  • 人材派遣

歯科医院が行う医療行為以外の業務を委託することで、経営の効率化を図れるようになります。

2.医療法人とMS法人の違いとは?

医療法人は、医療行為を行うために医療法に基づいて設立された非営利目的の法人です。
医療法の規制により、非営利性、公益性が求められるため、一般的な会社法人のような営利目的での事業が禁止されています。そのため、医療行為以外の事業の収入を得ることができません。
一方、MS法人は、会社法に基づいて設立された営利目的の法人です。
医療法に基づく法人ではないので、医療行為を行うことはできませんが、医療法の規制がないため利益を追求することが可能です。
医療法人は医療行為を行い、MS法人は経営を行う、医療と経営を分離しながら収益事業の業務拡大を行うことも可能になります。

3.歯科医院におけるMS法人設立のメリット

メリット①:診察と経営を分離できる
MS法人を設立することで、医療行為以外の業務の請負が可能になり、医療行為と経営(医療行為以外の業務)を分離した運営ができます。
業務を分離することにより、歯科医師が診察行為に専念することができるでしょう。
より良い歯科医療の提供につながる上に、経営状況も正確に把握することが可能になります。


メリット②:節税効果が期待できる
個人事業主がMS法人を設立して法人化することにより、節税効果が期待できます。
具体的に説明すると、個人事業で報酬や売上を計上することにより、所得税が発生します。
この所得税は累進課税となるので、所得が多くあるほど所得税も増加します。
MS法人を設立すると、所得を分散することができます。
法人に課税される法人税は固定税率となるので、所得税と法人税の税率の差が大きいほど、節税につながります。


メリット③:医療法人では行えない事業を展開できる
医療法人は、営利目的による事業展開が禁止されています。
MS法人は、医療法に規制されることはないため、医療法人ではできない多様な事業を行うことができます。
例えば、医薬品や医療機器の仕入れ、管理・販売業務、不動産賃貸管理、人材派遣などができるようになります。収益事業の事業拡大を行い利益を追求することが可能になります。


メリット④:相続税対策ができる
歯科医院の後継者やその親族を役員や従業員として雇用することにより役員報酬や給与、配当などが支払えるようになります。この場合、生前贈与となり、相続税対策につながります。
また、医療法人に利益剰余金が蓄積されると持分評価が高くなりますが、MS法人が医療法人の出資持分を保有することで持分の評価を下げ、承継時の納税額を抑えることができます。
MS法人は歯科医医師でなくても代表取締役になることができるため、後継者が歯科医師ではない場合にMS法人を設立し代表者とすることが可能になります。

4.歯科医院におけるMS法人設立のデメリット

デメリット①:時間と費用がかかる
MS法人を設立する場合、設立費用や維持費用がかかります。
また、法人登記を行うのための事務手続きもあり、書類作成の手間と時間の負担が増えます。
法人としての事務手続きが発生することで、人件費が増加するでしょう。


デメリット②:役員と兼務できない
医療法上、医療法人とMS法人の役員の兼務は禁止されています。
【厚生労働省 医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について】参照
医療法人やMS法人を同族関係者のみで運営する場合の役員の選定には慎重に行うことが大切です。


デメリット③:薬機法の知識が必要
MS法人は、医療行為を行わないとはいえ、薬機法の知識が必要です。
医療機器・医療品・医薬品の販売を行う場合、薬機法による事前の届け出が必須です。広告を出稿するにも薬機法は深く関わってきます。

5.MS法人が人材派遣業務を請負う際の注意点

医療法人がMS法人に人材派遣業務を委託する際、MS法人の労働者に対する業務指示を医療機関の管理者や従業員が行ってしまうと「偽装請負」となる可能性があるので注意が必要です。
偽装請負と判断された場合、労働派遣法・職業安定法・労働基準法のいずれかの違反となり、罰則が科せられることもあります。

【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 参照】
【職業安定法 参照】
【労働基準法 参照】

偽装請負に該当すると知らずに業務を請負うと、トラブルに発展する可能性が高いでしょう。
労働派遣法・職業安定法・労働基準法の知識を習得しておくことが重要です。

さいごに

いかがでしたか?歯科医院の運営が軌道に乗り、さらなる事業展開を考え始めころに、MS法人を設立するか医療法人化するか検討される方も多いと思います。医療法人化したとしてもMS法人を設立するメリットはあるため、医療法人化とMS法人の設立の両方行うケースもあります。

自院にとってMS法人を設立するべきか判断に悩んでいる場合は専門家である税理士に相談することをオススメします。


相談できる税理士が身近にいない場合、一度、BrancPort税理士法人にご相談ください。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人