歯科医院の人手不足が深刻化!?原因と離職率を下げる対策を解説

近年、歯科業界における人手不足は深刻化しています。こうした中、人材確保にあたって「どのように対策を講じていけばいいのかわからない」と悩みをお持ちの方がいらっしゃいます。ここでは、人手不足の原因を把握した上で、離職率を下げるためにどのような対策を講じていけばいいのか、採用ポイントを交えて解説していきます。
ぜひ参考にしてください。

1.歯科業界の人手不足が与える影響

近年、少子高齢化や歯に対する意識改革に伴い歯科医院の需要が高く医院数が増加傾向にあります。しかしながら、歯科業界は人材の不足が深刻な問題となっているのが現状です。では、人手不足が歯科医院にとってどのような影響を与えているのかみていきましょう。

  • 一人ひとりの患者さんの診察時間が短い
  • 患者さんとのコミュニケーションがとれない、対応が雑になってしまう
  • 医院同士の差別化を図るために診療日時の延長、労働環境が激務になる

歯科医院は患者さんと丁寧に向き合い、今後の治療などを伝えていくことが使命でもあります。人手不足になってしまうとスタッフ一人の業務が短時間で熟しながら、多くの患者さんの対応をしなければなりません。そのため雑になってしまいがちです。院内の悪循環を避けるため早めの解決策を取り入れることが大切です。

2.職種別からみた人手不足の原因

歯科医院で求人募集を出しても「応募者が来ない」、「思った人材が集まらない」など嘆いている経営者も少なくありません。歯科医院では、専門職である歯科医師から歯科衛生士、歯科技工士、患者さんの対応・医療事務を行う受付スタッフの方たちが働いています。人手不足の原因は働くスタッフの専門分野によって異なるため、職種別に考えていかなければなりません。ここではなぜ人手不足が発生してしまうのか、それぞれみていきたいと思います。

2.1 歯科医師の場合

歯科医師での人手不足はさまざまな要因がありますが、ここでは以下の3つを紹介します。

①少子高齢化に伴う人材不足
現在、少子高齢化により歯医者の需要は高いのですが、歯科医師数は緩やかに減少傾向にあります。そして高齢の歯科医師によるリタイアも少なくはく、今後更に引退する医師が増えていくであろうと予想されます。

②都市部と地方の人材格差
集積のある都市部での歯科医師数は多いのですが、高齢者の多い地方では歯医者の需要が高い一方で歯科医師の数は少ないです。各地域の格差は、歯科医師数の少ない地域と多い地域では2倍の差が生じていると言われています。

②歯科医院の多様化
現在、歯科医院の業態が在宅診療、介護施設、診歯科診療所など多様化しています。これらの分野のなかでも格差が生じ、人手が足りないという業態もみられています。

2.2 最も多い歯科衛生士の人手不足

歯・口腔の健康管理による意識改革や高齢化社会が進み、特に歯科衛生士のニーズが高くなっています。そのため求人数も増えていますが、実は歯科診療所の就業歯科衛生士数は免許取得者の5割弱しかいません。人手不足が最も深刻化しているのが歯科衛生士です。
歯科衛生士が離職に繋がると思われる項目を上げてみました。

  • 待遇面(給料アップや昇給)での見直しがない
  • 資格など専門性の評価が曖昧、評価が給料につながらない
  • スキルアップのための教育研修会等がない

また、歯科衛生士の就業者年齢が20~25歳ぐらいまでが多く、20代後半から30代にかけて急激に減少しています。その背景には女性の出産などによる離職率が増加傾向にあると言われています。

2.3 歯科技工士の現況

歯科診療の保険点数の3割以上は歯科技工士を必要としています。職人の要素が多く技術力の定評の高さが特長ですが、人手が足りないのが現状です。

  • 診療所からの委託料が低い
  • 常に新しい技術と材料を求められると同時に労働環境の厳しさも耐え難い

歯科技工士は個人経営が多く、数をこなすため材料費を抑えながら経営を成り立たせていることがあります。長時間労働による過酷さや製作費の低さが原因で、特に若者の歯科技工士離れが進んでいると考えられます。

2.4 歯科助手は減少傾向

歯科医師のサポート役として器具の洗浄や薬剤の準備、片付け、その他事務作業などの雑務も含む場合があります。現場で働いてみると歯科衛生士との待遇などと大きな違いに気が付き、次へのステップへと目指す方もいらっしゃいます。現場で働きながら国が認めた資格取得(歯科衛生士)後に歯科医院を離職するというケースも少なくありません。

3.人手不足を解消するための対策

ここでは、歯科業界の大きな課題である「人手不足」を解決するためにはどうすればいいのか考えていきます。人手不足のまま、業務を続けているとスタッフ全員に負担がかかり、更に離職率が高くなってしまいます。人材の定着率にこだわった有効的な対策です。

3.1 労働環境の改善

近年、特に都心部の歯科医院数は増加傾向にあるため競争が激化しています。労働時間の延長、土日祝などの診療といった診療所が多く、医院同士で差別化を意識することが多々あります。そのため労働環境の過酷になり、労働力に低下につながってしまうことがあります。
離職率を減らすため、以下のような労働環境の改善をする必要があります。

①労働時間の適正化
スタッフの勤務時間や休暇を全て平等にシフト調整することで勤務体制の緩和に繋がり、過剰な労働環境を防げることができます。

②コミュニケーションの改善
患者との会話だけではなく職場の医療スタッフとのコミュニケーションをとることは非常に大切です。コミュニケーションを図ることは職場の環境に良い空気をもたらしてくれます。定期的にミーティングや勉強会などを開催すると有効的です。

③福利厚生での改善
歯科業界の仕事は治療に対するプレッシャーが多く、精神的に負担がかかります。したがって、充実した福利厚生を求められています。

3.2 業務改善を図る

コミュニケーションをとることで院内改善に繋がると先述しましたが、定期的にミーティングを行うことも大切です。今後の経営スタイルや課題・業務改善にいての話し合いです。

  • 院長の経営ビジョンを伝える
  • 患者の望む治療・ニーズへの対応について
  • 患者数の伸び悩みなどの課題・集患対策などについて
  • 各自業務の効率化を図るためにできること

上記のミーティング内容はほんの一部ですが、院長をはじめスタッフ間との話し合いによってそれぞれの思いが伝わり向上心や団結心が生まれます。

3.3 新人スタッフ育成の充実化

新人の歯科医師や歯科衛生士、歯科技工士など各分野において歯科業界に毎年入社していますが、そのなかでも大手の歯科医院は人気が高まっています。その理由のひとつとして「充実した新人スタッフの教育体制」が挙げられます。
資格を必要としない歯科助手や受付・医療事務においても歯科に関する最低限の知識は必要です。そのためには研修(勉強会)や人材育成などを行う体制は欠かせません。
応募者が求人欄に新人育成・研修導入と記載されているだけで医院は好印象を受けます。

  • ★応募に「充実した研修制度あり」と記載しているだけで、入社後のスキルおよびキャリアアップ向上のイメージが湧きやすくなる。 
  • ★入社後にスタッフ育成・研修制度を設けることで新人への期待度が高いと思われる
  • ★学ぶ環境を与えてくれることで、歯科医院に対する信頼度が高くなる。

個人経営の歯科医院は日々診察その他で忙しく、人材を育成することが難しいかもしれませんが、応募者は研修制度が整っている医院を求めています。人材不足を避けるためにはこうした制度を設けることも大切です。

3.4 働き方を優先した求人

歯科業界に興味をもってもらうことで人手不足の解決方法に繋がります。
つまり、求人方法を応募者のライフワークに合わせた募集をすることです。

①フレックス制度の導入
患者さんに合わせて夜間および土日祝の診察を行う歯科医院が増加傾向にあるため、フレックス制度を導入します。そうすることで、スタッフ個人の都合に合わせた働き方ができるようになります。また、募集する際にフレックス制度導入と記載するだけで多様な働き方ができるという安心感・好感度が増して多くの人が応募してくれます。

②育児・介護休業制度の導入
歯科医院は女性が多く、育児や介護などを理由に退職してしまうことが少なくありません。
育児・介護休業制度を導入することでスタッフは復職できるという安心感が持てます。また、スタッフが戻って来られる環境を整えることで能力の高い人材の確保に繋がります。

③応募者の目線に合わせた募集
応募者の知りたいことを理解した上で求人を出すことも大切です。
歯科医院が希望とする人材理想像を掲載するだけでなく、応募者の求める情報を与えることで求人調査を重ねた優秀な人材が確保できるようになります。

  • 給与、労働条件(給料や手当、具体的な業務内容、応募者に求めるスキルなど)
  • 院内雰囲気(ホームページのURL、院長の経営方針)
  • 教育関連(セミナー、育成制度、資格制度)
  • 労働時間や休日(残業や休日出勤の有無、勤務時間など)

さいごに

いかがでしたか。近年、多様化する歯科業界の需要は増える一方で、働く人材が不足しているのが現状です。今回その人手不足を解決するための対策を紹介しました。
先ずは働くスタッフの離職を避ける環境作りをすることが大切ではないでしょうか。
ワークバランスを整えた働き方、スタッフが成長できる環境などを用意していくと良いでしょう。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人