食中毒を発生させないための防止対策~HACCP義務化で飲食店がすべきこと~

食中毒は夏に起こりやすいというイメージがありますが、年間を通して発生しています。食中毒の約60%が飲食店で発生しているといわれています。
今回は、飲食店が食中毒を未然に防ぐために原因と予防策について解説します。そして衛生管理を行うために2021年6月から義務化されたHACCPにも触れていきたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。

1.食中毒を引き起こす原因と予防策

飲食店を運営する上で、食中毒の予防対策は避けて通ることはできません。食中毒の原因は細菌やウィルス、寄生虫、有毒物質などが付着した食品を食べることによって引き起こされ、吐き気やじんましん、発熱などが起こります。
以下は、最も代表的な食中毒の原因となる細菌・ウィルスの種類です。

①カンピロバクター・ジェジュニ/コリ
近年急激に増加しており、主に鶏や豚、牛などの消化管内に保菌されていて、特にカンピロバクター・ジェジュニは、鶏肉からの保菌率が高く検出されています。発生時期は湿度、気温が最も高くなる6月~9月にかけて細菌が増殖します。

原因食品⇒鶏肉の生食(鶏刺身や鶏レバー等)や生焼けの料理(鶏のたたき・鶏わさ等)、調理工程や調理済食品の二次汚染を受けた鶏肉(サラダ・和え物)などによるものです。

予防策食材の中心部まで75℃で1分以上の加熱が必要です。また、生肉を扱う場合は手指や調理器具を十分に洗浄しましょう。乾燥や熱に弱いので、調理器具は熱湯消毒後に乾燥させることをおすすめします。

②ノロウィルス
飲食店でノロウィルスが発生するもとは、感染源である調理担当者の手指を介した二次汚染により、その食材を食べて食中毒を起こすことが多いです。その他、外部(お客様や業者など)から持ち込んでくることも十分にあります。発生時期は冬場に多いと言われています。

予防策食材の中心温度を85℃~90 ℃で90秒以上の加熱をすると感染力が失うとされています。

③アニサキス
魚介類で非加熱状態のお刺身(鮭やアジ、サバなど)に寄生していて、飲食店で最も多く発生している寄生虫です。

予防策⇒魚の内臓に寄生しているので下処理をする段階で除去します。また、食材の中心温度60℃~70℃で1分の加熱またはマイナス20℃の冷凍庫で24時間以上保管するなどの工夫をしましょう。

④サルモネラ菌
サルモネラ菌は牛や豚、鶏などの家畜の腸内に生息しています。その他、鶏卵も原因食品でよく知られています。生卵やオムレツ、牛肉のたたきなどは十分に注意が必要です。また、ウナギやスッポンなどにもサルモネラ汚染の可能性があります。過去に生うなぎに触れた手で、調理した白焼きに触れるなどして調理工程での衛生面による食中毒が起こるといった事例がありました。発生時期は6月~9月が最も多いです。乾燥や低温には強く、冷凍保存しても死滅しません。

予防策菌は酸に弱く、60℃で15分以上加熱することで菌は死滅します。

2.食中毒を未然に防ぐために

飲食店での食中毒は最も発生する可能性が多いことが分かりました。予防するためには、以下のような3つのポイント「食中毒予防の三原則」を徹底しましょう。

◆細菌・ウィルスをつけない(洗浄・分ける)
・食材に細菌などを付着させないために、常に手指を清潔な状態にする。
・食材の加熱用食材と生食用食材を分けて保管する。調理器具も同様に使い分けをする。

◆細菌・ウィルスを増やさない(低温保存)
・湿度・温度などの環境によって細菌やウィルスは活発化します。増殖させないために冷蔵・冷凍などの低温保存(マイナス15℃)が必要。

◆細菌・ウィルスをやっつける(加熱)
・肉、魚だけではなく野菜も加熱することで細菌は死滅する。
・まな板や包丁、調理器具などは洗浄後に熱湯をかけて殺菌する。(食洗機を使用の場合は除く)

3.食中毒防止対策としてのHACCPに注目

食中毒の予防策には、前述した以外にも飲食店でぜひ実施しておきたいことがあります。
HACCPに基づく衛生管理の手法で、食材の入荷段階でどのように保管され、そして調理、提供されていったのか継続的に管理することです。
HACCPとは、食中毒に直結している調理工程内に潜む細菌やウィルスを見つけ出し、未然に防ぐための工程管理システムのことです。食品衛生管理計画書(マニュアル)とチェックリストを作り、実施した上で記録を残していきます。2021年6月から飲食店を含む殆どの食品業者でHACCPの実施が義務化されています。(参考⇒厚生労働省HACCP衛生管理

3.1 飲食店がすべきことは衛生管理計画・実施・記録

HACCP導入において個人経営の飲食店も含め、やるべきことは一般的な衛生管理と調理工程に準じた衛生管理計画書の策定および実施と記録することです。

≪一般的な衛生管理≫
①業者からの食材を受け取る
食材の受け入れ時に検品をする。においや温度チェック、包装状態、期限表示などの確認をして問題があれば返品・交換をしてもらう 。

②店舗内での食材の保管
冷蔵(10℃以下)・冷凍(マイナス15℃)の温度設定。保存方法に問題はないか確認する。

③調理する時の注意点
調理器具等は使用後に洗浄、消毒、殺菌を徹底する。
二次汚染防止のため調理器具の洗浄と手洗い・消毒をルール化する。

④トイレの洗浄・店内の点検
便座やドアノブなどの消毒、ゴミ捨ても定期的に行う。
ネズミやゴキブリなどの有害生物の侵入を防ぐため害虫駆除は定期的に行う。

⑤従業員の健康管理
業務前、業務中の健康管理を行い、体調不良の場合は休ませる。
服装や頭髪などの乱れはないかチェックをする。

以上、衛生管理を行うためのチェック項目です。①~⑤を「いつ」「どのようにするのか」「問題点・対処法」などに分けて衛生管理記録として作成しておくと良いでしょう。

≪主に調理工程においての重要管理≫
食材を加熱・非加熱・加熱と冷却を繰り返すものなど温度に関わるメニューを3つに分類し、それぞれの加熱温度や時間、冷却保存などを確認します。
例)
非加熱:(メニュー)刺身や冷ややっこなど⇒(チェック項目)温度○℃設定、冷蔵庫から出したら直ちに提供する。

加熱:(メニュー)唐揚⇒(チェック項目)揚げ油温度○度、揚げ時間○分、見た目判断あるいは串をさして揚げ具合を確認する。

加熱後に冷却して再加熱:(メニュー)カレー⇒(チェック項目)加熱後は素早く冷ます。再加熱するときは気泡がでるまで十分に火を通す。

HACCPに基づいた衛生管理を実施することで、食中毒は未然に防ぐことができます。また、チェック項目の記録だけではなく、問題点があった場合は必ずその原因を追求し、記録に残しましょう。もし計画書通りに業務を実施しても衛生管理として不十分であれば、衛生管理計画書の見直しや修正をしましょう。
小規模の飲食店向けの衛生管理の記録用紙はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書を参考にしてみてください。

3.2 HACCPを導入しないと罰則はある?

飲食店で「HACCPを導入しないと罰則がある?」と不安に思われている経営者の方もいらっしゃいます。
現在、HACCP未対応であっても食品衛生法の中では罰則は定められてはいません。
しかし、食品衛生法第50条による罰則について「各都道府県知事に委ねる」と記載されています。
食品衛生法第50条
≪食品衛生上の危害の発生を防止するために、特に重要な工程を管理するための取組≫
上記の取組とはHACCPのことで、これを無視した場合の罰則は都道府県の条例によって決定されるということになります。よって、HACCP未導入で衛生面による問題が生じた場合には、営業停止や罰則・罰金などを受ける可能性が十分にあります。
食品を扱う飲食店は、安全な食品をお客様に提供する義務があります。その義務を果たすためにHACCPを導入すると考えられるでしょう。

3.3 営業許可取得・更新に影響を及ぼす可能性

飲食店の営業許可の取得や更新の際に、保健所からHACCPに沿った「衛生管理計画の策定」がチェックされる可能性があります。導入されていなければ指導が入ります。
直ちに対応できないと保健所からマークされ、何らかの処分がくだされる場合もあります。

さいごに

いかがでしたでしょうか。食中毒の発生率は飲食店が最も多いと言われています。
食中毒を未然に防ぐために、細菌・ウィルスをつけない、増殖させない、殺菌することに加え、HACCPに基づいた衛生管理が法令で義務化されています。食品を扱う飲食店従業員が衛生管理意識を向上することによって、食中毒の発生を防げることができます。そして消費者の食中毒の発症数も軽減されます。自身のお店を守るためにもHACCPによる衛生管理を実施しましょう。

この記事を書いた人

広田 淳