美容師の労働時間の実態~知っておきたい勤務時間のルール~

美容師の仕事には「休憩時間が短い」「休日がとりにくい」「拘束時間が長い」というイメージがあるのではないでしょうか。美容師になることを志望している方が多いなか、労働時間がどのくらいなのか気になる方もたくさんいらっしゃると思います。ここでは、美容師の労働時間や残業時間、働き方の選択などについて解説していきたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。

1.労働基準法について

労働基準法とは、雇用主(使用者)が労働者の生活を保障するため、労働条件の最低基準を定めた法律のことです。勤務時間や残業時間、休日などの労働基準法は以下の法定ルールがあります。

・労働時間:労働時間の上限は1日8時間、週40時間と定められている。
・休憩時間:1日6時間の勤務を超える場合は最低45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を与える。
・残業時間:労働時間が1週間40時間(1日8時間)を超えた場合は、時間外勤務になるので残業代が発生する。※時間外勤務の上限は原則として月45時間・年360時間までとなっている。
・有給休暇:6ケ月間の勤務を継続し、全労働日の8割以上出勤した場合は10日間の有給休暇を付与する。
・休日:最低1週間に1日、又は4週間に4日以上の休日を付与する。

経営者は上記の労働基準法に基づいた就業規則でなければなりません。しかし、美容師は長時間勤務が習慣化されているのが現状です。長時間勤務や残業代に関するトラブルが発生しないように、そして従業員を守るために労働条件を良くしなければならない責任があります。

2.美容師の労働条件

一生の仕事として美容師に就いている人が殆どではないでしょうか。入社後に自分が思い描いていた仕事内容とは違うと思ってしまうのは仕方がないことですが、残業が多いなどが原因で離職してしまうのはとても残念なことです。美容師を志す多くの人は、勤務時間や休日などの現状はある程度把握しているかと思いますが、ここでは美容師のある一部の労働環境(勤務時間等)を解説していきます。

2.1 勤務時間・残業時間

美容師の労働時間は、1日あたり10時間オーバーとなることが多いです。あくまでも平均ですが、営業時間は10時~20時が最も多く、お店がOPENする1時間前に出勤して開店準備や予約確認などを行い、閉店後には後片付けやミーティングなどで約1時間以上かかります。
通常、勤務時間が1日8時間を超えた場合は残業となります。しかし、多くの美容師の業務は8時間以上を超えています。特にアシスタントは、閉店後に技術向上のための個人トレーニングや講習会を開いたりすることが多いので営業時間外での業務が長くなりますが、残業という意識は低いです。

2.2 休憩時間・休日

労働基準法では「1日8時間を超えると1時間の休憩を与える」と解説しましたが、美容師の休憩時間は平均で30分ぐらいです。スタイリストとアシスタントでは休憩時間が異なり、お客様の指名担当があるスタイリストは、開店から閉店まで予約が入っていることが多いため、カラーやパーマなどの放置中に軽くお昼休憩(約15~20分程度)をとります。アシスタントは、平日のお客様が少ない時で30分以上のお昼休憩をとれることもありますが、土日祝など忙しくなる日は30分弱になることが多いです。

美容師の1ヶ月の休日は、基本的に平日の6~7日間です。完全週休2日制を導入している美容室もありますが、隔週2日制がまだまだ多いようです。また、有給休暇はもちろん与えられますが、1年間で完全消化は厳しいです。勤務年数が長くなれば自動的に有給休暇は増えます。しかし、勤務年数が長くなるにつれスタイリストや店長として働くことが多くなるため、忙しくなって有給休暇がとれにくくなってしまいます。

2.3 早朝・営業終了後にスタイリング練習

美容師は日々練習の毎日です。特にアシスタントからスタイリストになるためのスタイリング練習は必要不可決です。技術を習得できれば様々な施術を任せられ、そしてお客様からの信頼も得られて担当美容師として指名されることもあります。練習できる時間は、早朝練習で約1時間、営業終了後の夜練習で1~2時間が多いです。ここで問題なのが営業時間外による練習時間はサービス残業になってしまうのかということです。この問題は、雇用主による指示(指揮)もしくは自発的に練習を行っているかで異なります。

■雇用主による指示練習
⇒営業時間外での練習を指示された場合は、労働時間となり残業代は支払われます。
■自発的に練習

⇒労働者が技術を高めるため、自発的に練習する場合は労働時間に含まれないことが殆どです。よって残業となることは難しいでしょう。

上記のように自発的もしくは雇用主の指示によって残業の有無は決まりますが、殆どの美容師は高い技術を身につけるため、自発的にカットなどの練習に励む人が多いです。
ただし、最近では営業終了後の自発的によるカットやヘアセットなどの練習はさせないというサロンも増えてきています。営業時間内の空いた時間(平日)を利用してヘアセットなどの練習をさせるというシステムです。

3.美容師の働き方の意識変化

美容師は長時間労働というイメージが根付いていますが、最近では働き方の形態による多様化が進んでいます。労働者の働き方に対する意識変化が見られるようになり、実際に取り組んでみると雇用側と雇用される側に多くのメリットをもたらしていることが分かりました。
今までは美容室で働く勤務時間や残業時間、休日などの現状を解説しましたが、ここでは美容師が勤務時間や休日を自由に選択できる働き方を紹介します。
ただし、自分が選べる働き方は美容師としての経験が求められます。技術レベルを高めてから数年先を見据え、自分に合った働き方をみつけてみては如何でしょうか。

●業務委託(フリーランス)
業務委託(フリーランス)は自分のペースで働くことが可能です。美容室と完全歩合制で雇用契約を結び、自分の売上に対して数パーセントが支払われます。技術を磨いて自身でネットワークを築く力を身につければ正社員で働くより稼ぐことも夢ではありません。勤務時間や休日などを自由に設定できるのが魅力的です。雇用側も即戦力として受け入れられるので大きなメリットでもあります。
業務委託として働くには美容師としての経験値が必要です。美容室で勤務しながら技術を身につけ、数年後には業務委託(フリーランス)に転身する人はこれからも増えていくことでしょう。

●パート勤務
育児や家事または介護などに関わりながら、日常生活に支障なく仕事と両立ができます。正社員より短い時間で働きたい、休日も確保したいという人はパート雇用が最適です。特に年末や成人式などの繁忙期に即戦力となれば、働き口の案件が多数でてきます。短時間での業務の割り振りができ、常勤スタッフの休憩時間の確保にも繋がるので、雇用側にもメリットがあります。

さいごに

いかがでしたでしょうか。今回は美容師の勤務時間による労働環境を解説しました。労働基準法に定められた通りに労働時間が整っている美容室はもちろんありますが、長時間勤務に耐えられなくなり離職する人も少なくありません。長く美容師として働くには、自分に合った美容室を選び良い環境で働くことが大切です。もしくは、働き方を変えるのも良いでしょう。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人