ワインは難しいというイメージがありますね。そのため楽しく飲めれば知識は必要ないと思っている人は少なくありません。確かに自分の好きなワインを飲めればそれでいいのですが、実は知れば知るほど奥深く魅了されるお酒なのです。今回はワインの基本から各種資格まで解説していきます。
ワインのプロフェッショナルであるソムリエのいるレストランであれば、お客様の料理や好みの味を考慮してワインの提供はできますが、ワインを扱っている全ての飲食店にソムリエが常駐しているわけではありません。ソムリエが在籍していない飲食店やこれからワインを扱う飲食店を開業したいという方も是非、参考にしてみてください。
もくじ
1.ワインが受ける環境
ワインの味わいを決める要素は、環境(気候・土壌・人による造り手)とぶどうの品種にあります。自然条件によって味わいを左右してしまうワインですが、環境や造り手によってどのような影響を与えているのかみていきましょう。
【天候や気候】ぶどうは収穫された年の天候によって味わいが異なります。
晴れが多くて温かい年のワインは甘く、果実味が豊かでまろやかな味になります。一方涼しい年のワインは酸味が多く、しっかりとした味になります。一般的に天候に恵まれてできたワインを「ヴィンテージ」といい、価値のあるものと言われています。
【土壌と地形】ぶどうは土から養分を吸収するため、どのような土壌であるかによって味わいも変わってきます。
ぶどうの品種によっても異なりますが、ぶどうは“水はけのよい”土壌を好むことがほとんどです。しかし、土壌のいい条件を選ぶのはとても難しいと言われています。
ワインを造るエリア、製法、年度、ぶどうの品種、造り手までは全て同じで、土壌だけ異なる3つの畑でとれたぶどうで造ったワインをそれぞれ比較したところ、味わいに違いが生じます。
地形は、同じ畑でも傾斜や平面によって風通しが変わるため、ぶどうの熟し方に影響を与えています。
【造り手】ワインの造り手は、ぶどうの栽培方法(品種の選定、収量など)や熟成方法・熟成する場所、収穫時期、ワインの仕込み方などを的確な判断が必要となります。
造り手の創意工夫がワインの味に大きな影響を与えています。
2.日本ワインと国産ワインの違い
日本ワインと国産ワインは国産ぶどうを使用していると思われがちですが、実は明確な違い(区別)があり、ワインラベルにそれぞれ表示することが義務付けられています。日本ワインは日本で栽培されたぶどうを使用し製造されたことをいいます。一方、国産ワインは海外から輸入したぶどうや濃縮果汁を国内で製造したワインをいいます。
ある一定ルールの条件を満たすことでラベルに表示ができます。
<日本ワインの表ラベル>
地名(ぶどうの産地、収穫地、醸造地名)、ぶどうの品種、ぶどうの収穫年数が表示できます。ただし、それぞれの地域、品種などの使用比率が85%以上、収穫年数が同一収穫年のぶどうを85%以上の使用している場合のみです
<国産ワインの表ラベル>
輸入ワイン、濃縮果汁使用等の表示することを義務づけられています。
3.ワインの美味しい飲み方
ワインを美味しく飲むためには温度とグラスが重要ポイントです。特に温度によって香りや味が大きく変わります。ワインはラベルに最適な温度が書かれていますが、これから紹介する温度の目安と照らし合わせながら参考にしてみてください。
3.1 赤ワイン
赤ワインを口に含んだ時の感触や濃厚さを「ボディ」といい、フルボディ、ライトボディ、ミディアムボディの3つに分かれています。フルボディ(重口)は温度が低いとタンニンの渋みが強調されるため、ある程度温度は高いほうが渋みにまろやかさがでて程良い味わいになります。温度は16~18℃が適温です。ライトボディ(軽口)は、少し冷やすと口当たりがよくなり、すっきりと引き締まった味わいになります。温度は14~16℃が適温です。ミディアムボディ(中口)の適温は13~16℃がいいでしょう。ワイン初心者でも飲みやすく、どんな料理でも合うのが特徴です。
赤ワインのグラスは、ボウル部分が卵型のボルドー型と飲み口が狭くいブルゴーニュ型があります。赤ワインは渋みに関与しているタンニンが空気に触れることで渋みが増し、深い味わいになります。一般的に香りを引き出してくれるボウル型が多く、タンニンの渋みをマイルドに感じさせてくれます。一方、ブルゴーニュ型は飲み口が狭いため香りや果実の味わいを逃がさないのが特徴です。
3.2 白ワイン
白ワインは赤ワインと違い「甘口・辛口」、または「しっかり・すっきり」といった味わいを表現します。タンニンによる渋みが少ないので、冷やしたほうがより酸味が引き締まりフレッシュな味わいになります。温度の目安は、甘口5~8℃、辛口7~14℃が美味しさを感じられます。
ワイングラスは万能型もしくはモンラッシェ型があります。万能型はすっきりとしたタイプの白ワインや若めの赤ワインに適しています。一方モンラッシェ型(チューリップ型)は酸味を感じることができるので、しっかりと引き締まった味わいを楽しむことができる白ワインに適しています。
3.3 ロゼ
ロゼの風味はフルーティな香りで甘口から辛口まであります。また、フランス語で「ばら色」を意味し、美しいピンク色をしたワインが特徴です。辛口の適温は7~14℃で、酸味が強く味は引き締まったものが多くあります。甘口は冷やすと甘みが抑えられ、さっぱり飲みたい場合は5℃~8℃ぐらいの温度が適しています。
冷やして飲みたい場合は、手の温度が伝わりにくい脚(ステム)が長いグラスを選ぶと良いでしょう。
3.4 スパークリングワイン
発泡性のあるスパークリングワインは低温のほうが美味しく飲めます。温度が高くなると炭酸ガスが膨張し、コルクを抜栓した時に中身が勢いよく吹き出して炭酸ガスが抜けやすくなり、香りや風味が損なわれてしまいます。温度は5~8℃と低めが適温です。
ワイングラスはフルート型が一般的ですが、シャンパーニュなど香りの高いスパークリングワインは飲み口が広いモンラッシュ型でより強く香りを感じられます。
4.ワインの保管方法
ワインは生きものと言われるほど、適切な方法で保管しないと直ぐに劣化が進んでしまいます。ワインにとって最適な環境とは温度や湿度、光、振動などを意識することです。つまり、温度は涼しく、高室温、光を避ける、振動を与えないということです。
〈未開封のワイン〉
- 温度⇒13~15℃が理想的です。常温ではなく冷蔵庫で保管しておきましょう。特に夏場の光は高温のため、その場所で保管をしておくとコルクが浮き上がってしまうことがあるので注意しましょう。
- 湿度⇒70~80%が理想です。湿度が低すぎるとコルクが乾燥するので注意しましょう。
- 光⇒冷暗所で保管し、直射日光・蛍光灯は避けましょう。
- 振動⇒振動を与えるとワインが変質してしまい味が損なわれてしまうので注意しましょう。また、置き方はコルクが乾燥しないため、なるべく横向きで保管しましょう。但し、スクリューキャップの場合は立てて保管することが可能です。
〈開封後のワイン〉
ワインは開封すると空気に触れ、酸化してしまい味の変化が生じてしまいます。
- 冷蔵庫で立てて保存をし、できれば1週間程度で飲み切るようにしましょう。
- なるべく小型の容器(瓶)に飲み口の近くまで移し替え、蓋をしっかり閉めて保存しましょう。
- 開封後は空気に触れさせないことが一番重要です。必ずワインストッパーを使用しましょう。
5.ワインの資格
5.1 日本ソムリエ協会(JSA)ワイン検定(ブロンズクラス・シルバークラス)
ワインの基本的な知識を普及するため、ワインに興味のある方向けの検定試験です。検定レベルはブロンズクラスとシルバークラスに分かれており、20歳以上であれば誰でも受験可能です。ブロンズクラスは初心者向けでワインを楽しむための基礎知識が問われ、シルバークラスではブロンズクラスを合格した人で、ソムリエなどに相談しながらワインを選定できるようになるための資格です。
(公式サイト:https://www.winekentei.com/)
5.2 全日本ソムリエ連盟認定(ANSA)ワイン検定(1級・2級・3級)
全日本ソムリエ連盟認定(ANSA)のワイン検定は1級、2級、3級があり、20歳以上であれば受験可能ですが、1級のみ2級を合格していないと受験はできません。
各級ごとに求められるレベルは次の通りとなっています。
- 3級 : ワインの基礎知識を有していること。
- 2級 : ワインの基礎知識に加え、法律や地理などの理解とワインの提供ができること。
- 1級 : ワインのあらゆる知識を精通していること。
(公式サイト:https://ansa-w.com/)
5.3 日本ソムリエ協会主催のソムリエ
日本ソムリエ協会主催のソムリエはアルコール飲料のある職業に3年以上携わり、資格試験日も現役であることが条件です。ソムリエ(JSA)は知名度も高く飲食業界で働く多くの人が目指す資格でもあります。
(公式サイト:https://www.sommelier.jp/exam/exam_guidance_detail2.html)
5.4 ワインエキスパート
日本ソムリエ協会(JSA)が主催するワインエキスパートは20歳以上であれば受験可能です。ソムリエのように3年以上の飲食店での実務経験が必要といったことはなく、趣味としてワインが好きな方向けの資格です。
(公式サイト:https://www.sommelier.jp/exam/exam_guidance_detail2.html)
5.5 WEST認定資格( wine & Spirit Education Trust)
WESTとはイギリスのワイン教育機関で、ひそかに人気を集めている国際資格です。
レベルは4段階に分けられ、入門からプロ向けとなっています。 レベル4の受講・受験についてはレベル3の試験に合格していることが必須です。
- レベル1:ワインの基礎知識
- レベル2:テイスティングとサービスの基礎知識
- レベル3:ソムリエ資格(JSA主催)レベルとテイスティング技術
- レベル4:ワインの全体的な深い知識
(公式サイト:Japanese Qualifications | Wine & Spirit Education Trust)
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回はワインの基本や保管方法、各種資格まで解説しました。ワイン初心者あるいは上級者が自分の目的やレベルに合った資格取得のために学んでいただけたらと思います。そして、既にワインを扱っている飲食店にとってソムリエは大きな存在です。ソムリエを目指す方は、ぜひこの機会に一歩を踏み出してみましょう。