- 「美容師になって数年が経ち、独立を考えているが資金はどれくらい準備すればいい?」
- 「個人で経営するのは不安なので、独立できる方法があったら教えてほしい。」
- 「美容室を開業してからの成功率がどのくらいなのか知りたい。」
美容室の独立を検討しているなかで、このような情報を知りたいという方が多くいらっしゃいます。街を歩いていると今まで空室だったビルの一角で、いつの間にか美容室がオープンしており、以前あった美容室がふと気が付いたら空き店舗になっていることもよく目にします。美容業界は浮き沈みの激しい世界で持続させていくことは容易ではありませんが、成功に近づく方法とういうのはあります。
この記事では美容室を独立開業したい方が、どのような準備をすればいいのか解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
1.美容師が独立する方法
美容室で働き続けて数年あるいは10数年経ったところで、独立したいと思い始めている方が多いのではないでしょうか。独立をするための方法は幾つかありますが、ここでは以下のタイプを紹介していきます。
・個人経営(オリジナル)
自分のイメージ通りのお店作りができます。また、お店で全ての工程を一人で担当するので、お客様との信頼関係を築くことができ、気に入られれば長く通ってもらえる可能性は大いにあります。
・フランチャイズ
フランチャイズに加盟して本部からの指導・バックアップを受けながら事業を行い、売上に対して一定金額を対価として本部へ支払います。経営のノウハウが受けられるので将来自分のお店を持ちたいという方は、選択の一つとするのも良いでしょう。
・のれん分け
のれん分けは長年美容室で勤務している従業員が独立する際、そのお店と同じ「屋号」の使用を許可してくれることです。また、スキルの高い優秀な従業員が対象である「独立支援制度」という制度が企業で設けられています。(「のれん分け制度」とも言われています)
※独立支援制度とは独立希望者が必要な運営資金や人材などの経営に関するサポートが受けられます。
・業務委託
フリーランスで働く美容師が事業者と業務を委託するため契約を結びます。
完全歩合制で顧客を抱えられれば、そのまま報酬に反映され拘束もあまりないので勤務形態が柔軟で自由に働けます。
2.独立開業に必要な準備
独立開業に必要な準備は漠然と理解しているけれど、実際何から手をつけたらいいのか迷ってしまうという方が多くいらっしゃいます。開業するには、資金プランや営業許可の手続きなどさまざまな準備をしなければなりません。ここでは個人で店舗開業をするにはどのような準備が必要なのか解説していきます。
2.1 コンセプトを決める
お店を開業するには、先ずコンセプト作りから始めましょう。独立をする際にとても重要な計画書です。イメージが思い付いたらそのまま紙に書いて、後でまとめると良いです。まとめる際には、以下の項目の方向性が明確になるようにコンセプトを作成しましょう。
①経営理念
美容室を開業するにあったての動機や目的などを明確にする。
②ターゲット層
ターゲット層(年齢・地域・性別・所得など)を絞ってからアプローチ方法を考える
③立地
郊外の住宅地、都心部あるいは美容院密集地帯など。ターゲットとする人の割合や動線などの調査が必要。
④他店との違いをアピール
他店とは違った独自のオリジナリティやサービス、物販(最新商品など)の提供。
2.2 物件探し
物件探しは毎月の家賃を考慮して選ばなければなりません。開業当初は顧客も少ないという状況を考えて、家賃は無理のないように物件を探しましょう。もし予算を抑えるのであれば、内装工事をする必要が殆どない居抜き物件がおすすめです。また、テナントを探す場合は不動産会社に直接問い合わせをすると空き物件を紹介してもらえます。実際に自分で出店したいエリアを歩いて街中の雰囲気などを知ってから物件を選んでも良いでしょう。また、美容室の競合店が多いエリアは一見避けたいエリアだと思われがちですが、密集しているからこそ刺激になって良い、人口が多いのでお店を知ってもらいやすいことがメリットでもあるという方もいらっしゃいます。
2.3 開業に必要な資金
美容室を開業するには内装工事費をはじめ、さまざまな機材や備品などの資金が必要です。
店舗の立地条件や広さによって異なりますが、開業資金の内訳をまとめてみました。
●内装工事費・・・美容室はシャンプー台など給排水が多いので設備工事費としての占める割合が工事費の50%になります。また、坪単価の平均は20万~40万円が多く、仮に25坪の店舗にしたい場合の工事費は単純計算で500万~1000万円が必要です。
●什器・備品等・・・シャンプー台や椅子、洗濯機、パソコン等で約200~300万円です。
●テナント等の賃貸費用・・・例えば家賃15万円のテナントなどを借りた場合、以下内訳のように合計210万円ほどかかります。
保証金(約10ヶ月分)⇒150万円
礼金(1ヶ月)⇒15万円
前家賃(2カ月分)⇒30万円
仲介手数料(1ヶ月)⇒15万円
●運転資金・・・運転資金は家賃や水道光熱費、シャンプー剤の材料費など毎月かかる費用です。最低でも3ヶ月分の資金を準備しておきましょう。
以上が基本的な資金の内訳ですが、独立開業に必要な資金の相場は約1000万~2000万円になります。自己資金だけでは厳しいという方が多いのが現状です。
融資を受ける場合には、日本政策金融公庫 創業融資という国民の生活向上を目的とした政府出資の金融機関があります。一般の金融機関に比べ低金利で借りられ無担保・無保証人で融資を受けることができます。審査に通過するには幾つかの条件がありますが、それさえクリアすれば安心して利用できます。
2.4 保健所の営業許可
店舗の工事が終わり、オープンできる状態になったとはいえ保健所からの営業許可がもらえなければ何も始まりません。営業を始めるには、店舗工事が終了した時点で店内の設備や構造が保健所の基準に満たしているかの検査と消防署の検査が入ることが前提です。
もし保健所から改善依頼の要請があった際は、微調整工事をする必要があります。
※保健所への手続きには手数料として2万円が必要になります。
3.成功に近づけるには?
美容師として働いて数年の経験を活かし独立開業するからには、誰もが経営を継続させたいものです。しかし、現実は厳しく独立開業後1年以内には半分以下しか継続していないのが現状です。
<事業継続率>
1年以内で40%
3年以内で10%
10年以内で5%
20年以内で0.3%
上記の継続率でわかるように、わずか1年以内での廃業は10件中6件という驚きの数字にあります。お店をオープンさせて数ヶ月経ったところで、経営の難しさを目の当たりすることが多いと言われています。事業を継続させるには、先ずは売上を向上させなければなりません。そのためにはコンセプトの見直しやしっかりとした資金管理、そして技術とサービスを向上させましょう。
①資金管理・経理
収支バランスが崩れるとお金の流れが滞り、赤字経営となってしまいます。経営知識は必要ですが、資金管理(経理面)は税理士に委託したほうが本業である美容業での効率アップにつながります。
②コンセプト
開業準備に重要なコンセプトが明確でないことも失敗例のひとつです。
曖昧ではなく顧客のニーズに合った供給ができるコンセプトを考えてみましょう。
③技術とサービス
技術とサービスのどちらか一方だけに重点を置いたビジネスをしていても顧客は満足しません。美容師は腕が良いことに越したことはありませんが、クオリティの高い接客・サービスも提供できなければ顧客は付きません。技術とサービスの両方を確立させれば顧客はリピートし、新規顧客の獲得にも繋がって経営面でも大きな効果を得ることができます。
さいごに
いかがでしたでしょうか。働きだした美容師が数年後には独立して自分を試したいと考えるのは当然のことだと思います。独立開業という夢に近づけるための準備は楽しくもありますが、不安材料もあります。5年後、10年後も継続させるため将来を見据えた計画も必要です。準備を怠らず徹底して行うことで事業を持続させ、そして成功へと繋がっていくことになるでしょう。