飲食店も値上げラッシュに!客離れを防ぐための対策と成功事例を紹介

昨今、材料費の物価高、酒税法の改正により相次ぐ値上げに頭を悩ませている飲食店経営者が多くいらっしゃいます。大手チェーンのみならず、個人経営の飲食店も値上げに踏み切ることを検討されています。特に個人店は常連客が多いため、値上げをしたことで「お客様が離れてしまうのでは」と不安になりますね。

そこで今回は、以前に解説した記事「飲食店の客単価とは?売上に影響する客単価アップの方法を徹底解説」に関連付けて、値上げ後にお客様が引き続き来店してもらうためには、どうしたら良いか、値上げ成功事例も含めて解説していきます。ぜひ参考にしてみてきださい。

1.値上げについて飲食店・消費者はどう捉えているのか

近年、世界的な国際情勢によって物価高が続き、国民生活に大きな影響を与えています。
また、外食産業も相次いで値上げラッシュを迎えています。
ここでは、飲食店と消費者において値上げがどのような影響を与えているのか、そしてどう捉えているのかみていきましょう。

〈飲食店側の値上げ影響〉
食品の原材料高騰(小麦粉や食用油など)で約90%以上の飲食店が影響を受けています。その結果、下記のグラフによるとお店の76.3%が5~15%程度の値上げを行うという意向にあるのが分かりました。

※引用:「飲食店.COM(株式会社シンクロ・フード)調べ」

また、値上げを実施した際に飲食店側から見たお客様の反応は以下の通りとなっています。

※引用:「飲食店.COM(株式会社シンクロ・フード)調べ」

「特に反応はなかった(45.1%)」が多く、次いで「客単価が上がった(34.6%)」「客足が減った(16.5%)
という結果になっています。その他「ネガティブな意見をもらった(6%)
も見られました。マイナスの影響が合計24%も見られ、「その他(5.3%)」にも含まれている可能性もあります。このような回答結果になりましたが、マイナスイメージによる打開策の必要性を感じられます。

〈消費者側の値上げ影響〉
では値上げによるお客様の反応はどうでしょう。

※引用:「ぐるなびリサーチ部 外食の値上げに関する調査」

上記の「Q4.外食が値上がりすれば今後の利用頻度に変化はあるか」の問いに47.9%の人が「変わらない」と回答しています。一方で「減る」の回答が52.1%もあるという結果になりました。消費者の多くは値上げに対して理解を示している一方で外食が減ってしまうのが現状のようです。
また、Q5の外食を「増える」「変わらない」と回答された理由は「外食が好きだから(38.2%)」「値上げの程度の許容範囲(29%)
という結果になりました。外食は非日常体験の気分を味わえる魅力的なことだと考えられます。その一方でQ6の「減る」という回答理由は「外食を減らすことで節約をるすため(54.3%)」「自分の収入が増えないから(48.8%)」と、いずれも節約したいという気持ちの強さが表れています。

2.値上げをしても来店客数が変わらない飲食店

実は、約7割の人が飲食店の値上げを理解していると言われています。
これは決して少なくはない数字で、飲食店に魅力や期待を持たれていると言えるでしょう。このように飲食店のニーズは高い位置にありますが、期待以上の料理・サービスなどを提供している店舗だけがどんな時代でも継続しているのではないでしょうか。
では、値上げをしても好調なお店とはどのような飲食ビジネスを目指し、実施しているのかみていきましょう。

◆健全な経営を継続
値上げをしない代わりに経費を抑えることだけ考えていると健全な店舗づくりはできません。例えば、お店の劣化状態にあるにも関わらず見て見ぬふりをしたり、人件費削減のためスタッフの勤務時間を減らすなど誤った選択をしてしまう危険性があります。
食材の仕入れ価格の値上げに応じて、メニュー価格の改定も必要だと考えたほうが良いでしょう。

◆ステルス値上げよりも値上げを検討
値上げをしないで食材の質や量を変えてしまうとリピート客は必ず気づきます。
価格を変えずに商品を少なくすることをステルス値上げと言いますが、あまりお勧めしません。食材の質や量を減らす方向性より値上げをする方が来店客数の変化は見られません。

◆特別感を与えているメニューの値上げ
定番の主力商品の値上げをしない代わりに、期間限定や季節の食材を使用したサイドメニューで価格調整をすることをお勧めします。新商品などで特別感を与えられるメニューは魅力的に見えるため高価格で設定しても期待感のほうが強く現れているようです。


飲食店にとって値上げは客数の減少が懸念されているとはいえ、値上げをしないことで食材の質や量で調整して店舗価値を下げてしまっては元も子もありません。値上げ後でも好調な飲食店は、先を見据えた対策で来店数の減少を抑えていると言えるでしょう。

3.値上げをするときの告知方法

価格改定を実施するときは告知をしますが、タイミングはいつ頃がいいのか、また媒体ツールはどのように活用すればいいのか、疑問に思われている方もいらっしゃいます。
先ずは告知するタイミングですが、価格改定の約2週間~1か月前ぐらい前に準備・告知をすると良いでしょう。特にリピーターは急な価格改定の告知に違和感を覚えてしまう方もいらっしゃいます。余裕をもって告知をするようしましょう。

告知は以下の媒体ツールを活用すると良いです。
■ホームページ
ホームページは、不特定多数の方へ向けての告知が可能です。より多くの人へお知らせできるので飲食店に限らず他業界でも活用されています。

■LINE
今やLineを活用しているユーザーは多数いらっしゃいます。集客の活用ツールとして店舗はお客様と繋げていることが多く、キャンペーンやイベント情報を配信しています。
したがって価格改定の告知ツールとしては最適です。

■張り紙(POPなど)
値上げ対象のメニューを張り紙用に作成し、お客様がよく目に入る場所(POSレジ付近など)に貼ると良いでしょう。何をどのように、いつから値上げを始めるのか早く知ってもらうことが大切です。


店舗の一方的な値上げではあるものの、価格改定の告知は早めに準備しましょう。
また、来店されているお客様へ「日頃の感謝と値上げする理由、今後のサービス・料理への向上、値上げを理解してもらう」という「感謝・理由・向上(心)・理解」の項目は欠かせません。お客様が引き続き来店してもらえるように低姿勢で尚且つ分かりやすく伝えるようにすると受け入れてもらい、客離れの減少は抑えられます。

4.値上げ対策の成功事例

飲食店の値上げに踏み切ることは非常に悩みますね。しかし「商品の価値に見合う値段」で料理・サービスを提供することで客離れを防ぐことができます。

たとえば「鳥貴族」株式会社鳥貴族が運営する焼き鳥チェーン店は、全品280円(税別)から全品298円に値上げした結果、一時は客離れが加速しました。しかし、長期的な戦略として打ち出したため、値上げ3年後には復活の兆しが見えてきたという事例があります。きっと値上げしたからには飲食店のプライドとして、今までと変わらない味・質に付加価値をつけ、満足のいくサービスを提供していったことに繋がったのでしょう。

また、「カレーハウスCoCo壱番屋」株式会社壱番屋が展開するカレー屋チェーン店は、主力商品を含め値上げをした後、一時は客数が減少したものの半年ほどで利益が増加したと言われています。これは、お客様に人気のあるトッピングがポイントだったようです。一つひとつトッピングは値上げ幅が少ないためお客様は注文しやすいということです。

値上げ後の成功事例を見てみると、一旦客離れはしたものの復活もしくは今まで以上に利益が上がったということです。一時的に離れてもお客様が戻るということはお店の魅力を知っていること、ウリとなる商品が存在していることが考えられます。
成功している飲食店はお客様の満足いくお店作りをどんな時代でも心掛けているのではないでしょうか。

さいごに

いかがでしたでしょうか。昨今、値上げラッシュで悲鳴を上げていながらも客離れの防止対策を行っている飲食店が多数存在しています。
店舗を守っていくためには、商品価値を見極めた上で適正価格を提示することです。値上げはマイナス要素だけではなく、お客様の期待に応えられる施策を検討できるポジティブ要素もあるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人