ペットビジネスを始めるには?第一種動物取扱業の登録申請に必要な要件を解説

トリマーとして働いて数年経ったところで、いつかはペットビジネスを始めたいという方が多くいらっしゃいます。今やペット産業は一兆円を超えるまで成長しています。その背景には少子高齢化が進むなか、ペットと共生を望む方が多くなっているなどが挙げられます。そのたペットによるニーズに対して、供給側の多様化が進んでいることで市場が拡大しているのだろうと言われています。
今回は、ペットビジネスの現状から新規参入をするための第一種動物取扱業の登録申請に必要な要件などを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

1.ペットビジネスの現状

近年、ペットを飼っている人が増えていることからペット産業は右肩上がりの成長を遂げている注目のビジネスです。
「ペットは家族の一員」という飼い主の想いが多いため、人間と同じように犬や猫などの「健康管理」「美容サービス」「ペットフート」など様々な意識が高まっている傾向にあります。それに伴い、ペット産業の活動が必然的に活発化しているということになります。

下記はペットビジネスによる市場調査および将来の見込・予測を表した数値です。

ペット関連総市場規模推移と予測

出典:矢野経済研究所「ペットビジネスに関する調査を実施

推移は急激な変化はないものの、穏やかな肩上がりで(予測も含め)市場は拡大傾向にあります。ペットに関連する健康志向への高まりによるフード関連、SNSによって「魅せる」ための美容サービス・ストレス緩和などのペットサロン、ペット関連製品(洋服)など、さまざまな業種の多様化が見受けられます。
ペットと過ごす時間が長くなるほど「キレイにしてあげたい」「良いもの食べさせたい」など情が湧き、それらに見合う業種が数多く存在しています。
今後もさらに市場は拡大していくであろうと予測されます。

2.第一種動物取扱業と動物取扱責任者について

ペットショップやトリミングサロンなどを開業する際には第一種動物取扱業の申請許可が必要となります。ここでは、第一種動物取扱業の種別による登録申請と動物取扱責任者の資格要件などを解説します。

2.1 第一種動物取扱業の種別区分と登録申請

下記のように第一種動物取扱業は種別ごとによって分類されています。よって申請登録は種別ごとに行うことになります。

第一種動物取扱業の7種類の区分

※出典:東京都福祉保健局〈第一種動物取扱業の登録について〉
※対象の動物は哺乳類、鳥類、昆虫類になります。

例えばトリミングサロンやペットホテル、ペットショップなどを開業する場合は「保管」の第一種動物取扱業の許可が必要になります。登録申請書は営業する所轄の保健所あるいは東京都福祉保健局(動物愛護センター)のHPもしくは窓口で入手可能です。
申請手数料は1種別につき15,000円となり、2種別は25,000円、3種別は35,000円と1種別申請が増えていく毎に10,000円加算されます。その他には1種別460円切手代と2種別以上は530円切手、それぞれ切手を貼った封筒が必要となります。
また、第一種動物取扱業者は事業所ごとに、常勤者のなかから動物取扱責任者を1名以上の選任をしなければなりません。

2.2 動物取扱責任者の資格要件

第一種動物取扱業は1名以上の動物取扱責任者を選任する必要があると前述しました。
ここでは、その動物取扱責任者の資格要件について解説します。
動物取扱責任者は以下の要件に該当すること、そして常勤の職員であることが前提条件となります。

  • 動物取扱業の業種である(申請業種)事業所で半年以上の実務経験尚且つ取り扱う動物の専門学校などの教育機関の卒業生
  • 動物取扱業の業種である(申請業種)事業所で半年以上の実務経験尚且つ取り扱う動物の専門性を要する試験に合格している資格取得者
  • 獣医師・愛玩動物看護士である

上記の半年以上の実務経験とは正規雇用として勤務していることですが、アルバイトやパートは要件に該当されているのか所轄の保健所などに確認してみる必要があります。
また、例えばトリミングサロンで半年以上の勤務後に独立開業する場合は、第一種動物取扱業の申請登録している勤務先から「従事証明書」を発行してもらいます。

以前は専門学校を卒業・業務に関する資格取得・実務経験のいずれかを満たしていれば動物取扱責任者の選任者となりましたが、令和2年6月1日より動物取扱責任者の資格要件が上記のように変わりました。
また、変更後において選任要件を得るために期間を設けています。たとえば令和2年6月1日以前で実務経験半年以上の方は、令和5年6月1日迄に専門とする資格を取得するなどの規定があります。令和5年5月31日時点で要件を満たしていないと選任ができず、事業所の運営はできません。
その他、動物物取扱責任者は都道府県等が開催する研修を受講しなければなりません。
研修は月1~2回で日程が限られているため店舗開業の数か月前には受講申込みをしておくと良いでしょう。

3.第一種動物取扱業における注意点

第一種動物取扱業は業種別に申請登録をした後、動物取扱責任者を選任したことでペットビジネスを始められます。種別の変更や追加などになった場合や更新などの事例もあるので注意しておきましょう。


〈変更に関する事例〉

  • トリミングサロンを運営しているが、ペットホテルも始めたい・・・「保管」が2つになりますが、新たな登録は不要です。ただし、「業務内容・実施方法変更届」の提出が必要です。
  • 犬カフェをしているが、販売も始めたい・・・犬カフェは「展示」、そこに「販売」を兼業するので、登録手数料15,000円と「販売」の新規登録が必要です。
  • トリミングサロンの店名を変更したい・・・「第一種動物取扱変更届出書」を提出します。
  • 「保管」と「販売」の両方を運営しているが「販売」を辞めたい・・・販売業の「廃業等届出書」および「登録証」を提出します。

〈登録更新について〉
第一種動物取扱業の登録は5年毎に更新の手続きをしなければなりません。

  • 有効期限の末日までに登録更新の手続きをする
  • 有効期間の末日までに登録を完了させないと無効になる

更新は有効期限の2か月前から手続き可能となっているので、早めに行うようにしましょう。

4.動物取扱責任者の変更・選任

動物取扱責任者が退職した場合は新たに責任者となる常駐職員を選任し、名義変更をしなければなりません。
また、動物取扱責任者が退職する際、新規の責任者は新たに動物取扱責任者研修を受講しなければなりません。「動物取扱責任者研修の修了証」の写しを発行してもらい、管轄する福祉保健センターに提出します。

動物取扱責任者の選任については、1人が複数の種別であっても兼任できることを覚えておくと良いです。例えば、ペットショップ「販売」にトリミングサロン「保管」も併設してある場合は同一事業所であれば一人が兼任できます。

さいごに

いかがでしたか。近年、ペットビジネスは成長を遂げています。しかし、数多くある業種は種別宇区分によって始められるビジネスは限られており、動物取扱責任者を選任しなければなりません。独立起業・開業するためには以下の必要事項に限られています。

  • 申請書の提出
  • 資格要件に満たしている
  • 講習の受講

これら3つの規定に従うことで、ペットビジネスを始められます。決して難しいことではありませんので、開業を目指している方はぜひ前向きに検討していかれたらと思います。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人