【日本のおもてなしについて】飲食店サービスが過剰にならないための注意点

日本の「おもてなし」は接客業において、世界的にも高評価を得ています。それは日本独自の文化が人として心のある接客を行っているということが根付いているからでしょう。
しかしながら、おもてなしを期待する一方で、過剰サービスだと感じているという人も少なくありません。
ここでは、サービス業でもある飲食店の「おもてなし」「過剰サービス」の違い、行き過ぎたサービスになってしまう要因などを解説していきたいと思います。
ぜひ参考にしてみてください。

1.おもてなしの主な要素とは

飲食店における「おもてなし」とは、お客様が来店されたときの歓迎表現のひとつです。
接客において大切な行為で、主に幾つかの要素から成り立っています。


◆心配り
日頃から心配りができる人は、自然と接客上手になっていることがあります。
察知力が必要で、お客様の状況に応じて先回りしながら心地よいサービスを提供することです。

◆目配り
心配りと似ていますが、観察力を要します。お客様の心情や表情などの様子を伺い、情報をキャッチしながら言葉を選びながら行動します。

◆立ち振る舞い
お客様へ丁寧な挨拶やお声がけ、姿勢などに気を遣うことです。たとえば、口角を少し上げて笑顔(のように)をみせること、お客様との歩く歩調を合わせるなどのワンランク上の立ち振る舞いで良い印象につながります。

◆身だしなみ
身だしなみは言葉いらずのおもてなしです。料理・サービスを提供する飲食店にとっては非常に重要です。誰もが不快だと感じる身だしなみは避けましょう。
理想のおもてなしを提供するには身だしなみのルール化を徹底することです。


上記は、おもてなしの基本的な要素です。ただし、店舗価値に見合ったサービスが基本となるため、高級店であればあるほど上質なおもてなし(ホスピタリティ)ができることが求められています。

2.おもてなしとサービスの違い

飲食店ではサービスの行き届いた接客で集客などに効果が表れることが多々あります。
そのためサービスにプラスしておもてなしを提供することもよくあります。
実は「おもてなし」と「サービス」は似ているようで、明確な違いがあります。


・おもてなしの持つ意味
先述したように、おもてなしは幾つかの要素から成り立っていることがわかりました。
心配りの表現が目立ってわかりやすいホテルや旅館は、おもてなしをする代表的なひとつです。たとえば、ホテル内の清潔さ・装飾、お客様のお出迎えやお見送り、季節に合わせた料理提供など、訪れるお客様に対して心からの歓迎を示しています。
飲食店も同様に、店舗の行き届いた雰囲気や言葉で心地よさをお客様に与えることがおもてなしとされています。


・サービスの持つ意味
おもてなしのように先回りした気の遣い方をする一方で、サービスはお客様の要望に対して応じる行為です。また、モノを中心としてお客様に有益・満足を得ることを意図としていることが多いです。たとえば、飲み物や食事のサービス、クーポン配布サービスなどがあります。
主にサービスとはお客様が支払う価格以上の提供を無償で提供することです。

3.おもてなしが過剰なサービスに!

おもてなしとサービスには違いがありますが、おもてなしがいつの間にか過剰サービスになり、鬱陶しく思われることがあります。また、過剰サービスが従業員の負担になり、雑な接客になってしまうことも少なくありません。おもてなしが過剰サービスになるとどのような影響があるのかみていきましょう。

3.1 おもてなしのが圧力

「お客様=神様である」というフレーズは大昔に存在していましたが、現在では言葉にもされなくなりました。しかし、この言葉通りのおもてなし(サービス)を教育している飲食店も少なからず存在しています。しかし、一切のミスもなく完璧なおもてなしをしているつもりが、やり過ぎるサービスだと感じているお客様も少なくありません。特に外国人にとっては、もう少し気楽さがほしいと感じている人が多くいらっしゃいます。

3.2 サービス(おもてなし)の強要

飲食店では可能な限り最高のサービスを、しつづけることが店舗方針となっていることが多くあります。また、近年人材不足と言われている飲食店では、接客向上のため対価以上のサービスを提供していることが少なくありません。その結果、従業員に負担がかかって過重労働となり、サービス(またはおもてなし)の質が下がり、誠意が伝わらないサービスとなってしまいます。

3.3 お客様の期待値が高くなる

お客様に対して心配りすることがおもてなしですが、一般的には印象が良いとされます。
ただし、必要以上にサービスを続けることで、次第にお客様の期待値が上がり対価以上のことを求めるようになってしまいます。
その結果、少しでも気に入らないとクレーマーとなってしまう危険性も考えられます。

3.4 マニュアル通りのサービス

接客マニュアルはサービス業にとって必要です。特に高級レストランなどは、価格に見合ったおもてなしを求められる為、社員教育の一環としてマニュアル化しています。
基本的なおもてなし・サービスを身に付けることは非常に良いことなのですが、欠点になりやすいこともあります。

  • マニュアルに沿った行動しかできなくなる
  • 負担になり従業員のモチベーション低下に繋がりやすい
  • 一方通行のマニュアルで、お客様との対話が困難になることがある
  • 心のこもった接客ができなくなる

マニュアルは大切ですが、サービス業である飲食店は、対お客様との関係で成り立っていることも忘れないようにしましょう。

4.おもてなし上手になるためには

日本独自の文化であるおもてなしですが、上手に高めるためにはどうしたらいいのでしょうか。飲食店で、さらに視点を広めておもてなし上手になるためのポイントを解説します。

①洞察力・観察力を身に付ける
お客様の行動状況・表情を常に気にかけて汲み取る力が大切です。表面的な部分を注意深く見ながら行動する観察力、そしてお客様が何を思って望んでいるのか見極める洞察力、それらを身に付けることです。

②お客様の顔を覚える
特に小規模な店舗では1回(少なくとも2~3回)来店されるお客様の顔を覚えてしまうのが飲食店の接客プロとも言われています。
記憶に残すことは大切で、例えば顔を覚えているだけで要求事がわかり、左利きのお客様の場合には箸(置き共)を逆向きにするなどの気を遣うことの表現が可能となります。記憶に残すということは、おもてなし上手になるための重要ポイントとなるでしょう。

③全てがマニュアル通りでは危険
マニュアルは多くの飲食店で存在していますが、お客様一人ひとりの心のあるおもてなし(サービス)をすることがお店の好印象に繋がります。
マニュアルだけを頼りにしていては、心の通ったおもてなしは難しくなることがあります。時には自分の言葉・しぐさでの接客が心のこもったおもてなしをすることがポイントのひとつです。

さいごに

いかがでしたか。世界でも認められているおもてなしは日本人として嬉しいことです。
ただ、サービスとおもてなしを提供したからといって全てが顧客満足度と一致するとは限らないことがあります。お客様目線で心のある接客をすることが大事なことだと言えるでしょう。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人