飲食店は、食材や消耗品などの在庫管理を行うことで仕入れ時の適正な数量が把握でき、食材の廃棄ロスなどを防ぐことができます。また、必要な時に、必要な数だけ、必要な食材を供給することで利益の確保にも繋がります。しかし、飲食店は日々忙しくしているため、在庫管理が疎かになってしまうという店舗も少なくありません。その対策は、効率的に作業を進めるための手順や押さえるべきポイントを把握すること、つまり在庫管理の理解度が高くなることでスムーズに作業を行えるということになります。
今回は、ポイントを押さえた在庫管理の手順、そしてそのメリットなどを解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
1.飲食店における在庫管理
在庫管理とは、商品(原材料や資材、仕掛品など含む)をどれだけ確保し、それによって必要な数量を仕入れて、如何に最適な数量の状態で供給できるかを管理する業務のことを言います。飲食店での在庫管理は欠かすことのできない業務のひとつです。
在庫管理を行うことで食材など適切な数量を仕入れるため、コストを最小限に抑えられるといった良い影響が大きく加わります。
また、飲食店の食材は賞味(消費)期限が短いものから調味料のように長いものまであります。その他消耗備品のペーパーナプキンやストロー、店舗によってはテイクアウトで使用する容器やビニール袋などがあります。食材とそれ以外の備品に関しての在庫管理の方法は基本的に同じです。これら全ての在庫管理を行うことで特に食材の過剰発注、そしてニーズ頻度によって購入する時の適正価格を決定付けることができます。
2.在庫管理で得られるメリット
重要性のある在庫管理を行うということには、もちろんメリットが存在しています。
ここでは在庫管理を行うことで得られるメリットについて解説していきます。
- 過剰な仕入れ・欠品がなくなる・・・在庫数を把握することで、過不足のない状態を保つため必要な分だけ仕入れることができます。
- 食品ロスを削減できる・・・飲食店にとって食品ロスは深刻な問題です。在庫状況を確認することで、需要予測ができるので食品ロスの削減に繋がります。
- 食品の品質や衛生面などの管理ができる・・・在庫管理を行うことで、食品の賞味(消費)期限や提供するに値しない商品の状況確認ができるため、食中毒の防止に繋がります。また、消耗品(テーブルナプキン、コースター、洗剤など)の品質確認も同時にすることで、汚れた備品などを見つることができるため衛生面の管理にも繋がります。
- 適切なキャッシュフローができる・・・在庫管理の数字化することで最低限必要な数だけの食材や備品などを発注するので仕入れコストが抑えられます。
3.ポイントを押さえた在庫管理の手順
重要度の高い飲食店の在庫管理ですが、ここではポイントを押さえた手順を解説します。
3.1 在庫状況を把握した上で仕入れる
飲食店では食材などの品質チェックを含め、在庫状況を確認します。
そして予約状況、曜日、日にち、気温などの判断から来店客数の予測をした上で、必要な食材数を発注します。気象災害以外の天候による来客予測は難しいと言われていますが、曜日や予約状況により、全体的にどれぐらいの客数になるか予測は可能です。
在庫状況を把握することで、需要と供給のバランスが整います。
ただし、お酒がメインの居酒屋などでドリンクが不足してしまっては売上の低下に繋がってしまいます。例えば、予測していた以上に生ビールの注文が多く、サーバーの樽が不足してしまったというケースも少なくありません。生ビールが切れてしまってはお店のイメージダウンになってしまう危険性があります。商品によっては余分に発注しておくことも必要です。
3.2 棚卸のマニュアル化
在庫確認をするには棚卸を行わなければなりません。棚卸しとは在庫状況を把握するための作業で、一般的には月末に一回行います。
棚卸しは、業務の見える化が可能になり課題や改善点を見つけ出すことができます。
そのためには棚卸し作業のマニュアルを以下のようなルールに従って作り出しておかなければなりません。
- 棚卸しをする範囲を決定するため、店長など責任者を決めておく
- 棚卸しをする担当者や日付、品名(賞味期限含)、数量、保管場所、集計まで記入した棚卸表をエクセルなどで作成する
- 作業分担を決めて二人一組になって在庫数を一人が読み、もう一人が記入する
- 全て完了したら品名や数量などの記入ミスがないかチェックする
- 責任者は原価率などの数字を割り出す
棚卸し作業のマニュアル化することで正確な数字を知ることができます。
また、棚卸しの数字が決まれば原価率の数字が割り出せます。
●原価率=(期首棚卸高+当月仕入高-期末棚卸高)÷当月上利上高×100
期末時点での商品の在庫金額である棚卸高を計算することで原価率を割り出せます。
飲食店の利益を上げるための指針である原価率は、非常に重要な役割を果たしています。
3.3 在庫管理システムの活用
飲食店に最適な在庫管理システムの導入をする方法もありますが、予算や機能を考慮して選ぶことが出来ます。人為的ミスを防ぐことができ、作業時間の短縮にも繋がります。
ここでは、いくつかの在庫管理システムを紹介したいと思います。
◆クラウド型POSシステム「スマレジ」
料金プラン:月額スタンダードプラン0円から最大プラン「リテールビジネス」15,400円まであります。
特徴:会計機能から売上分析、顧客管理、在庫管理などプランによって飲食店に必要な機能を網羅させて用意しています
在庫数を入力するだけで自動計算される簡易的な在庫管理ができる無料プラン、そして高度な在庫状況まで管理することができる最大プラン「リテールビジネス」まであります。
◆ユビレジ 在庫管理
料金プラン:1か月無料のお試し期間があり、気に入ればユビレジプレミアムプラン月額6,900円~用意されています。
特徴:iPad/iPhoneアプリで、バーコードの読み取りで在庫状況が把握でき、在庫切れになると知らせてくれるアラート機能がついていて、更に発注サポートまでしてくれる便利なシステムです。
◆フーディングジャーナル
料金:利用条件によって料金が変わるので問い合わせする必要があります。
特徴:飲食店に特化したシステムで店舗の必要な機能のみで組み立てることが可能です。
また、365日24時間対応のサポートが無料で提供されています。
4.在庫管理で適正在庫が維持できる
適正在庫とは過不足なく確保している適正な在庫数のことです。また、需要供給のバランスを保つためには、ある程度の在庫量が必要になりますが、これを適正在庫と言います。
適正在庫数の算出はいくつかの方法がありますが、ここでは需要数からの計算式を紹介します。
適正在庫数=一定期間の需要数+安全在庫
※一定期間の需要数⇒過去の一定期間(例えば一週間分)の需要数平均を求めた数字
安全在庫⇒最低限必要とされている在庫数
需要数から算出した適正在庫数を把握することで在庫不足を防ぐことができます。
ただし、売上が低下した場合は過剰在庫となってしまうリスクもあるので注意しましょう。飲食店の適正在庫を維持させるための発注方法として、サイクル発注と定量発注という方法があるので参考にしてみてください。
- サイクル発注:決まった日あるいは曜日に発注する方法
- 定量発注:決まった在庫数以下になったタイミグで一定数の発注する方法
お店の規模によって異なりますが、個人店は手間のかからない定量発注が多いです。
需要数予測と定量(またはサイクル)発注を行うことで適正在庫を維持することができます。
さいごに
いかがでしたか。在庫管理は需要供給のバランスなどを整えることができるため、経営する上で非常に重要なポイントとなります。効率よく在庫管理を行うためには押さえるべきポイントを把握し、複雑化を避けることです。また、店舗状況によっては在庫管理システムの活用を検討してみても良いかもしれません。ぜひ、適切な数字を表現化し、利益に繋がる在庫管理を実施してみてはいかがでしょうか。