歯科医院を医療法人化するメリット・デメリット、設立までの流れを解説

  • 「個人事業から医療法人化したとき、どんなメリットがある?」
  • 「医療法人設立までのスケジュールを知りたい。」
  • 「医療法人化について専門家に相談したい。」

このようなお悩みや疑問を抱えている歯科医院個人経営者、これから開業を目指している方の声を多く聞きます。

この記事では、医療法人化するとどんなメリット・デメリットがあるのか、医療法人化設立までのスケジュールを解説していきます。是非参考にして下さい。

1.医療法人化とは?

医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人です。(医療法第39条)
【厚生労働省】
医療法人を設立するには各都道府県知事に申請し、認可を受けることが必要となります。医療法人化すると、それまで「個人事業主」だった歯科医師は、すべて医療法人に帰属し、「法人格」という別人格が事業を行うことになります。個人事業主であった歯科医師は、給与をもらう「給与所得者」となります。

個人事業主のまま経営を続けるか、医療法人化するのかを検討するには、両者のメリット・デメリットを理解することが重要です。自院の運営状況・運営目的などを照らし合わせて、法人化について判断することが大切です。

2.歯科医院における医療法人化するメリット

①節税効果が期待できる
個人事業と医療法人では負担する税率が異なります。
個人事業の場合は、所得税が課税され、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる超過累進課税(所得税)が適用されます。医療法人の場合は、法人税が課税され、所得に対して一定の税率を負担する比例税率(法人税)が適用されます。
最高税率は法人税の方が所得税より低いため、医療法人化することにより法人税が適用され節税することができます。ただし、所得金額によっては個人事業の方が税負担を軽減できる場合があります。


分院開設が可能になる
医療法人化することで、分院展開が可能になり、事業を拡大することができます。
法人化していない個人事業の歯科医院では、1つの歯科医院しか運営することができません。
分院展開について詳しく知りたい方は、この記事を参照下さい。

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③継承・相続の手続きが容易になる
医療法人化することにより、歯科医院を継承・相続の手続きが容易になります。
個人事業の歯科医院が継承・相続する場合、「現院長の廃業」と「新院長の開業」の手続きが必要にな上に、多額の相続税がかかります。
医療法人化することで、現経営者である理事長から後継者に変更をする手続きのみで、歯科医院の資産や許認可を継承・相続することができます。


④社会的信用が向上する
医療法人化すると、社会的な信用が向上します。医療法人を設立には、都道府県知事の厳格な審査基準が設けられており、審査に承認されると社会的信用が高く評価されます。
また、医療法人は設立段階で登記手続きや設立費用の調達という過程を経ており、個人事業歯科医よりも社会的信用度が高くなり、融資審査に通りやすくなると考えられます。


⑤優秀なスタッフ確保が期待できる
医療法人としてスタッフを採用する場合、社会保険の加入が義務づけられています。
健康保険・厚生年金といった社会保険を充実させることで、安心して働き続けられる職場づくりが実現できます。優秀なスタッフ確保・定着につがなるでしょう。

3.歯科医院における医療法人化するデメリット

①社会保険料の負担が大きい
個人事業の場合、従業員が5人未満であれば、社会保険の加入義務はありませんが、医療法人化した場合は、従業員の人数に関係なく、社会保険への加入が必須です。
法人負担は、社会保険料の1/2ですから、金銭的負担が増加することになります。


②医療法人の解散は容易ではない
医療法人を解散する場合、都道府県知事の承認が必要になり、容易に解散することができません。
これは、地域医療の担い手であるという観点から、事業の永続性を求められているためです。
また、残余財産は国や地方公共団体へ帰属することになっています。
解散する前に役員報酬や役員退職金の支給計画をたてることで残余財産を残らないようにすることで対策が可能ですが、計画的に解散しない場合、大きなデメリットとなります。


③収入を自由に使えない
個人事業主は、財産や収入は経営者個人に帰属するため自由に使うことができます。
医療法人になると個人事業主であった歯科医師は給与をもらう給与所得者になるため、経営で得た収入はすべて医療法人に帰属します。経営者といえども、収入や財産を好きに使うことができなくなります。


④事務手続きの負担が増える
医療法人設立の手続きは非常に煩雑です。
また、都道府県知事の承認され医療法人化された後も定期的に各種関係機関に事業報告の届け出を行う必要があります。事業報告書や資産登記、理事会の議事録など書類作成の手間と時間の負担が増えます。

4.医療法人設立までのスケジュール

医療法人設立までのおおまかな流れは以下の通りです。
具体的な日程は、各都道府県により異なりますので、確認が必要です。

  • Step①:都道府県担当部署による医療法人設立説明会(設立の手引)
  • Step②:定款等(案)の作成
  • Step③:設立総会の開催
  • Step④:設立許可申請書の作成、提出
  • Step⑤:設立許可申請書の審査
  • Step⑥:都道府県医療審議会へ
  • Step⑦:設立許可書受領
  • Step⑧:設立登記申請書類の作成※法務局出張所
  • Step⑨:登記・医療法人設立完了

さいごに

いかがでしたか?歯科医院が医療法人化するとどのようなメリット・デメリットがあるか、医療法人設立までのスケジュールがご理解頂けたかと思います。
歯科医院における医療法人化はたくさんのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
自院の運営状況や運営目的を考慮し、慎重に進めていきましょう。
また、各種の届出は自分で行うことも可能ですが、専門知識が必要とされる書類もあるため、専門家に依頼することをおすすめします。


相談できる税理士が身近にいない場合、一度、BrancPort税理士法人にご相談ください。

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