近年、「カスハラ」という言葉をよく耳にしますが、これは「カスタマーハラスメント」といって顧客が企業や店舗に対して理不尽なクレームや暴言を吐くことです。
飲食店でもこのカスハラ問題に頭を抱えている経営者が、どのように対応したらいいのか、あるいは対策方法を知りたいという方が多くいらっしゃいます。
今回はこのカスハラはなぜ起こるのか、そしてそのパターンと対応方法などについて、解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
1.カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
先ずカスタマーハラスメント(以下カスハラ)とは、ハラスメントの一部で企業やサービス業における店舗などに対して不当なサービス・商品の要や、理不尽なクレームを発して嫌がらせをすることを言います。
飲食店においても「嫌がらせ」や「悪酔い」などによる一方的ないじめのようなカスハラが発生しています。その嫌がらせによって逆らえない従業員やスタッフを見ると、どんどんエスカレートする場合もあります。
このようなカスハラ行為は年々急増しており、飲食店では6割以上の従業員がカスハラを受けたことがあるという結果です。
★参照:カスタマーハラスメントによるアンケート結果
調査対象:飲食店COM
ただし、カスハラは著しく迷惑行為となりますが、改善要求であるクレームとは異なる部分があるので注意しましょう。
2.カスハラが起こる理由
カスハラには心理的要因と社会的要因という2つの要因がありますが、最初はクレーム程度だったのに、暴言が収まらなくなりエスカレートしてカスハラに発展するこが多いようです。ではここで、カスハラはなぜ起こってしまうのかみていきたいと思います。
●心理的要因
日常生活のストレスや不満から起こるカスハラで、個人的な心理状態によって一方的に嫌がらせを繰り返してしまうものです。また、カスハラ問題が最近取り上げられ、よく耳にすることで自分自身が苦情を訴えることに抵抗を感じなくなっていることも増加の要因です。
その他、「優位に立ちたい」「優越感を感じたい」など強く思っている人がカスハラ問題を起こしやすいです。
●社会的要因
日本はストレス社会と言われていますが、これもカスハラを引き起こしてしまう要因です。
環境の変化などで身心ともに疲労が溜まり、感情のコントロールが出来なくなってしまうことがよくあります。飲食店での接客態度や料理内容などの些細なことでクレームを言い、徐々にエスカレートしてカスハラとなっていくケースがよくあります。
SNS導入時期と並行して、社会的に人々の寛容さが失われてきたとも言えるでしょう。
3.カスハラのパターンとその対応例
カスハラには幾つかのパターンがあります。飲食店では、それぞれに適した対応で接する必要があります。
3.1 時間による拘束行為
何らかの原因でお店が気に入らないとスタッフを呼び出し、長時間にわたっての説教や、暴言を繰り返し行うことです。長時間にわたってスタッフを拘束するタイプです。暴言を受けているスタッフとっては、ストレスを感じしてしまい、業務も一旦中断させることになるので営業妨害になります。
〈主な対応例〉
長時間のカスハラを受けた場合、一度は話に耳を傾け店舗側で対応できるかできないかの判断を明確にした上で、応じられない場合はその理由を説明します。それでも拘束するのであれば退去してもらいます。退去しない場合は警察や弁護士に相談する旨伝えてみましょう。
3.2 暴言や無理な要求
大きな声で怒鳴る、スタッフへの罵倒発言などによるカスハラです。また、一度は退去したものの後日「料理を食べて腹を下したので金返せ」など証拠もないのに無理な要求をしてくるカスハラも存在します。店内にいる他のお客様を怖がらせるといった迷惑行為となり、営業妨害に繋がります。
〈主な対応例〉
先ずは大声での暴言をやめるように注意します。それでも暴言続行するようであれば、後の事実確認ができるように録音またはスマホで撮影するなどの対策をとります。
また無理な要求をされた時は、丁寧にできない旨を伝えます。それでも引き下がらない場合は、警察や弁護士に相談してから話す提案をしてみましょう。
3.3 威嚇や脅迫
怒鳴り声でスタッフなどを屈辱し、威嚇したりします。また、スタッフの人格を否定するような発言までエスカレートしまうケースもあります。「殴るぞ」「反社会と繋がっている」など脅かしたりすることもあります。
〈主な対応例〉
人格否定までされた場合は、精神的に受けるダメージが大きくなってしまいます。
事実確認のためカスハラ発言や状況など顧客との対話を試みてみましょう。
更に態度が悪化する場合は、証拠として録音などして退去を求めることをお勧めします。
3.4 SNSなどによる誹謗中傷
近年SNS普及により、サービス業にとってメリットがある反面デメリットも存在しています。SNSは良くも悪くも拡散性が高いのが特長です。誹謗中傷・名誉を棄損してしまうような情報を投稿するケースもあります。また、「外食テロ」と呼ばれる悪質な動画投稿も問題になっています。
- 顧客が食器などを使って悪戯している様子をSNSに投稿する
- 従業員の接客態度を無断撮影して投稿する
〈主な対応例〉
被害の内容を再確認して店舗の落ち度がないか、または嫌がらせ行為となるのかの判断が必要です。
SNSによる被害は、放置せず掲載先のホームページの運営者(管理人)に削除を求めましょう。
もしカスハラによって店舗に損害が生じてしまった場合には、損害賠償請求を行うことが可能です。しかし、カスハラ顧客を特定しなければなりません。その際には、「発信者情報開示請求」という手続きが必要となるので弁護士のサポートが必要となるので相談してみましょう。
4.カスハラを未然に防ぐ対策
カスハラを未然に防ぐためには、どのような対策をとればいいのか迷われている飲食店経営者が多くいらっしゃいます。カスハラは従業員の離職、売上減少といった悪循環に陥る場合があります。この負の連鎖を断ち切るためには、カスハラ予防をしなければなりません。
①店舗スタッフに教育トレーニング
カスハラを想定した場合の対応方法をレポート化し、カスハラ対応を学ぶための教育トレーニングを行います。先ずは「冷静な判断力」「感情的にならない」を身に付け、カスハラ顧客を落ち着かせることを先決とします。攻撃してくる相手にはむきにならないことです。
トレーニング後は店長および他のスタッフと共有し、ディスカッションを行いましょう。
②カスハラにあった時のルール化
先述した教育トレーニングに次ぐ対応方法を更にルール化し、お店で働く全員が共有できる環境をつくります。この場合、具体的なカスハラ例(シナリオ)を揚げて、どのような対応をしたらいいのか掲示しておき、スタッフ全員が目を通すようにします。
③監視カメラの設定
近年、飲食店に限らずどの場所でもさまざまなトラブルの報道をよく耳にします。そのため街の片隅に監視カメラが増えましたが、飲食店でも万が一の時に備えてカメラの設置を検討してみましょう。
④従業員へのサポート体制
暴言や悪質な態度は従業員のストレスに繋がり、メンタルが壊されてしまい出社拒否、あるいは退職に繋がりかねません。カスハラを受けた従業員が、直ぐに店長などに報告できるような環境を作っておくことが必要です。
従業員が安心して働ける環境作りは重要と言えます。
さいごに
いかがでしたか。カスハラの起こる理由からパターンと対応例などを解説しました。
カスハラ問題は多くの業種で大きな課題となっています。飲食店にとってもカスハラ行為は深刻化しています。未然に防ぐことで被害になる可能性が少なくなり、適切な対応によって問題を抑えられるかもしれません。また、手に負えないカスハラは顧問弁護士(外部機関など)に相談することを検討しましょう。