繁忙期の忘年会や歓送迎会などで幹事を任されたとき「飲み放題・食べ放題」は飲食店を選ぶ基準となっていることが多いようです。個人店でも少人数から可能な食べ放題・飲み放題を貸切で導入していることが多いため、選択肢の広がりを見せています。
食べ放題・飲み放題はお客様にとってお得感はありますが、お店側にとってどうなのでしょうか。「原価割れしていないか」、「利益はでるのか」など心配されている飲食店オーナーもいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は「飲み放題・食べ放題」の儲かる仕組み、そしてメリット・デメリットなどを解説していきたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
1.「食べ放題・飲み放題」で求められているもの
制限時間はあるものの一定の料金を払えば量に関係なく食べたり飲んだりできるというシステムはお客様にとっては魅力的であると思われます。しかし、お客様が食べたい料理と同時に食べたくない料理もお店が提供してくれる、そしてその対価を支払うという奇妙なシステムでもあります。また、大人数で飲み放題を利用されるお客様のなかでアルコールを大量に飲める人、飲めない人がいても同じ料金を払っています。それでもお客様は飲み放題・食べ放題を求めてお店を選んでいます。
ここでは飲み放題・食べ放題を選ぶ理由はどこにあるのか紹介していきたいと思います。飲み会の幹事を任された時にお店選びのどこに重視するかのアンケート調査では「個室・貸切できるお店 43.9%」が多く、次いで「食べ放題・飲み放題 43.0 %」の結果でした。理由としては以下が考えられます。
(出典:アサヒグループホールディングス インターネット調査)
- 最後の清算が楽(前以て会費制として集金できる)
- 飲む人が多いので飲み放題は安上がり
- 2人以上でクーポンが使える食べ飲み放題はお得感がある
以上のような理由が考えられます。しかし、飲み放題・食べ放題を利用したお店に対して「料理提供が遅い」「接客態度が良くない」などの辛口コメントもあります。お得感という点ではとても充実しているお客様が多いのですが、コースプランに関係なく接客サービスなどの不平不満の意見が寄せられていました。
また、アルコールとソフトドリンクの飲み放題で求められるメニューは以下の通りとなっています。
アルコールは年代に関係なく生ビールが圧倒的に多く、全体(男女)で52.3%となっています。次いで酎ハイ・サワーが22.2%、その他はあまり差がなくほぼ同じです。ソフトドリンクはお茶系(ウーロン茶など)が28%で女性がほとんど占めています。その他の炭酸飲料やコーヒーなどは殆ど変わっていないことが分かりました。求められるドリンクを把握することでお客様の満足に繋がるメニュー作りができます。また、男女によっても違いがあるのでぜひ参考にしてみてください。
2.飲食店が儲かる仕組み
飲食店は売上を上げるためにさまざまな戦略を模索しながら実行しています。その戦略のひとつとして飲み放題・食べ放題というコースプランがあります。ここでは、飲食店が儲かると言われている食べ放題・飲み放題にはどのような仕組みでできているのかを解説していきます。
2.1 飲み放題の狙い
飲み放題はファミリーレストランやカラオケ店などのドリンクバー、居酒屋を中心に時間制限を設けた飲み放題プランなどがあります。実はアルコール、ソフトドリンクは原価が安く利益を十分に残すことができます。ここではどれぐらい飲めば利益がでるのかシミュレーションをしてみます。
- 90分の飲み放題プラン…1人1500円
- アルコール1杯の原価…ビール160円、日本酒・ワイン150円、カクテル50円、酎ハイ50円、焼酎40円
上記のアルコールを1人5杯飲むと合計450円、下記の計算式で原価率を求めると30%になり理想的な数字になります。
※原価率の計算式⇒(売上原価)450円÷(売上)1500円×100=原価率30%
ビールの原価が一番高いですが、ほとんどが乾杯の1杯もしくは2杯までが多いです。90分という限られた時間内で同じものを飲み続けることは少ないようです。また、日本酒やワインが好きなお客様は銘柄やテイストにこだわるので1杯程度であまりの飲むことはありません。よって原価の安いカクテルや酎ハイ、サワーなどを多く飲んでもらうことで利益が上がるという仕組みになっています。また、飲み会は会話を楽しみたいというお客様が多いため、時間内でアルコールを飲んでも4~5杯といったところです。
2.2 食べ放題のカラクリ
食べ放題を利用するお客様は元を取りたいという気持ちが強く、特に焼き肉やお寿司、ケーキ・デザートなどのビュッフェ式といった定番料理・スイーツなどを目的としていることが多いです。しかし、お客様が限られた時間内で食べ続けていても元をとることは非常に難しいと言われています。その理由は以下のとおりです。
- 焼き肉やお寿司など単価が高いものも含め、食べ放題の原価は単品メニューより安い。
- 1人で2人前の値段で3人前分を食べても儲かる仕組みになっている
たとえば1,000円の単品メニューの原価を300円、経費を500円とします。
売上1,000-(原価300円+経費500円)=200円の利益
これを飲み放題2,000円で3人前を食べた場合
売上2,000-(原価900円(3人前)+経費500円)=600円の利益
このように単品と食べ放題の利益に差があることで、2人前以上食べても儲かる仕組みとなっています。
2.3 飲み放題・食べ放題の工夫で売上アップ
飲み放題・食べ放題は品揃えが豊富なのが魅力的でもあります。お客様はこのカテゴリーの選択肢が多いことがお店を選ぶひとつのキッカケにもなっています。そこで重要なのがカテゴリーのなかで原価の安いものをお勧めメニューとして興味を持ってもらえるようにすることです。
例えば飲み放題のなかで生ビールは外せないドリンクですが、原価の安いサワーなどで「当店おすすめ○○サワー」などオリジナルドリンクで誘導させる工夫をすることです。食べ放題に関しても同じく「料理長オリジナル○○メニュー」などネーミングによってお得感を感じさせることです。
また、アイテムによってコースをスタンダートプランからプレミアムプランなどランクを付け、低価格から高価格に分けることで売上アップに繋がります。
3.飲み放題・食べ放題のメリット・デメリット
飲み放題・食べ放題のシステムはメリットが多くありますが、少なからずデメリットもあります。
●飲み食べ放題のメリット
- 広告宣伝として集客効果に期待が持てる…飲み会で幹事を任されたとき、前以て予算のイメージがつくので飲み食べ放題は利用されることが多いと前述しました。利用してもらえれば来店した人数全員にお店の宣伝ができるというメリットがあります。また、副菜や主采、主食といったバランスのよいメニューを取り入れたり、値段と味が整っていることで満足してもらえる可能性が高くなり集客効果に期待が持てます。
- 差別化を図ることでリピート率が上がる…他店との差別化を図るためには看板メニューは欠かせません。そのお店の看板メニューであるドリンクまたは料理を提供することで意図的に口コミを発生させることが可能になります。また、個人店だからこそ常連として行きやすいイメージを持ってもらうことでリピート率も高くなります。
- 人件費削減に繋がる…飲食店の規模によって異なりますが、人件費の削減に繋がります。特にビュッフェ式の場合、ホールのオーダー取りやドリンク・料理の提供の必要がないため、スタッフの人数は通常の半分で済みます。飲み食べ放題で利益を上げ、人件費削減もできるということは大きなメリットになります。
●飲み食べ放題のデメリット
- 食品ロス…飲み放題のドリンクは残さず飲み切ることが多いのですが、ビュッフェ式の食べ放題は元を取ろうとして無理にお皿に盛ったりして食べきれず残してしまうことがあります。食品ロスは大きなデメリットとなるため、対策を検討する必要があります。
- 品質の問題…飲み食べ放題のメニューは品質が落ちるといったイメージがつきやすいです。たとえば飲み放題にあるサワーなどの割ものは「アルコールが少量」、料理(食材)はアラカルトに比べて「品質が落ちる」など、あまり期待していないお客様も少なくありません。損はしないもののお客様に満足してもらい、また来たいと思える内容でなければなりません。
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回は飲み放題・食べ放題の儲かる仕組み、メリット・デメリットを解説しました。大手チェーン店などで導入されていることが多いのですが、個人店だからこそできる日頃の感謝として、常連さんも含め人数制限を設けた貸切イベントで飲み食べ放題を実施してみてはいかがでしょうか。新規顧客獲得に繋がり、リピートしてくれる可能性に大いに期待が持てます。