近年、新型コロナウィルス感染拡大により、時短営業や休業要請などで飲食店の経営が非常に厳しい状況に置かれています。しかし、このような状況の中、テイクアウトは外食需要の大きな穴埋めとなり、売上を上げる手段のひとつとなっています。また、これまで店内でしか利用できなかった料理を自宅やオフィスで食事を楽しんでいただければ、店舗の存在を知ってもらえる良い機会でもあります。
この記事では、テイクアウトを導入する前の準備やメリット・デメリットなどを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
1.テイクアウトは始めるべき?
コンビニのお弁当やデパ地下で販売している惣菜などを持ち帰って自宅で食事をすることを「中食」といいます。中食は、1980年代後半ごろから「高齢化」や「核家族」「女性の社会進出増加」などの消費者のライフスタイルの変化により、あらかじめ調理された食品を家庭で食べるという形態が多くみられるようになりました。しかし、現在では新型コロナウィイルスの感染拡大によって外出自粛の影響で外食を控えるようになり、テイクアウトである中食を求める人が増えてきています。今では約8割の飲食店がテイクアを実施中、もしくは準備中や前向きに検討している状況です。新たなサービスとして積極的にテイクアウトを始める飲食店が増加傾向にあります。消費者がテイクアウトを利用する理由は「時間の節約」「便利」「自宅で美味しいものを食べたい」「安い」などが挙げられています。そして、コロナ収束後もテイクアウトを利用したいと考えている人が90%以上もいることがわかりました。テイクアウトは、今後も大きく需要があると予測されるため、導入している飲食店が多くいらっしゃいます。
2.テイクアウトの準備
テイクアウトを導入している飲食店が急激に増えていますが、実施するにあたってどのような準備をすれば良いのか疑問や不安を感じている飲食店経営者がいらっしゃいます。ここでは、テイクアウト導入のために必要な準備を解説していきます。
2.1 容器等の準備
テイクアウトを始めるには、先ず料理を入れる持ち帰り用の容器等が必要です。容器選びは、素材やデザインに関係なく料理を入れれば良いというわけにはいきません。取り扱う商品(スープやカレーなどの汁物)によって別容器を準備するなどの検討をしていく必要があります。
①持ち運んだときに料理が崩れない、水分が漏れにくい容器を選ぶ、
②料理は温度によって味の変化があるため、なるべく温かさを保つもの(もしくは電子レンジ対応の容器)
③食べ終わったときのゴミの分別がしやすい
④「形状」「材質」「カラー・デザイン」がメニューに合った容器を選ぶ
容器以外に持ち帰り用の袋やスプーン、割り箸、紙ナプキン、おしぼりなどの準備も必要です。お客様はテイクアウトを利用した際、容器はもちろんですがカトラリーなどの細かいサービスにどれだけ気を遣っているか冷静にお店の良し悪しの判断をします。お店の判断材料となれば好印象を与えるため、容器の付属品にも手を抜かないようにしましょう。
2.2 価格設定
多くの飲食店経営者が価格をどのくらいにしたらいいのか頭を悩ませています。通常、価格は店内で提供している料理よりテイクアウトのほうが安く設定しています。大切なのは価格以上の料理(お弁当など)に見せる盛り付け方です。料理の色彩を上手に使ってボリューム感を出し、低価格でも如何に高価に見せられるかが必要です。客単価の高い店と低い店によってお弁当や惣菜の値段は異なりますが、消費者がテイクアウトのランチで求めている値段は平均1000円弱が多いです。ディナーの高級弁当や惣菜(大人数用・パーティー用など)は、2,000円程度です。
2.3 SNSなどによる宣伝
テイクアウトを始めたら必ず宣伝・告知をしましょう。
宣伝・告知は、以下のようにSNSからチラシによる方法があります。特にSNSはリアルタイムに最新情報ができるので効果は大きいです。
①インスタグラム
②LINE
③Face book・Twitter
④チラシ・ポスター
①インスタグラム⇒ユーザーの認知度が高いため、かなりの宣伝効果を得ることができます。ハッシュタグを使って検索をすればダイレクトに料理写真を見ることができます。食欲を掻き立てるような写真と分かりやすく簡単なコメントで消費者に十分伝わります。また、インスタグラムからテイクアウトの事前注文まで可能なアプリPicksなどもありますので参考にしてみてください。
②LINE⇒タイムラインなどでお店側から直接情報発信ができるので宣伝・告知に適しています。またlineを通じて注文予約・事前決済まで可能なテイクアウトサービス「lineポケオ」などもあります。
③Face book・Twitter⇒時間が空いている時に飲食店などの近況を知る目的で利用している人が多いので、インスタグラムやLineより宣伝効果は低いですが、常に最新情報(メニューの変更等)を更新することで消費者の目に留まる可能性は大いにあります。
④チラシ・ポスター⇒アナログですが、たまたま飲食店の前を歩いていた人が美味しそうなポスター写真やチラシを見かけて、テイクアウトを利用したというケースが予想以上に多いです。
3.テイクアウト導入時の注意点
テイクアウト用のメニューを調理する場所は、既存の飲食店またはテイクアウト専門店の2つのパターンがあります。ただし、イレギュラーとして販売する場所とは異なる施設などで調理する場合もあります。調理する場所によって営業許可が必要となるケースあるので注意しましょう。ここでは、営業・製造許可およびお客様に安心して食事をしていただくために必要な衛生管理などについて解説をします。
①既存の店舗・専門店開業する場合の注意点
客席を必要としないテイクアウト専門店は、販売スペースさえあれば営業が可能なため比較的簡単に開業できます。しかし、既存の店舗同様、専門店も飲食店営業許可を取得する必要があります。また、新たにテイクアウトを始める飲食店や専門店は販売する商品によって製造業許可が必要となるケースがあります。
■自家製のパンやケーキ⇒菓子製造業
■自家製のハムやベーコンなど(おかずの一部は不要)⇒食肉製品製造業
■自家製アイスクリーム⇒乳類販売業
■刺身⇒魚介類加工業
店舗以外の施設などで調理して販売する場合は、施設の管轄する保健所に相談する必要があります。
②消費期限などの注意点
店舗から一旦離れる商品は、食中毒が発生しないように衛生管理面での注意が必要です。飲食店で調理した料理をテイクアウトする際、消費期限などを表示する必要はありません。そのため、お客様に消費期限や保管方法(必要であれば温め方)を伝えるなどの工夫が必要です。特に梅雨から夏にかけて食中毒が起こりやすいので、注意喚起を徹底することをお勧めします。
4.テイクアウト導入のメリット・デメリット
テイクアウト導入により、店内営業時と同じぐらいの売上を伸ばしている飲食店も少なくありません。新たなテイクアウト販路によって新規顧客の獲得に成功しているケースもありますが、成功に繋がらないこともあります。ここでテイクアウト導入時に知っておきたいのは、メリット・デメリットです。
<メリット>
通常、店内営業の売上を意識する場合は「売上=客席×回転数×客単価」となります。回転数を意識せず売上アップを目指すとなると客単価を上げてサイドメニューを増やすなどしなければなりません。しかし、テイクアウトは客席を必要としないため客席数や回転数に関係なく売上を上げることが可能です。テイクアウト需要がある限り、お店で好評なメニューも含めた料理を安価で持ち帰っていただき、内容に満足してもらうことで売上アップにつながります。
特に小規模店舗でのテイクアウトは、スタッフ1人で調理から販売までの営業可能です。ホールスタッフは必要なく、食べ終えた食器等を洗う業務も不要のため人件費は抑えられます。
今までお店を知らなかった人がテイクアウトによって知ってもらえるチャンスが増えます。SNSやテレビなど見て美味しそうな料理が気に入り、テイクアウト注文したという人もいます。購入前のお客様は期待値が高く、実際に食べて美味しいと感じられればテイクアウトの常連客となることもあります。
<デメリット>
テイクアウトの一番のデメリットは価格の低さにあります。その上、持ち帰り用の容器やカトラリー、おしぼりなどの消耗品にかかる費用が発生します。消費者はテイクアウトを利用する際、ある程度の価格上限が決まっていることが多いので、高い値段で販売すると購入してもらう確率が低くなります。如何に商品の内容を高価に見せ、安く感じさせるかで売上が変わってきます。定期的に販売価格とメニューの見直しをしてみるのも良いでしょう。
持ち帰り用の料理は自由度が低いため、テイクアウトに適したメニューを考案する必要があります。そのため、ある程度決まった調理になってしまう傾向にあります。
冷めても美味しいさ(美味しく見えるもの)を維持できるように工夫することが大切です。
さいごに
いかがでしたでしょうか。今や飲食店でのテイクアウトは当たり前のように行われています。導入準備をひとつひとつクリアしていけば比較的スムーズにスタートすることができます。買っていただくお客様のため、さらには新規のお客様に味を覚えてもらうためにテイクアウトを始めてみましょう。認知度を上げるには最高のチャンスだと思います。