立ち飲み屋は狭小地でも開業できるため独立を目指している人たちに人気が高まっています。また、利用者側にとっても安価で気軽に飲食できるので魅力を感じているようです。
最近では若い女性も増えてきて賑わいをみせています。そんな幅広い年代を惹きつける立ち飲み屋の人気理由は、気軽さや値段の安さだけに留まらず他にも多数あると考えられます。ここでは「立ち飲み屋」の人気理由を含め、経営する上でのメリットなどを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
1.立ち飲み屋のルーツ
立ち飲み屋の起源は江戸時代から行われていました。酒屋でおつまみと酒を購入してそのお店に併設された一角(カウンター)で立ったまま飲食をするというスタイルです。現在では繁華街にとどまらず住宅街にまで出店し地域密着型といったスタイルで根付いています。
もともと立ち飲み屋のことを「角打ち」と言われていますが、これは四角い枡の角に口をつけて日本酒を飲むことから呼ばれたそうです。この角打ちは北九州が発祥の地で、工場や港湾などで働く労働者が安価で気軽に立ち寄れる憩いの場として賑わせていました。
しかし、1960年代をピークに立ち飲み屋は減少傾向にありました。近年では、開業費を安く抑えられるということもあり、昭和を再現したレトロ趣味やアンテナショップといった事業拡大のための新規開業、不況でも安価で飲める憩いの場として参入している飲食店が増加しています。また、日本酒のみならずスペインバルやワイン・洋酒を提供する欧風スタイルといったお洒落な店舗も増えています。
ちなみに「11月11日」は立ち飲みの日と言われているそうです。
「1111」という数字がかつての密状態、そして立ち飲みに似ていることから根付いたそうです。また記念日として「日本記念日協会」のも認定・登録されています。
2.立ち飲み屋が人気な理由
現在では昔ながらの立ち飲み屋からお洒落なバルといった店舗が多数存在しています。
友達同士や会社仲間、そして今や若い女性でも一人で入れる癒しのスポットとして人気を集めていますが、なぜここまで人気があるのでしょうか。
ここでは、お客様が求めている立ち飲み屋についてのアンケート結果をみていきます。
〈以下、図の出典:立ち飲み屋に関するアンケート〉
①どんな時に立ち飲み屋を利用するのか
「一人で気軽に飲みたい時」が55%と圧倒的に多く、次いで「(職場以外の)友人と飲みたい時」が38%となっています。予約しなくても気が向いたときにフラッと立ち寄れるスタイルが人気を呼んでいるのかもしれません。
②立ち飲み屋について重視すること
上記のアンケート結果によると、「手軽な価格」が87%と圧倒的に高く、次いで「料理の美味しさ」が64%、「店の雰囲気・入りやすさ」が47%となっています。
「手ごろな価格」を重視している人が多いですが、料理の美味しさや雰囲気の良さを無くしてはコスパが高いと思われてしまう可能性があるので注意しましょう。
③一軒につき支払える金額
金額では「2,000~3,000円未満」が46%と多く、次いで「1,000~2,000円未満」でした。立ち飲み屋は値段の安さがウリのひとつですが、喫茶店のようにコーヒー一杯で長居するわけではないので、滞在時間が短いということも同時にわかりました。
3.立ち飲み屋経営のメリット
立ち飲み屋を経営する上でのメリットは多数ありますが、ここでは具体的にどんなことが挙げられるのか解説していきたいと思います。
3.1 初期費用を安く抑えられる
立ち飲み屋はカウンターのみで運営できるため小スペースでの開業が可能です。また、内装費用なども面積が小さい分抑えることができ、家賃も安く済みます。内装・インテリアをDIYで自分の思い描いている雰囲気を演出している経営者も少なくありません。
また、メニュー表は手作りで作成し、壁に張ったり壁掛けボードを活用したりしています。店舗側でお店作りをすることで内装や家具・備品、メニュー表などの費用を必要としないことがわかります。
自分の好きなように店舗を表現し、少額な資金で開業ができることが初心者にとって最大のメリットと言えるでしょう。
3.2 お客様との距離感
立ち飲み屋は店内を見渡せるほどの小スペースが多いため、お客様との距離が近いという特徴があります。距離が近いことで以下のメリットが挙げられます。
- お客様との会話が弾み、親しくなれるので常連客になりやすい
- 会話の中で、お客様の望む飲食スタイルなどが聞ける
- 距離が近いことでマニュアルにはない接客ができる
お客様との距離が近いということは、常連客となってくれる可能性が高くなります。
しかし、実はお客様との距離感とういうのは非常に難しいです。
会話を楽しみたいというお客様は多いのですが、ひとりで来店されているなかで会話を必要としない方もいらっしゃいます。必要以上にコミュニケーションをとることは控えるようにしましょう。程よい距離感を保つことも大切です。
3.3 泥酔するまで飲酒しない
座って飲食する居酒屋などで酔いつぶれているお客様をたまに見かけますが、立ち飲み屋で泥酔するまで飲酒している人はほとんどいません。
立ち飲み屋の滞在時間は1~2時間未満が多いです。なかには仕事帰りに一杯だけ飲みに30分ぐらい滞在するというサラリーマンもいらっしゃいます。職場からの帰宅途中に日中の気分転換で立ち飲み屋を利用していることが伺えます。滞在時間が短いと飲酒する量も少なくなり酔いつぶれるまで飲酒する人はいません。
泥酔するお客様の扱いで困っている飲食店経営者や従業員もいるなか、立ち飲み屋はそのような心配はほとんどないことがメリットでもあります。
3.4 回転率が見込める
飲食店の回転率は売上に影響します。先述したように気分転換のために立ち寄る人が多く、滞在時間が短いので回転率が高いことが特徴です。注文されたものは素早く提供し、飲食が済み空いたグラスやお皿は直ぐに片付け、その後はお客様側で注文するか否かは決めることです。座って飲酒するといったリラックスした状態ではなく、立ったままの飲食なので必然的に早めに切り上げて帰られることが多いです。
4.立ち飲み屋経営のデメリット
これまで立ち飲み屋を経営する上でのメリットを挙げましたが、実はデメリットも少なからず存在しています。
- 長時間立ち続けて飲酒しているので、予期せぬ事態が発生する:長時間立ったままで飲食をしていたため、貧血で倒れ込んでしまったというお客様もなかにはいらっしゃいます。その場合、座れば治ることが多いので簡易的な椅子を用意しておいたほうが良いでしょう。
- 客層が限定されやすい:立ち飲み屋は常連客が多く、新規では入りづらいと思っているお客様もいます。入店しやすい雰囲気などの工夫は必要です。
- お客様同士の距離が近い:小スペースだからこそお客様との距離が近いのでメリットがあるものの、実はデメリットも存在しています。立ち飲み屋を敬遠しているお客様は距離が近すぎて「香水などの臭い」「話し声が大きい」「会話が聞こえてしまう」と思わしくないと感じているようです。もともと立ち飲み屋は少人数の来店が多いです。たとえば団体で来店されたときには、お断りすることも必要です。最高3人までといった人数制限を設けるなどの工夫をすることが大切です。
5.進化を遂げる立ち飲み屋に期待
利用者の需要が高まり進化し続けるスタンディング形式の飲食店。開業資金や人件費などを抑えられるため、独立開業を考えている方には比較的参入しやすいです。ただし競合店が多いことも念頭に入れておきましょう。差別化を図ることができれば更に集客力が高くなります。これから独自で個性的な店舗を作り上げられる、進化を遂げた立ち飲み屋の経営が楽しくなりそうですね。
さいごに
いかがでしたか。安価で気軽に来店してもらえる立ち飲み屋。世代を超えた憩いの場として多くの店舗が賑わっています。人気の理由は値段に安さだけではないことがお分かりいただけたでしょうか。安い・うまいは立ち飲み屋にとって当たり前と言っても良いかもしれません。オリジナリティのある店舗作りが人気を集め、集客力を更に高めていくことになるでしょう。