近年、飲食店を一人で開業したいという方が多くいらっしゃいます。1人であれば小さな物件を借りて思い通りのお店に作れます。家賃など諸々経費が抑えられ、自由に営業ができるというのが魅力なのではないでしょうか。ただし、ひとりだからこそ厳しいことも存在しています。
今回はひとりで飲食店開業を目指している方に、メリット・デメリットから注意点などを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
1.飲食店のひとり経営とは
現在は飲食店で働いているが、将来は自分のお店を持ちたいと考えている人が多くいらっしゃいます。また、今は他業界で会社員をしているが、いつかは小さなお店を開業したいと考えている人も少なくありません。
料理や接客が好き、自分のアイデアを食で表現したいなど独立する目的はさまざまですが、
ひとり飲食店を経営するということはどういうことか理解しておくことが大切です。
そもそもひとりだけで飲食店を経営するとはどういうことなのか、考えていきたいと思います。お店の規模もある程度大きくして従業員を数人雇い、お店を任せて自分は経営に専念したい場合は法人設立を選ぶ方が多いです。しかし、自分ひとりだけで経営する場合、飲食店を開業するための資格や許可証さえあれば開業できますが、個人事業主という形で経営しているケースが多いです。
また、オーナー自らが料理から接客、清掃など全てひとりで切り盛りしている方もいらっしゃいます。これをワンオペレーションといって、かつては大手飲食チェーン店がアイドルタイムや早朝・深夜などに従業員一人を配置してお店を回している状態を言いました。
現在では、小規模飲食店でワンオペ営業の飲食店を開業したいという方増加傾向にあります。最初はひとりで全ての業務をこなしながら経営に携わるのが心配という方は、ワンオペ営業できる飲食店を選び、ひとりでどのくらい出来るか試してみてから開業を検討してみても良いかもしれません。
2.ひとり経営のメリット
★人件費がかからない
ひとりの飲食店経営は、人材募集にかかる費用はかからないので給与などの支払いも発生しません。ただし、ひとりで営業しているため小規模のお店は客単価が安く、座席数も少ない分利益が出にくいのも事実です。
忙しい日に家族や友人などにヘルプしてもらうなど、必要になったときの人材は十分にコントロールできるのでひとり経営の人件費が抑えられるのはメリットになります。
★自由度が高い
飲食店を開業する場合、立地や店舗デザイン、食器、メニューなど全てにおいて自分の好きなようにお店づくりができるので非常にポイント高いです。
自由度の高いひとり経営は、全て自分に責任が降りかかるかもしれませんが、良いアイデアが生まれることが多く、店舗に反映ができるので経営に良い効果を与えます。
★小規模のお店で営業可能
ひとりだけの営業は動けるスペースが限られているため、目の届く範囲の小規模のお店になります。そのため小さな物件になるので開業のための初期費用の負担が少なく、家賃や水道光熱費も安く抑えられます。また、お客様との距離が近くなるので常連さんとなってくれる可能性が高くなります。
3.ひとり飲食店営業のデメリット
▼提供時間の限界
ひとり営業は、洗い物からオーダー、調理、会計、サービスなど全てをこなさなければなりません。お客様は料理の提供時間にシビアです。店内を忙しく動き回っている店主を大目にみても待ち時間が長すぎると、オペレーションが悪いのかもしれないと思われてしまう恐れがあります。長時間待たせてしまうことはデメリットに繋がります。
▼自分の代わりはない
体調不良でお店を休業してしまったら、当然その日の売上はありません。ひとり営業の自由さが快適である一方、休めないというプレッシャーもあります。休業すると食材の廃棄や売上などに響きます。
▼売上の限界
ひとり営業は対応できる客数が限られているため、急に売上を伸ばすことは難しいです。
例えば、顧客満足度に直結するサービス向上を目指して売り上げに繋げるためには人材を増やしますが、ひとり営業の場合はそのような施策はできません。
客単価を上げるなどすれば売上向上に繋がりますが、客足が遠のいてしまうことも考えられます。ひとり営業は売上に限界があることがデメリットといえるでしょう。
4.向いている・向いていない人を比較
どんな業界でもひとり経営は、向き不向きがあります。
ここでは、飲食店経営が向いている人・向いていない人の特徴を解説します。組織にいた人、または初めてひとりで飲食店を開業したいという人もいらっしゃるかと思います。まずは、ひとり経営が向いている人・向いていない人の特徴をみてみましょう。
〈向いている人の特徴〉
- 挑戦意識の高い人
- 臨機応援に対応が可能である
- 数字に強く計画性がある
- サービス精神が強い
飲食店で働く人にとって基本的な項目ですが、ひとりで経営する際はどれか一つでも欠けてしまうとバランスが崩れてしまう可能性があります。
今、開業前に自分で難しいと思われている方も「ひとりで全てやる」といった意識を持っていれば「向いている人=できる人」となっていくことでしょう。
〈向いていない人〉
- 新しいことが苦手、向上心が無い人
- 孤独との闘いに耐えられない
- 組織で働きたい、人との関わりが苦手
- やるべき事の線引きをする
ひとりで飲食店開業を目指している人は、上記事項に当てはまることはあまり見られません。しかし、向き不向きに関係なく独立したいという方もゼロではありません。自分には向いていないと思っていても、いざ開業してみたら成功したという飲食店もあります。その場合は、自分で不向きな部分を努力して克服したことだと思います。
向き不向きはとても大切ですが、上記のタイプを把握していることで、自分が変われる可能性があります。絶対このタイプはできないと決めつけるより、つくりあげたお店がお客様にどれだけ育ててもらえるかが重要となってくることでしょう。
5.ひとり飲食店の注意点
ひとりで飲食店を開業するには、仕込みから調理、接客・提供、会計、清掃など全てをこなさなければならないことを解説しました。これらを大変だけど楽しそうと思える人は、成功へと近づけます。成功するためにはひとり営業の注意点も把握しておかなければなりません。
《メニューはシンプルに》
来店された全てのお客様は、当然ながら同じメニューを注文するわけではありません。
たとえば、10人のお客様が来店した場合、それぞれ違うメニューを注文することもあります。満席になると、一つひとつ調理するのは時間がかかり長時間お客様を待たせてしまいます。
メニューはあくまでもシンプルに、同じ食材を使った調理法で工夫するなどしてみましょう。
《忙しい時こそ工夫を》
ひとり営業はやるべきことが多いです。混雑している店内は手が回らなくなることが多々あり、「サービスが低下する」「ミスが目立ち始める」などによりお客様の不満が溜まってしまいます。先述しましたが、ひとりで経営している小さなお店は、常連さんが多いので大目に見てもらえることがありますが、度重なると離れてしまう可能性もあるので注意しましょう。予約で満席になるときは、友人や家族などに前以てお手伝いを依頼するなど対策をとるようにしましょう。
《仕入の割高》
ひとり飲食店は経費が抑えられる反面、食材等を仕入れる量が大規模飲食店のような大量仕入れとはなりません。少量の食材仕入れは割高になってしまう可能性があります。その場合は、ドリンクメニューの価格を少し高くする、日持ちする食材を取り入れるなど工夫するようにしましょう。
《体調管理は万全に》
ひとり経営は、体調が悪くなっても代わりはいないため臨時休業となるケースが多いです。無理をして営業してしまうと、さらに体調が悪化し数日間の休業になりかねません。
その際は無理をしない事、そして日頃から体調管理をしっかり行うことが大切です。
さいごに
いかがでしたか。ある意味、ひとりで飲食店の開業は将来の夢という方は多いのではないでしょうか。メリットは多々ありますが、デメリットにも目を向けてカバーできるように検討していくと良いです。自分なりの工夫を続けることで、楽しく面白い飲食店へとなっていくことでしょう。
飲食店経営で相談できる税理士が身近にいない場合、一度、BrancPort税理士法人にご相談ください。