飲食店は比較的参入しやすいビジネスと言われていますが、開業しても短期間で撤退してしまうことも少なくありません。継続していくのが難しいビジネスでもあります。
お店を継続させていくためにも出来る限り開業資金(費用)をあまりかけることなくオープンさせたいと思っている方が多いのではないでしょうか。そんな中、内装工事にかかる費用で大きく変わる物件「居抜き」と「スケルトン」どちらを選ぶかということも重要になってきます。
今回は「居抜き」と「スケルトン」について、費用比較やメリット・デメリットを解説していきたいと思います。ぜひ参考にしてみて下さい。
もくじ
1.居抜き物件とスケルトン物件の違い
飲食店の物件探しをする際、居抜きとスケルトンどちらにしようか迷われている方が多くいらっしゃいます。これらの物件は内装工事をどの程度行うかによって費用が異なります。
ここでは、居抜きとスケルトンの違いを解説していきます。
★居抜き物件
居抜き物件とは飲食店をはじめ、美容院やクリニック、エステサロン、学習塾などあらゆる店舗を閉店するときに、今までの営業していた状態をそのまま残して次に開店する人へバトンタッチするといった物件になります。前店舗の借主が設備機器などの備品等を全て残した状態で退去することが多いので、後継者はそのまま備品等を引き継いだまま営業が可能です。
飲食店では「厨房設備」、「壁や床」といった内装の一部だけを残している物件も居抜き物件と判断されます。ただし、一部だけ残している状態は「一部居抜き」と言われることもあります。
★スケルトン物件
スケルトン物件は建物の躯体だけの状態のことです。什器・機器はもちろん、床や壁、天井などが無くコンクリ-トがむき出しになっている物件を言いいいます。
居抜き物件とは真逆の物件と考えても良いでしょう。
2.居抜きとスケルトンの内装費用の比較
飲食店の開業資金は、目安として約1000万円が必要と言われています。
決して少ない金額ではないので、工事費用などはなるべく抑えたいという方が多くいるかと思います。
物件を借りるとき、通常はスケルトンより居抜きのほうが費用を抑えられると言われています。ここでは居抜きとスケルトンの費用比較をしますが、自分のお店を持つ上で何を一番重視していくかによって決め手が異なります。
★居抜き物件の内装費用
内装工事にかかる費用は1坪あたり10~30万円程度かかります。
相場として20~30坪で400~900万円程度ですが、既存設備や内装が自分の店舗運営にそぐわないなどの場合、大幅な内装工事となり費用がスケルトンより高くなることがあるので工事費がどれくらいかかるか計画をたててから実行しましょう。
★スケルトン物件の内装費用
スケルトンの内装工事費用は1坪あたり30~50万円程度で、30坪で900~1,500万円以上が相場となります。枠組だけの建物なので自分の思い通りの店舗作りが可能です。
イメージに工事依頼ができますが、費用をかけ過ぎたというケースも少なくもありません。
3.原状回復はどうする?
原状回復とは、退去時に入居した時と同じ状態に戻すことをいいます。居抜きまたはスケルトンのどちらかの物件と契約を結ぶ時、併せて把握しておきたいのが退去時の原状回復工事の要否です。また、入居するときは契約書の原状回復義務に関する条項を把握しておく必要があります。
居抜き物件とは退去する時に設備や内装を残したまま次の借主に引き継ぐので原状回復は不要です。テナントの退去時、つまり次の入居者が退去する場合は、原則として原状回復が必要となります。原状回復は退去日までに工事を完了しなければなりません。
また、契約書にスケルトン状態に戻すことが求められる場合は、スケルトン工事が必須になります。賃借人の間で、スケルトン状態までの原状回復を望む旨を記入した契約の場合にはスケルトン工事(原状回復)を行う必要があります。
4.居抜き物件のメリット・デメリット
ここでは先ず居抜き物件のメリット・デメリットをみてみましょう。
居抜きまたはスケルトンどちらを選ぶべきか迷われている方はメリット・デメリットを参考にしてみると良いでしょう。
《メリット》
- 内装工事の費用が抑えられる
- 設備機器、備品(テーブルや椅子など)をそのまま引き継げいで営業ができる
- 店舗開業が比較的早い
- 居抜きの物件数は多い
《デメリット》
- 内装が自分のイメージにそぐわない場合には工事費用が高くなってしまうことがある
- 前のテナント店舗の運営者の個性(イメージ)が残ってしまう
- 必要以上に設備などが残っている場合は後始末をしなければならない
居抜き物件は最初から設備機器・備品などを揃える必要ないことが多いので費用を抑えられるというメリットがあります。ただし、自分の個性を活かした店舗イメージに作り上げる場合は、大幅に工事費が高くなってしまうというデメリットもあります。どちらを重点に置くべきか検討しておきましょう。
5.スケルトン物件のメリット・デメリット
スケルトンのメリット・デメリットは以下の通りです。
《メリット》
- 店舗内装を自由な発想で作れる
- 備品や設備機器がないので思い通りのレイアウトが可能
- 前の店舗イメージが残らない
《デメリット》
- 工事期間が長くなることが多い
- 入退去時の工事費用がかかる
- 内装(床や壁等)や設備機器などを揃えるため費用が必要
スケルトン物件で入居する場合は、自分の理想の店舗に作り上げることが大きなメリットです。その一方で、入退去時の工事や必要な設備機器などの費用がかかってしまうのがデメリットでもあります。
6.契約時に注意すべきこと
飲食店を開業するにあたって物件の契約を交わしますが、ここでは借りる時の注意点を解説します。
居抜き物件の場合、テナントの引き渡しについて賃貸条件の内容を必ず確認しましょう。
原状回復はほとんど不要と前項で述べましたが、後継者が退去する際には工事が必要となります。
また、賃貸契約成立した後の厨房機器が直ぐに壊れた、あるいは前店舗の経営者設備機器などをリース契約してそのまま解約せず退去したなどのケースも稀にあります。契約時には必ず確認が必要です。
スケルトン物件は退去時に原状回復が必要ですが、契約書に責任範囲が記載されていることもあるので、必ず内容確認をしましょう。また、退去に内装工事(解体)を始める際にはテナントビルオーナーに伝えなければなりません。勝手に工事を始めてトラブルになったというケースもあります。工事中は騒音・振動などで近隣に迷惑をかけてしまうことがみられるので、挨拶はしておきましょう。
さいごに
いかがでしたか。物件費用について抑えられるのは居抜き物件のほうが向いています。
自由に理想の形にしたいのであればスケルトンのほうが現実的かもしれません。
ただ注意しておきたいのが全てのケースがそれぞれの物件に当てはまるわけではありません。どの部分に費用をかけ、あるいは自分のお店をどう表現していきたいのか、総合的に検討した上で選択すると「こっちの物件を選んでよかった」と思えることになるでしょう。
飲食店経営で相談できる税理士が身近にいない場合、一度、BrancPort税理士法人にご相談ください。