中小企業・小規模事業者を支援するIT導入補助金~活用事例から申請の流れまで~

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けてバックオフィスでの業務プロセスの効率化・改善を図るためにITツールの導入支援を行っています。いわば、ITツールを活用するにあたり補助金を設けた制度になります。

今回は、IT導入補助金について解説をしていきます。ぜひ参考にしてください。

1.IT導入補助金の目的と活用事例

IT導入補助金は2017年から始動していますが、非常に認知度が高く補助金の中でも予算規模が大きく取り組まれています。国の政策目的が明確であり、中小企業・小規模事業者、個人事業者による自社課題のニーズにあったITツールを導入する経費の一部を補助し、売上アップや業務効率化のサポートを目的としています。
ITツール機能の補助金の対象事業者は多数ありますが、ここでは飲食店の活用事例とその効果を紹介したいと思います。


①セルフオーダーシステム
機能⇒テーブルに注文用のダブレット端末を設置するため、お客様が料理の注文ができる。
導入効果⇒ホールの人員削減になり、スタッフの負担も軽減できる。
その他、注文の傾向などの分析ができるためマーケティングに活用できる。


②在庫管理・会計管理システム
機能⇒仕入原価が商品の価格に適しているか数字の管理ができる
導入効果⇒食材の廃棄ロスを減らすことができる。また、無駄な仕入れを防げるので利益を生み出せる。


③給与・勤怠管理システム
機能⇒クラウド上で給与明細・勤怠管理の確認ができるので、事務の作業時間が短縮できる
導入効果⇒給与明細をデジタル化することでペーパーレスに繋がる。IDとパスワードをスタッフに伝えることでいつでも確認可能。


④POSレジ会計システム
機能⇒POSレジと会計システムのデータの連携を図る
導入効果⇒仕訳の入力を自動化することで時間短縮になる。レジ締め作業ミスが減少する。


ITツールを導入することで、業務の効率化や利益向上といった成果が表れている事業者が多く存在しています。ぜひ自社に合ったITツールを探してみてはいかがでしょうか。

2.ITツールの対象・補助額・補助率

IT導入補助金制度を始動してからも、インボイス制度や働き方改革など制度の見直しをされていますが、その一環として申請枠も若干変更されています。また、それらに対応するため見据えた補助額の変更もされています。

(引用:中小企業庁公式ホームページ 令和4年度第2次補正予算より)

〈通常枠〉
通常枠はA類型とB類型があり、生産性向上・業務効率化を図るためにITツールの導入費用を支援しています。

  • A類型・・・補助額5万円~150万円未満(令和4年度第2次補正予算で下限を引下げ)
  • B類型・・・補助額150万円~450万円以下 
  • 補助率⇒A類型とB類型ともに1/2以内
  • 導入関連費⇒ソフトウェア購入費(最大2年分)、クラウド利用料、導入関連費
  • ITツール要件⇒労働生産性向上を目的としたITツール
  • プロセス数⇒A類型1以上、B類型4以上(プロセス数とはITツールの導入によって生産性が向上する業務工程数のこと)

〈デジタル化基盤導入枠〉
インボイス制度対応を見据えた企業間の取引に必要なITツール(デジタル化)を支援します。手間のかかる現金管理など「会計ツール」を導入することでバックオフィスの効率化を図ります。

●デジタル化基盤導入類型
▼会計、受発注、決済、ECソフト・・・補助額50万円以下(令和4年度第2次補正予算で下限を撤廃)/ 50万円超~350万円

  • 補助率⇒50万円以下は3/4以内 / 50万円超~350万円は2/3以内
  • 導入関連費⇒ソフトウェア購入費(最大2年分)、クラウド利用費、導入関連費、ハードウェア購入費

▼PCタブレット等⇒~10万円 / レジ・券売機等⇒~20万円

  • 補助率⇒PCタブレット等とレジ・券売機等は1/2以内
  • 導入関連費⇒ソフトウェア購入費(最大2年分)、クラウド利用費、導入関連費、ハードウェア購入費

●複数社連携IT導入類型
複数の中小企業や小規模事業者が連携してITツールを導入する際に支援します。
補助額は以下3通りとなっています。

  • 会計、受発注、決済、ECソフト等を導入する場合の補助額はデジタル化基盤導入類型と同様。
  • 消費動向等分析の経費は50万円×参画事業者数 
  • 外部専門家謝金や旅費などの補助額の上限は200万円。

補助率は2/3以内(但し、デジタル化基盤導入類型の対象経費の場合はデジタル化基盤導入類型と同様)

〈セキュリティ対策推進枠〉
セキュリティサービスによるITツール導入の支援を行います。

  • 補助額⇒5万円~100万円
  • 補助率1/2以内
  • 導入関連費⇒サイバーセキュリティサービス利用料(最大2年分)

3.交付申請のスケジュール

ここでは2022年度と2023年度の交付申請スケジュールを解説します。
2022年度は以下の通り、公募締切日が迫っているので注意しましょう。


〈公募最終締切日〉

  • 通常枠・・・令和4年12月22日(木)予定
  • デジタル化基盤導入類型・・・令和5年1月19日(木)予定
  • セキュリティ対策推進枠・・・令和5年2月16日(木)予定

※複数社連携IT導入類型の最終締切日は終了

2023年度のスケジュールは2022年度第2次補正予算の調整中ですが、過去の申請日決定から想定すると補正予算成立から2~3か月後に開始すると思われます。早ければ2023年3月ごろに公開されると予想されます。
定期的にIT導入補助金スケジュール「サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金」で確認してみましょう

4.IT導入補助金の申請入フロー

IT導入補助金の申請の流れはおおまかに8つのステップがあります。

(引用:IT導入補助金2022)
  • 「IT導入支援事業者・ITツール検索」でIT支援事業者を選定※IT導入支援事業者とは申請者の各種手続き等のサポートをしています。「宿泊業向け」「飲食店向け」といった業種や「顧客対応・販売支援」「在庫・調達」などの業務フロー別になっているので確認をします。なお、IT導入支援事業者が事務局に登録して、認定を受けたITツールだけが補助対象となります 
  • 「GビズIDプライム」でIDを取得(取得まで2週間程度かかる)
  • 交付申請のため、IT導入支援事業者と打ち合わせをして事業計画を策定
  • 中小企業・小規模事業者等はIT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、交付申請に必要となる基本情報の入力や書類の添付を行う
  • IT導入支援事業者にて事業計画書を入力し、「申請マイページ」上で最終確認後に事務局へ提出
  • 交付申請を完了し事務局から交付決定を受けた後に中小企業・小規模事業者はITツールの発注・契約・支払い等を行う
  • ITツールの発注・契約・支払い等を行ったエビデンスを提出。「申請マイページ」にて事業実績報告書を提出するために必要な情報・エビデンスなどを添付し事業報告書を作成する。
  • 事業実績報告が完了すると「申請マイページ」で補助金の確認ができる。補助金の交付決定日から約半年以内にITツールを導入すると良いでしょう。

ITツールの導入は交付決定の連絡がこないうちに発注・契約・支払い等を行ってしまうと補助金を受けることはできません。申請フローをよく確認してから実行しましょう。

さいごに

中小企業・小規模事業者で業務効率化、生産向上を図りたいが、ITツール導入に費用をかけたくないと思われている経営者もいます。しかし、ITツールを導入することで事業者の環境を最適化にすることができます。ぜひ補助金支援制度を活用し、業務改善およびコスト削減のためにもITツールの導入を検討してみては如何でしょうか。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人