訪問歯科の始め方~必要な準備と気を付けるべきポイントを解説~

先進国ながら日本の高齢化が進む昨今、独力での通院が困難な状況にある方が増えてきています。今後さらに、介助や付き添いが必要とされる高齢者が増加傾向にあると想定されます。そんな中、介護現場の一助となり注目されているのが医療を必要とされている方のご自宅や施設に訪問して診療するシステムです。特に歯科は、簡単な口腔ケアの方法を教えることを中心とした診療の観も可能なので需要は増加しています。

今回は、訪問歯科の実施を検討されている方に、どのように準備すればいいのか、そして気を付けるべきポイントを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

1.訪問歯科の現状

少子高齢化の問題を抱えているなか、歯科医院は患者さんに対してどのような診療体制を構築していけばいいのか検討されている経営者も少なくありません。

そんな中、在宅および施設等で安心な歯科診療を求められている方への支えとなる訪問歯科を目指している方がいらっしゃいます。要介護高齢者にとって必要とされていることはもちろんですが、何らかの原因で身体的等によって通院が難しい状況にある方にもニーズがあります。

今後訪問歯科を始めるにあたって、現状を把握しておくことが大切です。
下記は訪問歯科診療の現状と、訪問歯科のきっかけに繋がる取り組み状況です。

上記の調べを見てみると、在宅歯科診療を実施している歯科医は30.6%という数字になっています。ニーズはあるものの、なかなか訪問するまでの取り組みが追いついていない状況であることが伺えます。
実は、高齢社会であっても外来での診療が中心的に行われているのが現状です。
ただし、施設での訪問歯科診療は緩やかですが、増加しています。その一方で、ご自宅での訪問歯科診療は減少傾向にあるようです。ニーズはあって、これらが訪問歯科の実施数が伸びない要因であるといえます。

2.訪問歯科診療の始め方(手順)

ここでは、訪問歯科を始めるにあたり、どのように準備をしていけばいいのか解説していきます。ポイントを押さえた手順をインプットすることで、スムーズに開始されます。

2.1 訪問先の情報収集

歯科医の訪問歯科診療が可能な施設および自宅、そして訪問が認められていない施設があります。


<訪問が認められている福祉施設>

  • 介護老人福祉施設や介護老人保健施設(特別養護老人ホーム含む)
  • 病院や診療所(歯科・口腔外科がない医療機関)
  • 障害者入所施設
  • ショートステイや介護医院など

<自宅および居宅>

  • 訪問を必要とする患者さんのご自宅(集合住宅・一戸建住宅など)
  • 有料老人ホーム、養護老人ホームなど

<訪問が認められていない福祉施設>

  • デイサービス(通所介護)
  • 障害者通所施設
  • 通所リハビリステーション
  • 歯科のある病院

訪問が認められている施設などで実施する場合は、専門職員との連携をとることが非常に重要です。また、入居者の多くの個人情報を触れない程度に情報を得ることも大切です。
※訪問歯科を利用できない方は他の医療機関に通院している方。

2.2 訪問先には距離制限がある

訪問歯科を実施するにあたって、診療を行える距離は決まっています。
歯科医院から診療所(自宅や施設等)までの距離が16Km以内であることが、国で定められている保険適用範囲内です。
ただし、患者さんの要望により、16㎞を超えた場合は自費診療となります。
もし、近隣に歯科医院がない、または離島などで海路を渡っての診療の場合は例外として認められて保険診療となることがあります。

なお、訪問歯科は、診療移動に必要な交通費は実費請求が可能ですが、前以て確認しておく必要があります。ただし、歯科医によっては不要という場合もあります。

2.3 訪問先に持参すものを確認

訪問歯科は一般的な歯科医院と同じ診療になりますが、必要な書類や診察用の器材がないため持ち物を必ずチェックしておきましょう。(以下参照)


●必要な書類等

  • 診療申込書兼同意書 診察をする際に患者さんの生年月日、住所、通っている病院の有無、訪問可能日など情報を記載してもらう申込書です。※患者さんのご家族の同意などを確認するためこれらを記入し、申し込みするという書類です。
  • 問診票(患者さんの状況確認のため)
  • 治療内容報告書(診療後の報告としてご家族や施設職員に状況説明・報告する)
  • 居宅療養管理指導契約書および居宅療養管理指導用事項説明書
  • その他必要に応じて準備しなければならない書類があるので確認しましょう。

●診察に必要な持ち物

  • ライト(照明)を用いての診察は必須のため、歯科用ルーペなど
  • 検診などに必要な道具。歯科検診の基本セットなどもあるので用意しておくと便利(ミラーや探針、充電器、ピンセット、バキュームなどのセット)
  • 手袋や洗口液、紙コップ、ゴミ袋、エプロンなどの消耗品
  • 虫歯治療のためのCRセット
  • 抜歯のための麻酔など

診察するにあたっての持ち物は多々あります。事前に患者さんの状態をヒアリングしておくことで、必須持ち物を把握できます。施設やご自宅にいる患者さんの周り方に状況を聴いてみるのもよいでしょう。

3.訪問歯科で気を付けること

訪問歯科を始めるにあたって、安全で安心な診療を提供しなければなりません。
以下のような事柄に気を付けることで信頼関係の構築ができます。

  • 訪問先を決めるときには、どの地域の施設や自宅、そして患者さんの種類を明確にしておきましょう。
  • 患者さんの個人情報漏洩のないように安全とプライバシーの保護が必要になります。
  • 数回にわたっての診療の場合には、次回の訪問日時を決めなければなりません。歯科医と患者さんのスケジュール表を作成しておくと良いでしょう。
  • 信頼関係を築くために十分なコミュニケーションが必要です。

さいごに

いかがでしたか。今回は、訪問歯科の始め方を解説しました。
SNSなどで訪問歯科の実施配信を始め、関連施設のケアマネージャーや自身の医院に通院されているご家族の方の情報(通院できなくなった等)などを得ることで、訪問診療の実施が可能になります。
まずは訪問歯科(診療)の基盤作りを行い、信頼関係を築くことから始めてみては如何でしょうか。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人