現在、日本国内では、深刻な人手不足が続く中、外国人労働者の雇用が注目されています。コンビニや飲食店などで、外国人が働いているのををよく見かける機会も増えました。
この記事では、言葉も、育ってきた環境や文化も違う外国人労働者を雇用するにあたり、どのようなポイントに注意すべきかしっかり確認していきます。ご参考にしてください。
もくじ
1.今、外国人を雇う飲食店が急増している!
今、日本にはどのくらいの外国人が在留しているかご存知でしょうか。
法務省の統計(2020年6月末)によると、在留外国人は約288万人で日本の総人口の約2%を占めています。日本には様々な国籍の外国人が在留しており、その国数は過去最高を記録しています。アジア圏の出身者が全体の約80%、南米で約10%、ヨーロッパ約3%、北米約3%、オセアニア、アフリカの順となります。国籍別では、第1位が中国本土、第2位が韓国、第3位がベトナムとなります。近年、ベトナムの留学生が急増している影響で、2017年に初、ベトナムがフィリピンを抜いて第3位に躍り出ました。日本で就労する外国人は、厚生労働省の外国人雇用状況届出(2020年10月末現在)によると約172万人となり、留学生などのアルバイトを除くと約100万人の外国人が日本で働いている計算になります。近年、急増している外国人労働者を雇用する際のメリット/デメリットや採用時に注意すべきポイントを解説します。
2.外国人を採用するメリット
2.1 就労意識が高い人が多い
外国人労働者が日本人とは違う点は、就労意欲の高さでしょう。日本で働くために、就労ビザを取得して来ている人や、留学時にアルバイトとして働こうとする人などは、日本で賃金を稼ぐ目的の為に訪れているので、やる気がある人が多いです。やる気がある人は、仕事覚えも早く、その分スタッフとしてどんどん成長していきます。
2.2 海外から来日するお客様に対応できる
現在、日本文化へ注目が集まり、外国人の旅行客が増加していますが、日本の飲食店には世界共通語である英語が堪能なスタッフが少ないという問題があります。お客様としてお店に来店頂いても、言葉がなかなか通じずに、満足な接客ができないということもよく聞く話です。そんな時に、外国人労働者がいることで、外国人観光客とスムーズにコミュニケーションが図れ、満足のいくサービスを提供することができます。
2.3 異文化交流で職場を活性化できる
日本に住んでいると、他国の文化と交流する機会は少ないものです。外国人スタッフと一緒に働くことで、さまざまな文化や習慣に触れることができます。日本人スタッフにとって、良い刺激となるでしょう。外国人スタッフは、仕事熱心な人が多く、職場の活性化をさせてくれることも期待できます。
3.外国人を採用するデメリット
3.1 出身国と日本特有の文化の違いに対応できない
日本人と外国人では「お客様」に対する考え方が違う場合があります。文化の違いや言語のニュアンスの違いなどがうまく伝わらずに苦労するケースが多々あるようです。日本人にとって当たり前だと思う考え方も異なる価値観を持った外国人には理解できないことがあり、接客姿勢を細かく教えなければならないこともあります。雇用する側が配慮して十分なコミュニケーションを図れるように努めなければなりません。
3.2 外国人の雇用手続きがわからない
外国人労働者を採用したことがないお店は、採用にあたって手続きの方法がわからずに外国人雇用に踏み切れないというお店も多いようです。採用にあたっては、まず在留資格の確認が必要です。在留資格の種類によっては、労働時間や仕事内容が制限される場合もあります。
※ 後に述べる「4.外国人スタッフを採用する時に確認すべきこと」参照。
手続きを誤れば罪に科せられることもあるため、雇用に関する知識はしっかり確認する必要があります。
3.3 業務上、必要最低限の日本語を教えなければならない
外国人スタッフに働いてもらうには、業務上必要最低限の日本語を覚えてもらわなければなりません。仕事内容をスムーズに教えるために、日本語を分かりやすくしたマニュアルや、すべてローマ字のマニュアルを作るのもいいでしょう。
4.外国人スタッフを採用する時に確認すべきこと
4.1 在留資格の確認
外国人スタッフを雇用する際は、その方が日本で働くことができる在留資格があるかどうか、所持している在留カードで確認することが必要です。飲食店で外国人の採用を考えている方にとっては重要な分野ですので、しっかり確認していきましょう。
【飲食店で働くことのできる就労制限が「ない」在留資格】
- 定住者:法務大臣が特別な理由を考慮し、5年を超えない範囲で一定の在留期間を指定して居住を認める人(日系人など)
- 永住者:在留期間の制限なく永住できる人
- 日本人の配偶者等:日本人と結婚した人・子・特別養子
- 永住者の配偶者等:永住権をもった人の配偶者
【飲食店で働くことのできる就労制限が「ある」在留資格】
- 留学:留学の滞在資格を取得して在留している人
- 家族滞在:就労ビザを取得して日本で働いている人の配偶者・子
- 特定活動:他の在留資格に該当しない活動の受け皿として法務大臣が活動を指定する在留資格
- 技能:特殊な分野に属する熟練した技能に従事する活動(外国料理の調理師など)
- 特定技能:深刻な人手不足に対応するために2019年4月より新設の在留資格であり、飲食業、介護など14業種ある
飲食店で働くことのできる在留資格一覧で見ていきましょう。
在留資格 | 正社員 | アルバイト | 就労制限 |
定住者 | 〇 | 〇 | 無し |
永住者 | 〇 | 〇 | 無し |
日本人の配偶者等 | 〇 | 〇 | 無し |
永住者の配偶者等 | 〇 | 〇 | 無し |
留学 | × | △就労制限あり | 週28時間以内、夏休みなど長期休暇時は1日8時間以内 |
家族滞在 | × | △就労制限あり | 週28時間以内 |
特定活動 | △就労制限あり | △就労制限あり | 人により異なる、パスポートに添付の指定書内の活動内容詳細を確認 |
技能 | △ | × | 無し |
特定技能 | △ | × | 通算在留可能期間は5年以内 |
4.2 労働条件の確認
在留資格で就労可能であることを確認し、採用を決めたら、採用者に対して労働条件を確認する必要があります。事前に労働条件を記した書類を作成しておき、本人に目を通してもらい、不明点がないように丁寧に説明を行います。
労働条件として主に、次の点を記載します。
- 業務内容
- 労働契約の期間
- 始業時間や終業時間、休憩時間、休日
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 就業場所
- 時給
- 雇用保険の適用
- 労災保険の適用
- 社会保険/厚生年金保険の加入の有無
厚生労働省の「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を参考にすることで、記載漏れがなく作成することが可能です。雇用後に早期離職などトラブルを防ぐために、しっかりと確認しましょう。
4.3 雇用契約書の署名
労働条件について採用者の理解を得られたら、雇用契約書への署名にステップを進めます。労働条件を踏まえた労働契約書を作成しておきましょう。
※雇用契約書とは
雇用する側と労働者との間で交わす契約書を指します。記載内容は、労働条件通知書とほぼ同じで、雇用する側が労働者に対して、契約期間、就業場所・業務内容、労働時間、賃金などの労働条件を明示します。雇用契約書は2部ずつ作成し、両者の署名・押印をした上で、雇用する側と労働者がそれぞれ保管します。
5.外国人スタッフと働く 大事な気配りポイントは?
ポイント1:仕事の指示や考えはその都度明確に伝える
「明確にはっきり伝える」ことが大切です。自己主張をあまりしない日本人同士であれば、相手に空気をよんでもらうのは普通ですが、それが通用するのは日本人の間だけでしょう。世界基準は、「言わないと分かってもらえない」のです。コミュニケーションは、できるかぎり明確で具体的である必要があります。「あれ」とは何か、「よろしく」とは具体的にどうして欲しい事なのかを明確な言葉で相手にしっかり伝えましょう。
ポイント2:積極的にコミュニケーションをとる
言葉が通じないからといってコミュニケーションをとらずにいると、お互いのことを理解することができません。日本での生活に慣れていないスタッフの中には、自分から積極的にお客様や同僚に話しかけられない人もいるかもしれません。職場に馴染めず、疎外感を抱かないようにするためにも、最初は積極的に話しかけるようにしましょう。コミュニケーションをとることによって、信頼関係が構築されるだけでなく、スタッフの接客能力の向上にもつながります。
さいごに
いかがでしたか?今回は外国人スタッフを採用するときのメリットデメリットや、必ず確認しておきたい点、注意するべきポイントについてご紹介しました。外国人スタッフの採用は、雇用上のルールの違いをはじめ、日本人と全く同じ条件というわけにはません。
今後、飲食業界では外国人スタッフの雇用が増加すると考えられています。
外国人スタッフと働く際には、今回ご紹介したこの記事を参考にどのようなポイントに注意すべきかしっかりと確認しておきましょう。