美容師と理容師のダブルライセンスについて~メリットから重複開設の注意点まで~

将来の夢は美容師か理容師のどちらにしようか迷っている、または両方の資格取得を検討中という方がいらっしゃいます。この2つの仕事は美容業界という一括りのなかでは同じですが、業務内容が異なる部分があります。

今回は、迷われている方、あるいは両方の資格取得後者に関わるダブルライセンスについて解説していきたいと思います。美容師と理容師の違いやメリット・デメリット、そしてダブルライセンス取得後の重複開設の注意点なども解説します。
ぜひ参考にしてみてください。

1.美容師と理容師の違い

美容師と理容師は広義では美容業界ですが、仕事内容の趣旨を考えた時、美容師が「容姿をキレイにする」、理容師が「容姿を整える」となるので、業務が異なる部分があります。


《美容師としての業務》
来店されたお客様の「髪のカット、パーマ、カラーリング、髪結い、ヘアメイク・セット、着付け」など容姿を美しく仕上げる。
また、「まつ毛パーマ、エクステ」も美容師免許を取得していればサービスをしているトータルサロンもあります。
一方で、美容師が出来ない業務は剃刀を使用したシェーピングです。ただし、着物を着てメイクをするときに化粧のノリをよくするための産毛を剃るなどは可能です。


《理容師としての業務》
理容師は頭髪の刈込(カット)、シャンプー、コールドパーマネントウェーブ(主に男性向け)などですが、最近ではカラーリング、パーマなども行えるようになりました。
※平成27年に通常の女性向けパーマも行えるようになりました。
また、顔を整える顔そりや髭剃りなどは行える業務です。
理容師ができない業務はヘアセット・メイク、まつ毛のエクステなどです。

2.美容師と理容師のダブルライセンス取得方法

理容師と美容師、これら両方の資格取得によって仕事の幅が広がるダブルライセンス取得を目指す人が増えてきています。
ここでは、ダブルライセンス取得方法について紹介していきたいと思います。



★専門学校に通うまたは通信課程での資格取得方法
美容専門学校と理容専門学校には昼間・夜間・通信の3つの課程がありますので、自分のライフスタイルに合わせて選ぶと良いでしょう。ただし、昼間と夜間は2年で、通信は3年となります。

  • 美容師と理容師の仕事内容が異なる部分があるため、それぞれの専門学校に通います。(共に高校卒業または同等の学歴をもっていることが必要
  • 美容師または理容師の専門学校に通う順番を決めて、2つの学校で筆記試験と実技に合格すると免許が交付されます。

★美容師または理容師の免許取得者の場合
美容師または理容師の免許取得者が、もう一方の免許を取得する場合は通信課程を受講すれば1年6か月で受験資格を得ることができます。
最近では、既に美容師または理容師として働いている人が、もう一方の資格取得を目指していることが多くなり、ダブルライセンス取得のコースを設置している学校が増えてきています。


美容師・理容師になるための受験手続きなど細かく記載されている(公社)日本理容美容教育センターの一覧を参照してみてください。

3.ダブルライセンス取得のメリット・デメリット

美容師と理容師のダブルライセンスを取得すると仕事の選択肢が広がるなど、多くのメリットがあります。ただし、メリットばかりではなくデメリットも存在しています。
ここでは、ダブルライセンス取得に向けて準備を行う前にメリット・デメリットを紹介していきたいと思います。


《ダブルライセンス取得のメリット》
理美容師のダブルライセンスの取得後にはたくさんのメリットがあります。自分の目指すところと下記のメリットが一致しているかの照らし合わせをしておいても良いかもしれません。

▲幅広い技術の取得
理容師・美容師の両方の資格を持っていることで活躍の場が広がる

▲顧客層の拡大
男女問わず、さまざまなお客様へ技術の提供ができる

▲就職・転職に有利
理容師または美容師のどちらかの仕事に就いた後でも、もう一方の技術を活かす職場が見つかりやすい

▲フリーランスとして両方の技術を活かせる
ダブルライセンス習得後には、どちらか一方を副業またはフリーランスとして活躍できる。
例)理容師として業務委託などで働いきながら、休みの日はフリーランスとしてブライダルサロンなどでヘアセットや着付け、メイク前の顔そりの美容師としての仕事が可能


《ダブルライセンス取得のデメリット》
ダブルライセンスは数多くのメリットがありましたが、以下のようなデメリットも幾つか存在しています。

▼学費と時間の負担
ダブルライセンス取得には時間と費用がかかる。美容師または理容師のどちらか一方の資格取得の場合は2年で済むが、ダブルライセンス取得までには3年以上かかる

▼業務範囲が分散される
美容師と理容師の資格保持者として全てを活かせないことがある

▼同職場では免許取得が必要
理美容室の同施設で技術に従事するスタッフは、全員がダブルライセンスの保持者でなければならない。

4.ダブルライセンス取得後の重複開設

美容師と理容師の2つの免許を取得する人が増えていること、そして先述したように仕事内容で異なる部分があることがわかりました。その異なる部分を補いながら重複施設として提供できれば客層の拡大や売上向上に繋がります。ただし、この重複施設を検討している方もいらっしゃいますが、注意しなければならないこともあります。

ダブルライセンス取得後の重複開設とは、美容師と理容師が共に技術を活かしながら働ける店舗のことです。この店舗には利点があり、美容院に通う女性客と理容店に通う男性客(およそ40代以降)による顧客層の拡大です。また、美容院と理容店が重複していることでスペースの縮小、水道や電気も共用できるので費用の削減へと繋がります。

しかしながら、重複開設をする上で注意しなければならないことがあります。
先述でダブルライセンス取得のデメリットで紹介しましたが、「美容師と理容師が同一(重複施設)で作業する場合、技術に従事する全てのスタッフがダブルライセンス保持者であること」ということが義務づけられています。
詳しくはこちらを参照ください⇒東京都保健医療局「理容所と美容所の同一場所での開設(重複開設)」
また、顧客層の拡大は利点でもありますが、技術を活かしきれないことも少なくありません。
この場合、コンセプトやターゲット層を明確にすることで、ダブルライセンスが活躍できる場となります。

実は、重複開設をしている店舗は少なく、まだ発展途上の部分があります。
従来存在していなかった重複開設といったスタイルを、新しい市場へと広げようとしている段階です。今後、重複施設の事業展開を繰り広げための戦略に大いに期待します。

さいごに

いかがでしたか。近年、美容師と理容師のダブルライセンス取得を目指す人が増えてきています。
多くのメリットがある反面デメリットも存在しています。これらを把握した上でどのようにダブルライセンスを活かしていけるか、あるいは重複開設の注意点を踏まえた戦略実行をしていけるかビジネスとして楽しみの比重が大きいのは確かです。自身で決めたダブルライセンス取得に時間と労力を費やした分は、新しい結果が出ることに期待できるでしょう。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人