念願の美容サロンを開業したのに継続が難しくなり数年後には廃業してしまうケースが少なくありません。特に美容院は開業率と廃業率のどちらも高い業界です。お店をオープンすることはできても継続させることが難しい業界です。
この記事では、廃業率・生存率のデータを紹介しながら、失敗する人と成功する人の共通点などを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
1.美容サロンの廃業率と生存率
近年、美容業界である「美容院」「エステティックサロン」「ネイルサロン」などの廃業やチェーン店による店舗の縮小を余儀なくされています。美容業界のなかでも美容院の出店数が圧倒的に多いこともあり、廃業や閉店の確率が高くなっています。
1年以内に開業した美容院の廃業率は60%、3年以内で90%、10年以内には95%というデータがあります。そして、20年以上続いているサロンはわずか0.3%程度だと言われています。これらの数字により、生き残りが厳しい業界だということがわかります。現在、美容師が不足していると言われていますが、カラー専門店などの専門分野に特化した美容サロンの開業率は増加傾向にあります。しかし、美容師(スタッフ)不足が原因で廃業してしまうケースも少なくありません。独立して経営をする上で人材を確保する力はもちろん、経営力を身に付けることが大切です。
2.失敗する人と成功する人の共通点
特に美容院は競合店が多く、開業と廃業の繰り返しという厳しい世界であるのが現状です。ここでは、経営で失敗する人と成功する人の共通点はどこにあるのか、分岐点は何かなどに触れてみたいと思います。
2.1 経営力の有無と意識
美容サロンで働いていた美容師が独立して経営者になった時、陥りやすいのが経営力不足です。今までは技術力が備わり指名客がとれていれば仕事が成り立っていましたが、経営者になるとお金の管理や集客、従業員の教育・指導などあらゆることに意識を向けなければなりません。失敗と成功の分岐点で大切なのが経営力の有無と意識です。
〈失敗する人〉
- 経営の知識が備わっていない
- 数字で物事を捉えにくい
- プレイヤー意識が強いため経営者としての自覚が足りない
開業前に経営知識を身に付けていないとお店を継続していくことは容易ではありません。お店をオープンさせると人件費や水道光熱費、広告宣伝費、家賃など諸々の経費がかかります。それらを売上から差し引いた額がどのくらい手元に残り、利益率がどのくらいなのかなどの数字を見る力は経営者にとって必要です。美容院に就職して最終的に独立を考えるのであれば、経営に関する知識を蓄えておいたほうが良いでしょう。失敗した人のなかで「知識を学ぶのは経営者となってからでは遅かった」という人が少なくありません。
〈成功する人〉
- 事前に経営を学んでいる
- 設備費用や運転資金などの必要な費用を把握(数字に強い)
- 継続する力が備わっている
先述したように経営を学ぶタイミングが早い人は成功する確率が高いです。経営知識を身に付けていることで、数字の動きを理解することができるからです。「継続は力なり」ということわざをよく耳にしますが、「何事も継続すればいずれ成功する」という意味ですね。成功者はこの意味をよく語り実践しています。継続することで小さな可能性を大きくできる人が成功する人で、失敗と成功の差はそこにあると考えてもいいでしょう。
2.2 指名客(固定客)の有無
独立開業する前に自分に指名客がどれぐらいついていたか確認します。指名客の有無は開業後の重要ポイントとなるでしょう。
〈失敗する人〉
- 自分には指名客がいない
- カウセリングによる失敗で固定客がつかない
- 集客の宣伝をしないため新規顧客に繋がらない
独立開業したお店には、今まで自分についてくれていた指名客が来店してくれる可能性があります。ただし、指名客が通える範囲の場所で出店することが前提です。つまり、新しく出店してから新規顧客が固定客になるまで、今までの指名客(固定客)が売上を作ってくれるということです。失敗する人は指名客がついていないまま開業してしまうパターンがよくみられます。なぜ指名客がついていなかったのか原因を追究する必要もあります。新しくお店をオープンする前に問題解決しないと失敗の繰り返しになってしまいます。
〈成功する人〉
- 自分の指名客が複数いる
- 顧客カルテをしっかり管理して把握している
- 集客による宣伝の費用対効果を視野に入れて検討できる
指名客が多くついている人は、カウセリングの内容を顧客カルテにしっかり記入してお客様の悩みや希望など全て把握しています。お客様との信頼関係を築き上げることで、新しいお店に足を運んでくれる可能性が高くなります。成功者はやるべきことは全て実行する意識が高いということでしょう。
また、集客による広告費用に対してどれだけの売上が得られるかきちんと費用対効果を検証しています。むやみに広告宣伝を展開することなく、その都度広告効果を検証することを心掛けています。
2.3 人間力の有無
人間力とはビジネスにおいては「社会で生きていける力」と言われています。では経営者として人間力による失敗と成功の違いはどこにあるのでしょうか。
〈失敗する人〉
- 労働環境の改善ができない
- 言い訳・悪口が多い、自虐的思考の人
- 成長力が足りない
失敗する経営者は従業員の労働環境の改善意識がありません。美容師は労働時間が長い職業だと言われていますが、経営者は「労働環境の整備」をする必要があり、従業員の長時間労働の抑制、職場環境の見直し・改善をしなければなりません。
また、経営を失敗する人の特徴として言い訳や人の悪口、または自虐的思考になりがちな人です。たとえばお客様からクレームがあった際に自店舗や自分を正当化するような言い訳をして相手が悪いといった責任転換をしてしまうことです。自虐的思考で自分を過小評価し過ぎる人も注意です。
〈成功する人〉
- 孤独を乗り越えられる、逆境に強く冷静な判断ができる
- 何事にも肯定的、ポジティブ
- 成長していこうとする能力が備わっている
経営者は孤独だとよく言われますが、孤独が人を強くすることもあります。逆境に立ったとき、冷静な判断で解決できる力を持っている人は成功者の特徴と言えるでしょう。
また、現役で働いている限り技術的な成長を止めることはありません。成功者の多くがスキルや感性を磨くことへの挑戦、すなわち自らが成長の機会を作り成長していこうとする力が備わっています。
3.経営者の心得
美容サロンの経営者になるには、あらゆることに対して責任を持って仕事をするという心構えをしなくてはなりません。責任を持つ仕事とは具体的に「売上アップのための経営戦略」「お店・従業員の環境の整備」「経費の支出バランス」などです。経営者になれば美容サロンで勤めていた時代とはまったく違う大変さがありますが、経営がうまくいっているときの充実感は数倍感じられます。
特に美容師は流行に敏感な職業です。時代の流れに乗ってお店の変化にも対応・進化させていかなければなりません。経営者は時代の変化をいち早く把握し、お客様がサロンに求めるサービス(ネット予約のIT導入等)などを取り入れ提供しなくてはなりません。
ただし、今までの在り方を続け通すことも大切です。経営者に求められることは変化の重要性と変わらぬ価値との見極める力です。最適な決断ができるようなスキルを磨くように心がけましょう。
さいごに
いかかでしたか。今回は美容サロンの開業で失敗する人と成功する人の違い・共通点などを解説しました。経営に成功した人も失敗を重ねて最終的に大成功したというケースもあります。その一方で、数十年続いた美容サロンが余儀なく廃業されという、失敗とは少し異なったケースもあります。失敗と成功というのは、実はその時代に取り巻く環境や諸事情により閉店など自分で決めている部分もあるのかもしれません。
経営者として歩み出そうとしている方が、この記事を少しでも参考にしていただけたらと思っています。