近年、日本の人口が減少傾向にあり、重要な課題として問題視されています。それに伴い、歯科医院の患者数も減ってきており、2045年には約10%減少する見通しだと言われています。今回は歯科医院の現状と患者数を増やすための対策を解説していきたいと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
1.歯科医院の現状
人口の減少化が進む中で、歯科業界にも大きな影響がみられています。
厚生労働省の調査データによると、歯科医院の施設数は令和4年度で 67,755施設で、前年度より144施設減少しています。(厚生省:2022年医療施設(動態)調査「施設の種別別にみた施設数」)とはいっても、実はコンビニの55,641店舗数(2024年5月度)より1.2倍も歯科医院のほうが多いのです。
1960年から1970年にかけて日本人(特に子供)は虫歯になる人が最も多かったため、歯医者に治療を求め通院していました。しかしながら、近年ではフッ素入り歯磨き粉などにより、若年層の虫歯の保有率が低くなってきています。そのため歯医者への通院数も減ってきているのは止むを得ないというのは事実でしょう。
近年では、口腔環境を整えたいといった意識の変化がみられるようになり、歯医者の多様性が求められているのは確かです。
- 予防歯科
- 審美歯科(ホワイトニングなど)
- マウスピース矯正
- 訪問歯科(高齢者歯科)
上記の専門分野に特化した歯科治療のニーズが高まっていいます。歯・口元の美を求めて各種専門医を頼りに、自由診療を選択する患者さんが多くいらっしゃいます。それにより歯医者へ通院することが減ってきているのも事実です。
2.患者数の減少理由
一般的な歯科疾患の治療をする患者数が減ってきているということは、売上にも大きな打撃を与えてしまいます。
ここで、なぜ患者数が減ってきているのか今一度みてみましょう。
1)ニーズの多様性
近年では、虫歯の保有者が減ってきていると前述しましが、歯医者へ通院する必要性がなくってきていることは事実です。
また、若年層の間で歯(口元)に対する美を追及するといった意識の変化、そして審美歯科やホワイトニングなどのSNSによる広告戦略で集客を促していることも要因だと考えられます。
2)新患者の減少
古くからの患者は通院しているが、新患者が増えないといった歯科医院も多々あります。この場合、患者数が横ばい状態、あるいは下降気味といった状態になっています。
全体的に患者数が減少しているなか、自院で新患者を増やすための対策を取る必要があります。
3)少子高齢化
少子高齢化の問題はさまざまな業界に課題を与えています。子供の歯の健康は良好である一方で、高齢患者は増加傾向にあります。しかしながら、高齢者のなかで通院することが難しいという方も多く、これからも増えていくと考えられます。
それに伴い、例えば訪問歯科といったことも取り入れるなどして、今後どのような対策をとっていくか検討する必要があります。
3.来院患者を伸ばすためにできること
時代の変化によって歯科医院の患者数が減少傾向にある昨今、それでも生き残るためには患者さんを増やすための対策を考えなければなりません。
ここでは、患者数を伸ばすためにできることを紹介します。
3.1 新患者を増やすためのアピール
患者数を増やすためには、来院するきっかけをつくらなければなりません。
先ずは、以下のようなSNS(情報源)に強みなどをアピールしましょう。
- 歯医者のポータルサイト➡EPARK歯科、医科歯科.com、審美歯科ネット など。特定の情報が得られるため、歯科医を求めているユーザーのアクセス数が高い
- ホームページ➡幅広い年代に歯医者全体の情報発信が可能
- Instagram➡10代~30代の若年層に拡散される
- LINE➡登録者数が多いのでダイレクトに歯医者の告知などのメッセージが送れる
- Facebook➡仕事や子育てなどで一番忙しい世代である30代~40代の利用率が多いため、自分の歯の治療・検診は後回しにしまいがちだが、より情報が詳しく伝えられるのが利点
SNSで情報を発信することで効果は十分得られます。ただし、新患者の目に留まるような情報(告知)を配信するように適切な運用をすることです。
また、SNSの口コミは非常に重要で、新患者は評価の高い歯医者を選びます。
もうひとつ、人から人への口コミの信頼度は高く、一番の広告塔だと言われています。日頃から高度な技術・サービスを提供することで、新患者へ伝わっていきます。
3.2 旧患者へのリコール
以前、歯科医院に通医院していたが、治療の途中で来なくなった、あるいは治療後に来院しなくなったという患者さんは少なくありません。来院されなくなった理由はさまざまで、歯科医師との相性が良くない、家庭の事情(引っ越し等)などあります。
先ずはリコール率を向上させるためにできることを検討してみましょう。
★通院終了後に3~6か月ごとに、歯のメンテナンスとしてハガキを送る
内容は口腔チェック、歯石除去、歯科衛生士の歯の磨き方指導などで、ハガキに一部手書きにすると印象良く伝わる
★治療後の会計時に次回の「歯石除去や定期健診」の予約をとる
次回の予約を3か月おき位に予約を入れてもらうと引き続き通院するのでリコール率が高くなる
★定期的な通院をすることで簡単なプレゼントをする
歯に対する意識変化により適切な口腔ケアを求めている人が多いです。数回通っている患者さんに口腔ケアができる簡単な道具をプレゼントすることも良いです。歯科医師お墨付きのケア道具は信頼度が高いようです。
歯科医院では、定期健診の重要性を伝えることが大切です。歯の検診がなぜ必要なのか、そして放置しておくことの危険性を伝えて把握してもらうことがリコール率のアップに繋がります。
3.3 信頼度と満足度の向上
歯医者を決めるポイントは幾つかあり、高度な技術力や接客力、院内の清潔感、通院距離など多くの決め手があります。そのなかでも一番大切なのが信頼性です。
一時的な歯の痛みに耐えられなく通院していたが、治療が終わったらそれ以降歯痛があっても同じ歯医者には行かなくなったという人も少なくありません。
1,2回の通院で、歯科医師への不信・不安感が残り通わなくなったという患者さんもいます。
歯医医院は信頼度と満足度が高いことで、治療が終わっても定期検診しようという意識が生まれます。
ここで、信頼度と満足度を与えるためのできることを考えてみましょう。
- ◆レントゲン写真を診ながら、なぜ痛みなどが発生したのか今の状態を細かく説明する
- ◆歯科予防のためにケア検診の必要性をモニターなどを見せて理解してもらう
- ◆今後の治療法を詳しく説明する
- ◆受付スタッフの手際よさに加え、親切・優しさが伝わる(教育が行き届いている)
- ◆治療機械・道具、院内全体の清潔感
上記の項目は、歯科医院の基本的なことですが、これらが欠けている医院も存在しています。信頼感と満足感を与えるだけでリコール対策をする以前に通い続けてもらえることでしょう。
4.歯科業界の今後
歯科医院は、患者数が減少しているといった問題に直面していることで、大きな課題のひとつになることでしょう。
今後の見通しとして考えられるのが、以下のような形態が求められます。
①高齢社会における歯科ケアのニーズ
少子高齢化が進む中、子供の虫歯保有者の減少と高齢者人口の増加にどう対応していくか検討しなければなりません。高齢者の患者に対してのケアサービスを十分に行うことが必要です。
②訪問歯科に需要
高齢化が進み、ケアを重点的に行うと前述しましたが、移動が難しい方も多いのが現状です。そのため施設や自宅に訪問して診療をする仕組みをつくる必要があります。訪問歯科診療の需要はさらに増えていくことでしょう。
③多種多様な経営
自由診療といったホワイトニングや審美歯科、インプラント治療、矯正歯科など経営の多角化をすることで、持続可能な運営が可能になります。また、競合医院との差別化も図ることができ、患者のニーズに応えることができます。
④AIの活用
歯科医師の支援に大いに役立つのがAIです。例えば、歯科診断(CT画像判断)や治療計画、予防歯科などでAIを用いることでより細かい分析が期待されます。
的確なアドバイスや早期の病気などの発見が可能になります。
時代の流れによって、歯科業界にも経営の在り方などさまざまな影響がみられるのは言うまでありません。時代の流れにどう適応していくかが最も大きな課題になることでしょう。
さいごに
いかがでしたか。歯科医院において患者数の減少化が進むなか、どのように患者さんにアピールをして、今後どうあるべきかを解説しました。時代の流れによる適応力が試される時でもあります。この機会に歯科医院の見直しを始めてみてもよいかもしれません。