飲食店は食品を扱うため、衛生面には気をつけなければなりません。そのため、飲食に従事しているスタッフ全員の感染予防策として検便を実施することが求められていますが、「検便は義務なのか?」と思われている方も少なくありません。
ここでは検便の必要性などを解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
1.検便の必要性
飲食店は人の口に入る食を提供しているため、安全・安心であることが第一条件となります。よって従業員の衛生管理が追及されており、ウィルス性の細菌に感染しているかどうかの確認をするために検便を受ける必要があります。
検便は、スタッフが以下のような保菌者であるかどうか確認するためです。
- サルモネラ菌
- 赤痢菌
- O-157(腸管出血性大腸菌)
- ノロウィルス
- カンピロバクタ―
- パラチフス菌
主に腸管系感染症の病原菌ですが、万が一菌を保有していた場合にはお客様(他のスタッフ含む)に感染してしまう可能性があります。
また、保有状態でも無症状の場合もあるため、そのまま調理を続けていることも考えられるので検査は必要です。調理はもちろん食器を介して感染や食中毒の恐れが十分にあります。
そのため、感染症予防のため検便を実施し、保菌者でないことを調べます。
もし細菌を保有していた場合には、保健所の指示に従い、適切な対応をとるようにしましょう。
2.飲食店の検便は義務?
実は飲食店の検便は明確に義務付けられているわけではありません。
しかし、厚生労働省の食品衛生法施行規則において、下記の内容で食品事業者の検便は実施しています。
- 食品衛生法施行規則においては「都道府県知事等から食品等取扱者について検便を受けるべき旨の指示があったときには、検便を受けるよう指示すること」
- 調理従事者は保菌者であると判明した際、下痢・発熱などの症状があり、手指等に化膿創があった時は調理作業に従事しないこと。
検便の義務化はないものの①のように自治体からの検便をする指示があった場合には実施しなければなりません。ただし、指示を受けたからではなく食品を扱っている以上、感染予防策として自主的に検便を行っている飲食店も少なくありません。
また、万が一菌を保有した従業員がいた場合には、②のように早急に対策がとることが大切です。安全な店舗運営を継続していくには、定期的な検査を検討したほうが良いでしょう。
3.飲食店の検便対象者と適切頻度
飲食店の経営者は、スタッフの健康および衛生管理をしっかり行う必要があります。
個人経営でも経営者が積極的にスタッフの検便ができる状態を用意しておきましょう。
ここでは、検査の対象者とどのくらいの頻度で実施したらいいのか解説します。
▼検査の対象者
飲食店で調理に携わるキッチン担当者(アルバイト含む)およびホール担当者、そのほか主に食品に触れる人などが検便の対象者となります。
その他、「1回300食以上、1日75食以上の調理施設」といった場合の老人ホームや学校給食に従事している方、保育園などで調理している人も対象となります。
また、イベントによる露店、キッチンカーなどの不特定多数の調理者にも検便の必要にあることもあります。食を扱っている以上、検便義務がなくても感染予防のため実施することをお勧めします。
▼検便頻度
大きな組織の企業は人事総務といった部署があるため1年に1回の定期健康診断を実施しており、その中には検便も行っています。個人経営を含む比較的小規模な飲食店でも定期健康診断の実施がなくても検便を受けさせるようにしましょう。
自治体からの検便記録(回数)を提出するよう要求される場合もあります。
頻度は店舗によって異なりますが、最低でも1年に1回、1年に2回が最も多く、月に1回や月に2回といった飲食店もあります。一度検便しても翌月には保菌者になる可能性がゼロとは限りません。とはいえ、月に何度も検査をする場合には、きちんとスタッフになぜ検便をするのかを明確に伝えて納得させなければなりません。
改めて店舗の決め事として検査をする頻度を検討する必要があります。
4.検便で陽性がでたら?
飲食店の従業員が検便で陽性反応がでた場合、以下のような対応を求められています。
サルモネラ菌やノロウィルス、O157など食中毒の原因となる衛生面で注意が必要な具体例です。速やかな対応をとるようにしましょう。
1)保健所に報告
従業員に保菌者が出た場合、保健所に報告しましょう。医療機関からの陽性反応の報告書などを受け取り、所轄の保健所に提出します。
その際、保健所から店舗の衛生対策を受けることになります。
2)日常業務から外す
食品を扱う調理人に陽性反応が出た場合、業務から外れる必要があります。また、接客が必要なホール担当者は法的な決まりはありませんが、出勤は控えるようにしましょう。
調理人は2週間程度の自宅待機をさせて再度検査をします。問題が無ければ出勤できますが、陰性がでるまで業務はできません。
ホール担当者に関しても症状が治まるまでの1週間程度の出勤はできません。
3)他の従業員の検査
例えばノロウィルスの保菌者の場合、トイレの排泄時や嘔吐の後始末によって手指に触れた、飛沫を吸い込むなどで感染してしまうリスクが高いです。サルモネラ菌、カンピロバクター、O157など細菌性の食中毒が多数あります。他の従業員およびお客様に感染してしまう可能性があるため検便するようにしましょう。
潜伏期間は約2~3日かかることもあるので日にちをおいて2回程度の検便をお勧めします。
検便で陽性反応が出た場合は、保健所から速やかな対応が求められています。もしお客様が食中毒になると保健所からの営業停止の処分が下されてしまいます。
また、陽性から陰性に戻ったとしても数か月後には再び感染してしまうこともあります。安全安心な店舗を心掛けるには、定期的な検便を検討することが必要です。
さいごに
いかがでしたか。食品を扱っている以上、飲食店経営者はスタッフの健康と衛生面の管理(マネジメント)を行わなければなりません。そのためには食中毒などの発生予防策として検便の実施が求められています。
検便を実施していない飲食店が少なくいのが現状ですが、安全・安心であることが信頼の第一条件であることを今一度認識し、検便は実施しておいたほうが良いでしょう。