飲食店で働いて数年が経ち、いつかは独立して自分のお店を持ちたいという夢をお持ちの方が多いのではないでしょうか。飲食店は比較的参入しやすい業界といわれていますが、開業資金にはどれぐらい必要なのか、どのような方法で資金調達をしたらいいのか分からないという方もいらっしゃいます。これからお店を持ちたいという方のために、開業に必要な費用や資金調達の方法などを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
1.店舗開業に必要な費用
先ず、開業に必要な費用は大きく分けて物件取得に関する費用、店舗設備費用、運転資金の3つになります。もちろんお店の形態や規模、出店する場所によって、大きく金額は変わってきます。今回は、飲食店の開業において、これらの大きな費用と運転資金に着目していきたいと思います。
1.1 物件取得費用
物件取得費用とは、店舗の物件を契約する際に必要な費用のことです。
■保証金(敷金):店舗物件を借りるときに最も大きなコストが保証金ですが、賃料の6~12 ヶ月が相場です。貸主が賃料の滞納や過失による損傷などの修繕費を担保の目的のため金銭を預かります。保証金は賃貸借の解約時に償却分を差し引いた金額が返還されます。ほとんどの賃貸借契約書に『保証金の償却年○%を除き返還』、『解約時償却分○ヶ月分』という表示がされているので、契約時に確認しておきましょう。
■礼金:契約時にオーナーに支払うお金で、賃料の1~2ヶ月分です。礼金は貸主へのお礼として差し出すお金なので一度支払ったら戻りません。
■仲介手数料:物件紹介業者に支払う手数料で、賃料の1ヶ月分程度です。
■造作譲渡料:前の店舗の内装や設備をそのまま使用できる居抜き物件で、前の借主に譲
渡代金を支払います。料金は内装や設備などの状態や経過年数によって変動があります。
■前家賃:契約日からその翌月分までの賃料を前払いとして支払うのが一般的です。
1.2 店舗設備費用
店舗設備費用は、店舗の内外装や厨房機器、備品などにかかる費用です。ただし、居抜きの場合は内装や厨房機器などの状態によってそのまま使用できることもあるので、費用を抑えることができます。
■内(外)装工事費:店舗の内装工事費の平均は1坪約30~50万円(厨房機器は別)が多いですが、大きな店舗にしたい場合は、工事面積が広ければ広いほど坪単価が低くなるというスケールメリットを十分生かすことができます。(ただし10坪程度の狭小店舗は工事費の坪単価が高くなってしまいます。)
また、外装は主に外壁による工事が大部分を占めています。塗装やサイディング、正面(出入り口)などの外装工事が一般的ですが、相場は100~200万円ぐらいと考えておくと良いでしょう。
■看板工事費:看板は外装工事に含まれていますが、自分でデザインして入稿できる方は製作費を抑えられます。デザイン、工事を業者に依頼すると、50万円ぐらいかかります。
■厨房機器:業態や新品・中古、規模によって異なりますが、厨房内のガス設備工事、換気、空調設備工事、その他の厨房機器本体の冷蔵庫やガスコンロなどの費用がかかります。目安として全体で100~250万円ぐらいかかります。
■デザイ設計:内外装工事と一緒にする場合がありますが、相場は35~70万円程度です。
■備品や販売促進費:備品は食器やユニフォーム、販促費はチラシやグルメサイト掲載などにかかる費用です。(販促費は一般的に売上額の5%前後がベストだと言われています。)
■人材費用:開業するにあたって人材募集にかかる費用です。
1.3 運転資金
運転資金は日々運営していくうえで、必要な資金のことです。運転資金の内訳は仕入れ代、人件費(従業員の給与)、家賃、広告費、水道光熱費などです。飲食店を開業してから半年間は利益が無くてもお店を継続させていくことを考慮し、目安として6カ月分の運転資金を準備しておくことが理想的です。
店舗の坪数や業態によって金額は異なりますが、店舗を借りる時の保証金なども含め飲食店を開業するには約1,000万円の資金が必要となります。
2. 資金調達の方法
開業資金は1,000万円の用意が必要だと前述しました。すべて自己資金で用意ができればいいのですが、半数以上の人が金融機関で融資を受けています。ここでは、開業時に必要となる調達方法を紹介したいと思います。
2.1 日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、飲食店を開業する際に多くの経営者が利用しています。国のお金を運営する金融としているため、起業における融資にとても積極的です。民間銀行からの融資は非常に難しいのですが、日本政策金融公庫は融資が受けられる可能性が高いです。
また、以下の利点がありますので参考にしてください。
- 金利が安い
- 無担保、無保証で融資
- 日本政策金融公庫から融資を受けて経営が成功すると銀行からの信用が得られる
- 申し込みから1ヶ月ほどで融資が実行される
- 返済期間が長い
なお、日本政策金融公庫の審査は開業のための自己資金、創業計画書などを提出し、個別面談による審査で融資が受けられるか判断されます。
詳しくは⇒日本政策金融公庫
2.2 助成金や補助金
助成金や補助金は、国や地方自治体から受給されるため地域活性化や雇用促進を目的としている返済義務がない資金支援制度です。ただし注意しなければならないのが、融資とは異なり、助成金と補助金は前払いではなく後払いです。申請して要件を満たしても約1年後の支給になります。
助成金:必要な書類を提出して要件にクリアすれば受給できます。支給額は一律で定められてことが多いです。ご参考まで⇒厚生労働省 業務改善助成金
補助金:審査と要件の2つを満たさなければと採用されません。支給額は支出金に対する割合から算出される上限が定められています。ご参考まで⇒地域創造的起業補助金事務局
2.3 共同経営
飲食店を複数人で運営していくことを共同経営といいます。1人より同じ目標や価値観をもった者同士が資金を出し合うことによって大きな投資になります。お互い同じ夢を持っているので仲間意識も強くなり固い結束ができます。しかし、お店の利益がでている間はお互いの波長も合い意見も出しやすいのですが、売上が下がった場合はお互いの意思の食い違いなどが生じやすくなってしまいます。共同経営は信頼関係で成り立っています。その関係を持続させるには十分なコミュニケーションをとり、お互い尊重し合うことが大切です。
2.4 民間の金融機関
民間の銀行からの融資は、過去の経営実績がないと難しいため、飲食店の開業融資としてはあまり適していないのが事実です。ただし、信用金庫や信用組合などは預金口座を長く持っていると、融資の相談にのってくれるというケースもあります。
2.5 保証協会の融資
金融機関から借入する際に公的な保証人として「東京信用保証協会」が資金調達のアシストをしてくれます。つまり、銀行から融資を受ける際に融資金額の保証をしてくれるという資金調達の支援を目的としています。また、保証協会を利用している事業の発展・成長をしていくためのサポートを目指しています。
ただし、信用保証協会の保証により銀行から融資を受けた場合、信用保証料を支払う必要があります。例えば、経営が何らかの理由で返済が困難になったとき、保証協会が金融機関に返済金額を立て替えるということになりますが、このようなケースにあった場合の補てん、経費等、信用保証制度を運営する上で信用保証料が費用に充てられます。保証協会を利用している事業の発展・成長をしていくためのサポートを目指しています。
3.事業計画書を作ろう
飲食店を開業する際、事業計画書は大きな役割を果たします。なぜ必要かというと、大きく分けて2つあります。ひとつは融資の審査などに必要な説明資料で、返済できるかなどを慎重に検討します。もうひとつは、事業計画書を作成することによって、将来を明確にするための経営指針になります。
記入する内容は幾つかありますが、プロフィール、お店の事業内容、予定している販売先と仕入れ先、必要な資金と調達方法、月毎の支収計画、ビジネスモデル図などを詳しく分かりやすく作成することです。
日本政策金融公庫が提供している『創業計画書記入例』の洋風居酒屋が参考になります。
日本政策金融公庫HP
あわせて読んでおきたい記事
飲食店開業を成功する為の店舗コンセプトと事業計画書作成を1から解説
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回は飲食店開業にあたって必要な費用や資金調達方法などを解説しました。開業には多額な資金が必要のため、融資を受ける方が多くいらっしゃいます。そのためには事業計画書を用意しなければなりません。全ては開業し経営を成功させるための準備です。準備期間は最低でも開業予定の1年ぐらい前から始めることをお勧めします。多くの資金と準備期間がかかりますが、想いを形にするため何をどれくらい必要か把握しておくことが、開業の近道ではないでしょうか。