多くの飲食店にはカウンター席が存在しています。店内に入って最初に目に留まる入り口付近に設置していることが多いため「店の顔」となっています。カウンター席は居心地の良さを含め、相手との距離や営業スタイルによって表現方法が変わります。
今回は、飲食店に大きな影響をもたらすカウンター席の役割や作るときのポイントなどを解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
1.カウンター席の役割
カウンターとは銀行や郵便局、商店などでお客様との対応・会計などの時に仕切られている長い台のことです。飲食店ではスタンディング形式やシッティング形式にも設置され、お客様との間に仕切り台として長いテーブルを機能させています。
カウンター席には以下のような役割がありますが、効果を発揮させるためには作り方のポイントを押さえておく必要があります。
- お客様と対面するため、コミュニケーションがとりやすくリピートに繋がりやすい
- 料理やドリンクを作る過程のライブパフォーマンスができる
- 気軽に一人で入店できるお店として印象付けられる
- カウンター内から店内全体の様子が見渡せるのでお客様やスタッフの動きを把握できる
- 初対面同士のお客様は目線が同じなので共有できる話題が作りやすい
カウンター席には、店主(スタッフ含)とお客様との関係性やお客様同士の繋がりなど、様々なドラマを生み出せる場所であると言っても良いでしょう。あのお店は「料理が美味しい」「落ち着く」「サービスがいいから」などの来店目的と同じように、「あのお店のカウンター席は落ち着くから」「客層が良いから」「店主達との会話が楽しい」など感じてもらえるお店にはカウンター席が十分関係しています。
2.カウンター席を作るときのポイント
カウンター席の役割を把握した上で、ここでは作るときのポイントを解説したいと思います。ほんの少しの工夫で店内の雰囲気は変わります。
2.1 カウンターの高さで店内の雰囲気が決まる
お店の印象を左右させるカウンターテーブルの高さは重要なポイントになります。
一般的に高さはローカウンター、ミドルカウンター、ハイカウンターの3つのタイプに分かれています。それぞれメリット・デメリットがあるのでどのタイプがお店に合っているか検討してみましょう。
■ローカウンター
高さ70㎝程度、椅子の高さ40㎝程度になります。ご家庭用のダイニングテーブルでよく使われているタイプで、日本人男性の平均身長170.7㎝、女性157.8㎝(ともに2016年統計)を考慮しての高さです。食事する時に足が床につくので長時間座っていても疲れにくい高さになっています。
- メリット:①滞在時間が長くできるので客単価を上げられる ②幅広い年齢や客層の来店
- デメリット:お客様が見上げる高さなので、カウンター内のスタッフからは見下げられているように感じてしまうことがある
■ミドルカウンター
高さ95㎝程度、椅子の高さ65㎝程度で足のつま先が床につく高さです。
厨房の床上げもしくはホール内の床上げを若干行うだけで目線が合い、会話がしやすくなります。
- メリット:①足のつま先が床につくので安心感がある ②高身長のお客様には最適な高さ
- デメリット:ミドルカウンターの高さに合う椅子の生産が少ない
■ハイカウンター
高さ105㎝程度で、椅子の高さ75㎝のタイプで足は床につきません。長時間座るには不向きですが、回転率の高いカジュアルバーや立ち飲み形式のお店には適しています。
- メリット:①目線の高さが同じなので会話しやすい ②開口部が狭くてもレイアウト次第で広く見せられる ③回転率を上げやすい
- デメリット:リラックスしたいお客様には適さない高さ
2.2 奥行きと一人当たりのスペース
居心地の良いカウンター席とは、奥行きと一人当たりのスペースが大きく影響しています。
〈奥行き〉
奥行きが狭いと料理が置けない、あるいはテーブル一杯に置いてもお客様は「急いで食べなければ」と感じて落ち着きません。
カウンターの奥行きは最低でも45㎝以上必要ですが、ゆったりさせるには60㎝程度の幅が必要です。飲食店の業態によって異なりますが、お皿やグラスの大きさ、どれだけ置けるのかなどを考慮して奥行を決めると良いでしょう。
〈一人当たりのスペース〉
一人当たりのスペースは最低60㎝以上、客同士の間隔にゆとりをもたせるには75㎝程度のスペースが必要となります。入店数を増やすために客同士の席間隔を狭くしてしまうと、お客様は窮屈さを感じリラックスできず居心地の悪さを感じてしまいます。
奥行きと一人当たりのスペースを確認するために、カウンターにお皿やグラスを幾つか置き、更に二人以上横に座って隣客との距離感を確かめるためシミュレーションすると良いです。
2.3 営業スタイルに合った型式にする
カウンター席の形は、「I字型 」「L字型」「コの字型」の3種類あります。
これら3つのカウンター席によってお店の雰囲気が変わるので、それぞれの営業スタイルに合った形にすることが大切です。
■I字型
飲食店の多くのカウンター席は、I字型のタイプが主流となっています。
お客様同士が一列に並んで座れるように長いカウンターを設置し、隣同士でコミュニケーションが取りやすいのが特徴です。業態はバーや喫茶店、居酒屋(小料理店など)など、比較的カジュアルタイプに向いています。
■L字型
L字型は長いカウンターの片方が直角に曲がっていて、客先から厨房の様子が見られることから好んで座りたいというお客様がいらっしゃいます。鉄板焼きや寿司店など調理工程のパフォーマンスで楽しませる業態が向いています。
■コの字型
カウンター内から店内全体の様子を見ながらサービスを提供することができ、お客様同士でも顔を見渡せるので穏やかな時間を過ごせます。バーや和食店などにも向いていますが、回転率の高いラーメン店 や立ち飲み屋などが最も適しています。
2.4 カウンターチェア選びにも十分な配慮を
カウンターと椅子の関係性においても十分配慮することが大切です。
ここでは椅子を選ぶときの注意点を挙げてみました。
●カウンターと椅子のバランス
一般的に椅子(座面)はテーブルより25㎝~30㎝低いことが多いです。
例えば100㎝のカウンターの場合には70㎝前後の椅子が適しているということになります。腕を直角に曲げて食事することができ、疲れない姿勢を保てるので適切な高さです。
●椅子による足置きの高さ
着席したときに足の置き場を確認します。カジュアルバーなどに多いハイカウンターには高い椅子を合わせますが、背が低い方だと足が床に着かないことがあります。カウンターテーブルに足を置くステップが無い場合には椅子にステップが必要となります。
●照明と着席
カウンターテーブルの近い場所に照明があるときは明暗の調整に注意しましょう。カウンターチェアと照明の距離は60~65㎝程度が一般的です。
特にペンダントライトを使用するとき、明るすぎると目が疲れ、逆に暗すぎると料理などが美しく(あるいは美味しく)目に映りません。
3.コンセプトに合ったカウンターデザイン
コンセプトとはお店の世界観をどう表現するかという「テーマ・方向性」のことです。コンセプトに合わせたカウンター席はお客様との関係性を決定付けることができるインテリアになります。以下のようにどのようなお店にしたいのか考えてみましょう。
- 高級店もしくはカジュアルなお店したいのか
- ライブ感を楽しめるカウンター席にしたい
- 回転率を上げたい、もしくは居心地の良さによってリピーターを増やしたい
- 女性客が一人でも来店できるお店にしたい
カウンター席のある飲食店は数多くありますが、その中でも繁盛店はコンセプトに合ったカウンター席を作り上げて表現しています。①~⑤は例として挙げましたが、上述したカウンターの高さや形など、どのタイプがコンセプトと合致しているか検討してみることが大切です。そのうえで、更にカウンター席を活かしてどう演出していけば良いのか確立することで他店との差別化も図れることができます。
さいごに
冒頭にも記述しましたが、飲食店のカウンターはお店の「顔」となって表現しています。
また、カウンター席には様々な形が用意され、タイプ別にメリットやデメリットが存在しています。どのような営業スタイルでもお店に合ったカウンター席で、居心地の良さを演出することができれば次第に人が集まる場所になることでしょう。