個人事業主から法人設立へ~飲食店に必要な印鑑を準備しよう~

個人事業主で飲食店を開業してから数年が経ち、売上も除々に上がりそろそろ法人にしようかと考えている飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。法人で設立すると法務局へ登記に関する書類や税務署へ提出する法人設立届出書などの各書類に印艦を押印する必要があります。印艦はさまざまな場面で役割を果たしますが、使い分けができるように最低3つあれば十分といわれています。今回は法人化する際に必要な印艦について解説していきます。

1.印艦の種類

飲食店が法人設立した際に印艦の準備をします。法人設立時の提出書類から日常業務に必要となるもの、それぞれ使い分けておくためにも3~4つの準備することをお勧めします。

  • 実印(会社実印、法人実印、代表者印)
  • 銀行印(銀行開設の届出印、金融機関届出印)
  • 社印(請求書、領収書などに押印する角印)
  • ゴム印(必要に応じて)

最低限の準備が必要な印艦は、実印、銀行印、社印の3つです。それぞれの利用目的や効力も違うので、押印する人がどのシチュエーションでどの印艦が必要なのか把握しておくことが大切です。

2.印艦の用途

法人の飲食店を開業すると、様々な場面で印艦が必要となりますが、それぞれ印艦の使用目的や用途について曖昧だということはよくあります。そこで事業を行っていく上で、それぞれの印艦の用途について解説していきたいと思います。

2.1 実印

法務局へ登記申請をする際に必要となるのが実印です。法務局でこの印艦を登録すると印艦証明書を取ることができます。印艦登録をした印艦は法人の実印として、法律的な効力を持ちます。なお、印艦証明書を取得するには「印艦カード」が必要になります。管轄の法務局で「印艦カード交付申請書」を提出すれば発行してもらえます。その際には設立登記するときに登録した印艦も必要となりますので一緒に持参してください。

実印だけで銀行の口座開設や契約書などの押印はすべてまかなえます。しかし、実印1本で済ますとセキュリティ面で大きなトラブルを引き起こしてしまう可能性があるため、銀行印と実印は別々に作っておいたほうが良いでしょう。

実印(代表者印)の大きさは登記上の制限があり、「1辺の長さが1cmを超え3cm以内に収まるもの」と定められています。印影は一般的に円状の二重になっており、外側の円は社名が入り、内側には役職名(代表取締役など)が入っています。文字の制限はなくアルファベットやカタカナの社名であっても、漢字やひらがなに変換する必要はなく、そのままの文字で印艦を作成しても問題はありません。

2.2 銀行印

銀行印は銀行で口座開設をする際に必要となる印艦です。ATMの引き出しは利用限度額があるため窓口での現金引き出しや口座振替の支払いを申し込むときにも必要となります。他に住所変更や取引支店の変更、社名変更など金融機関に届出している内容変更の際に銀行印が求められます。前述したように実印を銀行印として使用することも可能ですが、万が一実印が紛失あるいは盗難などにあった場合、お金の管理ができなくなってしまいます。銀行印は金銭に関わる大切な印艦なので、用途に応じてしっかりと使い分けしましょう。

2.3 社印

社印は日常業務でよく使用され、請求書や領収書などを発行する際に押印します。飲食店で領収書に社印(角印)が押印していますが、これは店舗の認印になります。ただし、押印の手間がかかるようであれば領収書に社印(角印)を印刷しても問題はありません。

2.4 その他

住所・店舗名(会社名)・電話番号などを記載しなくてはならない領収書や請求書に書く手間を省くためゴム印を作成します。ゴム印は日常業務の効率を向上させるためにも役立ちます。

3.印艦の保管方法

印艦の用途を理解した上で、それぞれしっかりと保管しなければなりません。
ここでは、実印と銀行印の保管方法と保管場所をご紹介します。

<実印>
実印と印艦証明書もしくは印艦カードは一緒に保管していないでしょうか。実印は法的効力をもっているので、とても重要な印艦です。特に実印と印艦証明書は2つのセットで大きな効力を発揮します。もし盗難にあった場合、印艦証明書を見れば一緒にあった印艦は実印だとすぐ分かってしまいます。悪用リスク軽減のためにも必ず実印と印艦証明書は別に保管しましょう。できれば実印は銀行の貸金庫での保管をお勧めします。ただし費用が発生するので、各金融機関の貸金庫利用料金を比較して店舗に見合った貸金庫を利用するとよいでしょう。

<銀行印>
銀行印と通帳を一緒に保管するのは避けましょう。実印と同じように他の書類と一緒に保管して万が一銀行印と通帳が持ち出されてしまったら簡単に口座からの引き出しができてしまうからです。セキュリティ面を考え、銀行印を保管するために小さめの金庫を用意することをお勧めします。また、実印も銀行印も単独で保管しておきましょう。
※銀行印ではなくダミーの印艦を通帳と一緒にしまっておくという方法もあります。もしも盗難になった時のことを考えて逆手にとった方法です。

4.代表者印(実印)が紛失した場合

代表者印は印鑑の中で最も重要な役割を果たしています。会社設立の際に登記申請書に捺印するのが体表者印となります。法務局では登録できる印鑑のサイズの規定があり、「1辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるもの」とされています。代表者印を作る際は、規定通りに作るように注意しましょう。

万が一代表者印を紛失しまった際には、新しい実印を登録するため速やかに管轄の法務局に手続きを行いましょう。これを「改印届」言います。
代表者の実印と印鑑証明書(3か月以内に取得したもの)を法務局へ提出します。また、印鑑カードを紛失しまった場合は代表者印を持参して法務局で再発行の手続きを行います。

5.法人設立における印鑑届出は任意に

法人設立の際に法務局で印鑑届出を行っていましたが、2021年2月15日よりオンラインで登記申請を行う場合は印鑑が任意となりました。つまり、印鑑を登録しなくても法人(会社)設立が可能ということです。
これからの時代の流れに沿った印鑑廃止という動きに合わせていると言ってもよいでしょう。
(出典参照:法務省より「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」
しかし、金融機関で融資を受けるなどの際は実印が必要となります。実印で押印という場面はまだ多いので、現時点を考えると従来通り印鑑届出を行うことをおすすめします。

さいごに

いかがでしたでしょうか。今回は法人印艦の種類や用途、保管方法を解説しました。
目的に応じてそれぞれの印艦を作成し、役割を果たすわけですが、特に実印の保管場所には十分注意しなければなりません。印艦を管理している経営者は運用ルールを明確にし、管理の強化を図ることが大切です。

この記事を書いた人

広田 淳