数年間働いてきた美容師が独立を考えたとき、共同経営という選択をされる方が多くいます。しかし、1人で独立するより効率的だと思って美容室を開業してみたら、共同経営の難しさを肌で感じたという方も少なくありません。
この記事では共同経営においてのメリット・デメリット、そしてパートナー選びの注意点などを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
1.共同経営とは
共同経営とは、2人以上の者が一つの事業をほぼ同じ立場で経営していくことをいいます。同じ能力を持ち、同じ目的を持った者同士が経営することとされていますが、お互いが違う得意分野を活かしながら足りない部分を補うことで事業が成り立っていることが多いです。
共同経営には様々な形態がありますが、2人で行う場合は以下のタイプが存在します。
- ①2人が個人事業主となり同額の出資をして経営参加
- ②1人が出資者(オーナ―)となり、もう一人が業務・技術等に携わる
- ③1人が個人事業主となり、1人が雇われる形で経営参加
以上ですが、①の出資を折半する場合は対等な立場のため、様々な場面での意思決定に時間を要すことがあります。②と③はお互いの立場の違いや役割分担がはっきりしているので、職責や最終決定権がどちらかの比率が高いかはっきり分かれています。どの形態にするかは経営する上でとても重要になるので、お互いによく話し合いましょう。
2.共同経営のメリット・デメリット
知人や友人などと美容室を共同で経営することで、単独で起業するよりもビジネスの幅が広がり利益の拡大に期待が持てます。しかし、デメリットもあります。リスクがあるという覚悟を決めて共同経営を始めていらっしゃる方も少なくはありません。
ここでは、共同経営においてのメリット・デメリットを解説していきます。
<共同経営によるメリット>
★経営責任リスクの軽減
経営悪化に直面した際、経営責任を1人に集中すると更に悪化してしまう可能性があります。共同経営であれば1人で全てを抱え込む必要はありません。
お互いに経営の相談をすることで助言やアドバイスを得ることができます。また、有能なパートナーと力を合わせることで悪化していた経営が好転することも考えられます。
※但し、法人化設立をするための「出資者」は法的に責任を問われることもあります。
★役割分担が明確になり不足分を補える
共同経営は少人数なのでお互いの距離が近く、意見やアイデアなどが伝えやすい環境にあります。そのため、お互いの得意分野を活かした役割分担が明確になってきます。
1人で美容室を経営する場合、もちろん技術スキルは必要ですが経営スキルも必須です。共同経営であればお互いのスキルに応じて、不足している部分を補うことができます。
★効率的な店舗作り
同じ夢を持つ者同士、美容室の開業を目指しているので資金集めが2倍のスピードで進めることができます。1人で独立した場合は資金集めや経営、ネットワークなど全て自分でこなさなければなりませんが、共同経営であればお互いの立ち位置が明確になるので運営していく上でリズムのよい効率的な店作りができます。
また、美容室にとって集客は重要です。独立前のお互い指名していただいたお客様が独立後も付いてきてくれる可能性が高いので2倍の集客率が期待されます。
★パートナーと共有できる
もともと経営者とは孤独なものですが、同じ志を持って始めた美容師同士はお互いに分かり合える関係です。同じ目線でお店のことを考え成長させる喜びを共有できるのは強みでもあります。
<共同経営によるデメリット>
■金銭面によるトラブル
共同経営を始める際、報酬額の割合は決めていることが殆どです。しかし、報酬の割合は美容室で担当する客数の違いや仕事量(施術の時間など)などが影響してきます。特に利益の配分方法などのトラブルは多くあります。全てが公平に定めることは容易ではないので、お互いが納得するまで何度も話し合うことが必要です。
■意思決定のスピードが鈍くなる
共同経営は相手があっての経営なので、必ずしも自分の意見が通るとは限りません。自分1人だけの意向で美容室を運営することは不可能です。第三者の意見を参考にしながら話し合うのもいいのですが時間のロスになります。1人で経営するより2人共同経営のほうが意思決定の時間はかかるといっていいでしょう。
■方向性の違いが生じる
同じ志を持つもの同士が共同経営を始めた時は夢いっぱいでやる気十分な2人なのですが、時間が経ち経営に対する方向性の違いが生じてくることがあります。例えばお店の売上が順調に伸びてきたタイミングで1人が店舗展開を切り出したとします。しかし、もう1人が店舗展開のタイミングではないと言えば方向性の違いで問題が生じでしまいます。険悪状態になる前によく話し合いましょう。
3.共同経営のパートナー選びは大切
会社で働く環境は人間関係が良好であることが一番だと言われるほど、働く仲間との関係性はとても重要です。まして少人数での共同経営ともなれば、お互いにとって最適なパートナーでなければ共に経営を始めても継続していくことは困難になってしまいます。
美容師であれば技術や接客面の能力に優れているのは勿論大切です。最適なパートナーというのは人間性を重視する、つまり経営を継続させていくには相手を信頼できるかどうかで決まることもあります。
4.美容師同士の共同経営の上手な進め方
美容師という仕事に就き長い時間を経て独立する夢を持って始めた共同経営、些細な出来事で衝突するというケースも少なくありません。相手に対する期待感が強いほどトラブルになった時の修復時間が長引くのは事実です。
共同経営を継続させるために、上手な進め方を幾つか紹介します。
①ルールを明確にする
美容室の経営をしていく上でルールを決めておかないと、お互いの意思疎通が生じてしまいます。最低限以下のような取り決めをしておくと良いです。
- 出資金額
- 報酬・利益配分
- 肩書や担当分野
- 意思疎通のトラブルが生じた場合の対応
以上の内容が曖昧だとトラブルのもとになってしまう恐れあるので、明確にしておきましょう。また、利益の配分ですが「1人の技術面がこれだけ優れていて顧客数も多いので利益配分は○○%」と決めておく方法もあります。
※共同経営の「出資金額」が対等という形態もありますが、どちらかが全額出資もしくは8:2ぐらいの割合に分けることで経営が上手くいくケースがよく見られます。
②話し合いの時間を設ける(コミュニケーション)
店舗を継続していく上で、経営状況により方針を変えることがあります。成長し続けるためには変化も必要です。経営方針についての決めごとは、お互いが賛同し納得するまで話し合う時間を設けるようにしましょう。
また、共同で経営を始める際には1人だけでの開業以上に準備期間を設けた方が良いです。
2人が準備段階でコミュニケーションをとりながら、いかに開業に向けた計画を上手く進められるかで今後の関係性に影響してくるからです。
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回は美容師同士による共同経営のメリット・デメリットから経営(関係性)の上手な進め方まで解説しました。特に美容という職業柄、個性を持つ技術者2人が共同で経営することは難しいとされています。全てが経営困難になるとは限りませんが、パートナー選びを慎重に、そしてお互いの立場を尊重し合うことでトラブルは回避できます。より良い形での共同経営を目指していただきたいと願っています。