飲食店で働くアルバイトの源泉徴収も必要です【源泉徴収のしくみ】

  • 経営する飲食店でアルバイトを雇っているが源泉徴票の発行は必要?
  • 飲食店で働くパート・アルバイトにも源泉徴収は関係ある?
  • 外注で仕事を依頼した個人事業主に対しての源泉徴収はどうすればいい?

税金に関するルールは複雑なイメージがあり、上記のような疑問を持っている方がいらっしゃいます。多くの飲食店がアルバイトやパートを雇用しています。毎月継続して給与を支払っている以上、源泉徴収することは正社員と変わりありません。しかし、個人経営の飲食店の場合は、従業員の有無によって源泉徴収が変わってきます。
今回は源泉徴収について詳しく解説します。

1.源泉徴収とは?

源泉徴収とは、給与支払者が従業員の給与から予め税金(所得税)を天引きし、国に納めるというシステムです。雇われている従業員がそれぞれ個人で所得税を納付するとなると、税務署が膨大な量となり手間がかかってしまうので、給与支払者が従業員のかわりに納めるルールが採用されています。給与支払者が従業員への給料・賞与を支払った報酬から源泉徴収した所得税は給与支払日の翌月10日までに管轄する税務署へ支払います。

従業員に給与を支払う場合は源泉徴収義務者になるので、払わないでいるとペナルティとして納付しなければならい納税額の10%分課税されます。これを「不納付加算税」といいます。なお、税務署から指摘される前に自ら納付する場合は5%になります。その他「延滞税」といった納期期限から遅れた分に対してかかる税金もあるので注意しましょう。 

また、経営者が従業員以外に外注(個人事業主)で仕事を依頼したとき、報酬を受ける者の
源泉徴収は必要になります。下記のような報酬を支払った場合に源泉徴収が必要です。

  • 税理士、弁護士、司法書士等の専門家の士業への報酬、料金
  • ホテルや旅館などで宴会において、客の接待をしたときに派遣された(バンケット)ホステス、コンパニオン等に支払う報酬

2.個人事業主の源泉徴収義務者

源泉徴収義務者とは、従業員等の給与や報酬から所得税を差し引いて、国へ納税する義務がある事業者のことをいいます。⇒No.2502 源泉徴収義務者とは
法人であれば、給料の支払者となるので源泉徴収義務者となりますが、個人事業主でも支払う費用によっては源泉徴収義務者に該当する場合と、該当しない場合があります。

<源泉徴収義務者に該当する>
  • 個人事業主でも正社員、アルバイト、パートなどの従業員を雇用し給与を払っている
  • 青色事業専業者への給与や退職金などを支払う
  • 事業の手伝いを家族がしていて給与などを支払う
<源泉徴収義務者に該当しない>
  • 従業員を雇っておらず、弁護士や、税理士などへ報酬や料金だけを支払っている
  • 常時2人以下で家事使用人だけに給与を支払う

なお、飲食店を開業し従業員を雇用する場合は「給与支払事務所等の開設届出書」を所轄する税務署に提出しなければなりません。(国税庁のWebサイト
源泉徴収に関する大切な届出書なので、覚えておくとよいでしょう。

3.アルバイト、パートの源泉徴収・源泉徴収票の発行

<アルバイト、パートの源泉徴収>

アルバイトの月給が88,000円以上あった場合は源泉徴収され、88,000円未満の場合は源泉徴収されません。働き方に変動が多いアルバイトは、所得税がかかる月とかからない月があります。年収103万円を超えた場合は所得税を支払う義務があり、もし親や配偶者の扶養家族になっていた場合は扶養から抜けなければなりません。逆に103万円未満の場合は源泉徴収する必要はありません。ただし、年間103万円を超えなくても、1年間の間で88,000円以上の収入があった月が一回でもあれば、その月は源泉徴収されます。そのような場合は、年末調整あるいは自身で確定申告を行った際、払い過ぎた税金が戻ります。

<源泉徴収票の発行>

源泉徴収票とは、会社から1年間支払われた給与・賞与などの総支給額から所得税を差し引いた金額が記載された証明書のことです。一般的には12~1月に従業員へ交付します。正社員だけに限らず、アルバイトやパート、日雇い労働者にも源泉徴収票を発行する義務があり交付しなければなりません。アルバイトは、年の途中で辞めてしまうことが多いので、その際は退職した日から1カ月以内に源泉徴収票を発行し、退職者に交付するように心がけてください。源泉徴収票は退職者が確定申告や再就職した時などに必要です。

4.源泉徴収票の再発行・保管期間

源泉徴収票は給与や賞与の支給金額、所得税の控除金額、源泉徴収額などが記載されている大切な書類です。源泉徴収票は従業員に交付した後も必要に応じて使用する場面があるので、紙で保管している場合は間違えて破棄しないよう取り扱いに十分注意しましょう。

<源泉徴収票の再発行>

源泉徴収票は大切な書類とは知っていても年に一度だけ交付され、しかも使う機会が限られているので「うっかりして無くしてしまった」という従業員もいるかと思います。もし従業員から紛失してしまったという申し出があった場合、再発行は可能です。給与支払者は源泉徴収票の交付が義務づけられている以上、面倒でも再発行を応じなくてはなりません。

<源泉徴収票の保管期間>

税に関する書類については、法律で定められた保存期間があります。源泉徴収票の保存期間は7年間と定められており、また、退職者の源泉徴収票についても在職中と同じく保存しておくことが必要です。前述したように、万が一従業員や退職者から源泉徴収票を紛失したため再発行の依頼をされたとき、保存期間内であれば再発行は可能となります。いざ必要になった時の為にも、きちんと7年間は保存し無くさないように決まった場所で大切に保管をしておきましょう。

さいごに

従業員を雇用すると、ほとんど給与から所得税を天引きすることが必要です。その他、仕事を依頼した相手が個人で報酬を受け取る場合でも源泉徴収は必要です。また、個人事業主の飲食店でも従業員を雇うか、もしくは1人だけでお店の事業を行っているかで源泉徴収義務者としての立場が変わります。
今回はさまざまな角度からみみた源泉徴収について解説をしました。複雑な源泉徴収を正しく納税するためにも、基礎知識を理解しておくことが大切です。

この記事を書いた人

BrancPort税理士法人