『メリット・デメリットを踏まえて退職金制度の検討を!』

「iDeCo」の普及と「iDeCo+」の活用が、老後資金づくりに寄与することは望ましいことだと思います。

しかし、見落としてはいけない重大なポイントがあります。

中小企業の退職金・年金制度が、何の問題もなく適切に機能し続けているというのは、極めて稀だと思います。
制度設計の段階での問題点、退職給付制度の選択、支払い資金の計画的な準備、退職金額の計算方法、自己都合退職時の取り扱いなど、何かしらの問題を抱えているものです。

中小企業が退職金準備を導入する場合は、積み立てた資金を取り崩すリスクが少なく、単純に貯蓄した場合よりも税金の負担が軽くなり、さらに投資や資産運用を自己責任で行う必要もなく、基本的に従業員全員を対象とすることがポイントになると考えられます。

「中小企業退職金共済」も活用しやすい制度だと思います。
中退共にもメリットはたくさんありますが、掛金の減額が難しいことや、従業員の入れ替わりが激しいと掛金が無駄になるというデメリットがあります。また、退職理由を問わず、退職者に退職金が直接支給されるため、自己都合退職や懲戒解雇の場合、減額は可能ですが、まったく支払わないことは難しく、しかも減額分の掛金は没収されてしまいますので、中小企業にとっては大きな損失といえるでしょう。

そこで、養老保険や終身がん保険といった生命保険を活用した福利厚生プランによる退職金制度と財源づくりが適している会社も多く存在します。

養老保険は、満期までに保険の対象者(被保険者)が死亡すれば死亡保険金が支払われ、死亡しなかった場合には死亡保険金と同じ額の「満期保険金」が支払われるという保険商品です。
会社が退職金の積立に利用する場合は、役員・従業員の全員を被保険者にし、死亡保険金の受取人を被保険者の遺族、満期保険金の受取人を会社にします。被保険者が死亡した場合、死亡保険金で遺族の生活を保障し、会社が満期保険金を従業員の退職金に充てることが可能です。死亡保険金も満期保険金も、役員・従業員とその家族の福利厚生として利用されるため、「福利厚生プラン」と言われています。

満期保険金の受取人は会社のため、退職金規程を準備しておけば、支払の裁量は規定に基づき会社側にあります。また、中小企業の経営者にとって、運転資金等の資金繰りは日常の切実な課題ですが、解約返戻金を財源として契約者貸付を受けることもできます。銀行等の融資が難しい場合でも、機動的に資金準備が行えることは、経営上、大きなメリットになると考えられます。

少子高齢化の進展により、老後の生活に不安を抱える人が増えていますので、中小企業における退職金制度の設計・運用は、今後ますます重要な課題となってくると思います。

この記事を書いた人

広田 淳